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その16「配置と転移」




「お帰り」



「はい。あの……」



「…………?」



「大魔獣のフェイント、


 慣れたらどうにかなるかもしれません」



「そう。キミは目が良いんだね」



「あれ?


 俺が言いたいこと、


 もう分かっちゃってますか?」



「こう見えてダンジョンマスターだからね。


 侮ってはいけないよ。


 キミが言いたいのは、


 突進とフェイントの、


 モーションの違いのことだね?」



「はい。さすがクオンさまです。


 途中で止まるフェイントダッシュは、


 突っ走る普通のダッシュと比べて、


 地面の蹴り方が違うんですよね」



「たった数戦でそれを見抜くとは、


 たいしたものだよ」



「ありがとうございます。


 それじゃ、再戦いってきます」



 ……もう何度も殺されている。



 普通のガーデナーであれば、戦うのが嫌になってもおかしくはない。



 だが何の躊躇も無く、ディーヴァは大魔獣の所へ向かった。



(行くぞ……。


 フェイントのモーションを


 良く見極めるんだ……!)



 兎と向かい合い、ディーヴァは身構えた。



 全身にぐっと力を入れて、ディーヴァは突進を待った。



 すぐに突進は来た。



 そして。



「あっ……」



 フェイントではない普通の突進が、ディーヴァを吹き飛ばした。



 ディーヴァはすぐにトドメを刺され、ベイルアウトすることになった。



「お帰り」



「……はい。


 フェイントモーションを見切ろうと思って、


 力みすぎましたね。


 逆に普通の突進を


 食らっちゃいました。


 あと1回や2回死ぬくらいじゃ


 完全に対応するのはキツそうですね」



「無理にあの大魔獣を


 倒す必要は無いと思うけど……」



「そうですけど、


 あれを倒すのが1番の


 近道だと思うので。


 それに……


 勝てそうで勝てないって、


 なんだかムズムズしませんか?」



「言うほど勝てそうかな?


 それに、静寂たる私には、


 そういう気持ちはよくわからないね」



「そうですか?


 とにかく行ってきます」



 やる気がおさまらないディーヴァは、大魔獣の所へ向かった。



 そして大魔獣の突進を受け、ディーヴァは死亡した。



 死亡した。



 死亡した。



 そして……。



(見切った……!)



 間違いなくフェイントが来る。



 ディーヴァの眼光が、それを完全に読み取った。



 幾たびもの敗北が、ディーヴァの知覚を成長させていた。



 このフェイントが、自分まで届くことは無い。



 そう確信したディーヴァが打った手は、静観では無かった。 



 フェイントを察知した瞬間、ディーヴァは地面を蹴っていた。



 彼が向かう先は、横でも後ろでも無かった。



 前方へ。



 思い切り前へと走り、兎へと跳んだ。



 突進が停止した瞬間、ディーヴァは兎の鼻の上を踏んだ。



 そしてそのまま、頭上まで駆け上がった。



「俺の勝ちだ……!」



 ディーヴァは剣を振り下ろした。



 兎の脳天に、深々と刃を突き刺した。



 傷口から魔素が散った。



 根元まで突き刺さった刃は、大魔獣を絶命させた。



 そう確信したディーヴァは、兎から飛び下りた。



 やがて魔獣は消滅していった。



 後には魔石と赤い毛皮が残った。



「クオンさま。クオンさま。


 やりましたよ」



 勝利の喜びを分かち合うべく、ディーヴァはクオンに声をかけた。



(うん。見ていたよ。


 おめでとう。ディーヴァ)



 やがて余韻が去ると、ディーヴァは広間の奥に視線を向けた。



 そこに通路への出入り口が見えた。



「この先は、敵とか居ませんか?」



(そうだね。


 先に有るのはコアルームだけだよ)



「分かりました」



 ディーヴァは広間から出た。



 そして短い通路を抜け、次の部屋へと入った。



 その部屋は、それなりの広さが有ったが、さっきの広間よりは狭かった。



 部屋の中央には、ダンジョンコアが見えた。



 久しぶりに再会したコアに、ディーヴァは歩み寄って行った。



「『閻魔灌頂』」



 ディーヴァはコアに手を伸ばし、スキル名を唱えた。



 スキルが発動した。



 スキルがもたらす情報が、ディーヴァの意識に流れ込んでいった。



 得られた情報を、ディーヴァはクオンへと伝えた。



「レベル10にするには、


 さっき倒した大魔獣の


 魔石を捧げれば良いみたいですね」



 レベル10への条件は、レッドファングラビットの魔石だった。



 もし望むなら、すぐにでもレベルを上げられるということになる。



「でも……」



 今のディーヴァの意識は、別のことへと向けられているようだった。



(どうしたのかな?)



