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マイナススキル持ち四人が集まったら、なんかシナジー発揮して最強パーティーができた件  作者: 小鈴危一
2章

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【器用さ上昇・小】⑧

 二十九層の端で、ユーリは立ち止まった。

 上の階層へ戻るには、少し引き返さなければならない場所だ。


 ステータス画面でマップを確認しながら、彼女は物憂げに溜息をつく。


「はあ……」

「ユーリさん」

「うひゃあっ!? ア、アルヴィンさん!?」


 俺が声をかけると、びっくりしたように飛び上がった。


「な、なんでいるんスか!?」

「それはもちろん、追いかけてきたからだが」

「なんで剣士で斥候に追いつけるんスか!? ウチ、ほとんど全力で走ってたんすけど……」

「レベルと、スキルのおかげだな」


 20以上のレベル差と【敏捷性上昇・中】があれば、職業特性の差だって埋まる。

 俺は息を整えると、口を開く。


「それより、急にどうしたんだ」

「……」

「レベルは上がっただろうが、ここは深層に近い階層だ。ソロで活動するのはまだ危険だぞ。来る時には出会わなかったが、もしかしたら動きの速いモンスターだっているかもしれない」


 俺が少し責めるように言うと、ユーリがうつむきがちに答える。


「みなさんの、ご迷惑になりたくなくて……ウチ、レベルも低くて足手まといですし……」


 俺はやや語調を抑えて言う。


「そんなの気にしなくていい。ここには物珍しいモンスターが出るから来ただけで、本気で攻略をしに来たわけじゃないんだ。それに後衛が一人増えたくらいで俺もテトも崩れたりしないし、本当に迷惑と思っているのならパーティーになんて入れない」

「でも……みなさんスキルも噛み合ってて、冒険者(プレイヤー)スキルも高くて、四人で一つって感じなのに……ウチがいたら邪魔になっちゃう気がするッス……」

「い、いや、そんなことは全然ないが……」


 さすがにそこまで一セットでもない。

 若干戸惑いつつも、俺は諭すように言う。


「……もしも次にあの店に行ったとき、ユーリが居なくなっていたらみんな絶対に後悔する。俺たちにそんな思いをさせないでくれ」

「う……」


 ユーリはしばらく気まずそうに縮こまっていたが、やがて少し顔を上げて言う。


「わ、わかったッス……」

「よし。それじゃあ戻ろう」


 そう言って俺が手を差し出すと、ユーリがやや困ったように笑う。


「あはは、でも……ああ言って別れた手前、なんだか戻りにくいッスね……」

「そんなの誰も気にしないぞ。だがどうしてもと言うのなら、二人でダンジョンから出るか?」

「……いえ! やっぱり戻ることにするッス。みなさんに謝らないと……」


 ユーリはそう言って、俺の手を取ろうとした――――その時。


「あれ……? なんスかね、アレ」


 ふと手を止めたユーリ。その視線を、俺も追う。


「は……?」


 道の隅に、竹筒があった。

 ダンジョンの内装としての竹ではない。上を斜めになるように輪切りにされたその形は、アイテムとしての竹筒に似ている。


 ただし、でかすぎる。

 その直径は、大人の男が抱えきれないほどの大きさだ。


 しかも――――うっすらと光りながら、地面に沈んだり浮かんだりを繰り返しつつ、ひょこひょこと動いている。


「モンスター、ッスかね……? 襲いかかっては、こないみたいッスけど……」

「……いや」


 違う、と言いかけたその時。

 竹筒が地面に沈み、見えなくなった。


「あれっ。いなくなっちゃったッス」


 ユーリが声を上げ、竹筒が消えた地点へふらふらと近づく。

 俺は妙な予感に駆られ、ユーリへと叫ぶ。


「近寄らない方がいい! 何があるかわからな……」


 次の瞬間。

 ユーリの足元が光ったかと思えば――――その姿が、地面から突き出てきた竹筒に飲み込まれた。


「うわっ! アルヴィンさ」


 中から響いた叫び声が、途中で途切れる。

 俺は、この現象を知っていた。

 ――――転移だ。


「クソッ……!」


 竹筒は、徐々に光を弱めながら地面へと沈んでいく。

 トラップ、事故、遭難、死――――様々な単語が、脳裏をよぎる。

 迷ったのは一瞬だった。


「ユーリ!」


 俺は消えたユーリを追いかけるように、竹筒の中に飛び込む。


 一瞬の後、視界が暗転した。

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