「ダンジョンのレベルを上げる以外にも、


 できることが増えてるみたいですね」



(何ができるんだい?)



「魔獣の配置、


 資源の配置、


 トラップの配置、


 あと、EXP倍率の上昇なんてのも有りますね」



(EXPを操作できるの?


 それは凄いね。


 けど、それなりの代価が


 必要になるんじゃないのかな?)



「いえ……。


 条件達成済みってなってますね。


 ひょっとしたら、


 5層を攻略したこと自体が、


 条件だったのかもしれません」



(ふーん……?


 デメリットが提示されていないのなら、


 最初にやっておいた方が良いかもね)



「分かりました」



 ディーヴァは意識下で、EXP倍率の上昇を選択した。



 スキルに呼応して、ダンジョンコアが輝いた。



 無事に強化が完了すると、ディーヴァはクオンに声をかけた。



「これで魔獣から得られるEXPが


 今までの1、2倍になったらしいです」



(他のダンジョンクランが知ったら、


 札束を積んででも


 欲しがりそうな効果だね)



「そうかもしれませんね。


 けど、安心してください。


 俺はクオンさま一筋なんで」



(そんな心配はしてないけどね)



「あと、魔獣の追加とか


 資源の追加ですけど、


 どうしましょうか?」



(具体的に、


 どんな魔獣や資源を


 追加できるのかな?)



「何でも」



(うん?)



「必要な供物を捧げれば、


 どんな魔獣や資源でも


 追加できるみたいです。


 ただ、配置できる数には


 限界が有るみたいですけど。


 その数はレベルに比例するみたいで、


 今は魔獣も資源も、


 5つずつ配置できるみたいです」



(なるほどなるほど。


 …………凄いことになったね)



「クオンさまは、


 何を追加すれば良いと思いますか?」



(私は特に


 モノに困ったりはしていないからね。


 キミの役に立つと思うモノを


 追加すれば良いと思うよ)



「そうですか……。だったら、


 すぐにダンジョンで


 役に立つ物が良いですね。


 うーん……」



 ディーヴァは悩んだ。



 魔獣も資源も、ディーヴァが覚えきれないくらいの種類が有る。



 その中から最適解を選べというのは、実に難解な問題に思えた。



(今すぐ決めなくても


 良いんじゃないかな?)



「そうかもしれませんけど。


 ダンジョンレベルを上げてしまったら、


 この機能はしばらくおあずけですからね」



 ダンジョンレベルを10にすれば、コアも10層に移動する可能性が高い。



 そうなれば、10層を攻略するまでは、コアに触れることはできなくなる。



 スキルも使えなくなるということになる。



 ディーヴァはそうなる前に、問題の答えを出しておきたかった。



(ダンジョンは逃げないよ。


 いちど帰って来て、


 温泉にでもつかると良いよ)



「……分かりました。あ……。


 そういえば……」



(なんだい?)



「トラップはタダで配置できるみたいです。


 トラップに


 転移陣っていうのが有りますね。


 これをこの部屋と1層に配置したら……」



 ディーヴァはスキルの力で、転移陣のトラップを配置した。



 するとコアルームの床が、赤く光っているのが見えた。



 クオンの配下であるディーヴァには、クオンダンジョンのトラップが見える。



 ディーヴァは赤く光る床に、足を踏み入れた。



 すると転移陣が発動した。



 ディーヴァの体が瞬間移動した。



 行き先は、このトラップを配置した時に、ディーヴァ自身が設定している。



 ディーヴァは迷宮の1層へと転移した。



 死亡以外の手段でここに戻って来るのは久しぶりだ。



 ディーヴァはクオンに声をかけた。



「これで自由にコアルームと行き来できますね」



「うん。お帰りディーヴァ」





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