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マイナススキル持ち四人が集まったら、なんかシナジー発揮して最強パーティーができた件  作者: 小鈴危一
2章

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【器用さ上昇・小】③

「まったくひどい人たちですね!」


 ユーリを仲間に引き入れ、百鬼怪道を進む道すがら。

 ココルは憤慨したようにぶつくさ言っていた。


「パーティーメンバーをダンジョンの真ん中に置いていこうとするなんて!」

「まったくだ」


 俺も同意する。

 自分から出て行くこともあったメリナやテトと違い、俺とココルはパーティーから追い出されてばかりだったので、ユーリへの仕打ちには妙なトラウマが刺激された。


「わたしだって、そこまでされたことはありませんでした!」

「本当にな」


 続けて同意する。

 まあもっとも、冒険の途中で回復職(ヒーラー)を置いていったら困るのは残りのメンバーだろうが……。


「あはは……すみませんみなさん。ご迷惑をおかけしてしまって……しかもパーティーにまで……」


 ユーリが申し訳なさそうに言う。

 同行が決まった時点で、ユーリのことはパーティーメンバーとして登録していた。

 その方が、パーティー全体でもらえる経験値の総量が増えて得だからだ。


「そんなの気にしなくていいんですよ、ユーリさん!」


 ココルがにっこり笑って言う。


「行き会った者同士でパーティーを組むのだって、冒険ではよくあることです!」

「それが意外と長く続いたりな」

「私たちがそうだったものね」

「そう言ってもらえると、ありがたいッス……あと、テトせんぱいも」

「え?」


 振り向いて訊き返すテトに、ユーリが言う。


「ありがとうッス……怒ってくれて」

「別にあんなの、何かしたうちに入らないよ」


 テトがそっけなく答える。


「昔だったら、ああいう連中は睡眠武器で眠らせて金目の物奪ってたし」

「……」


 テトなら本当にやっていそうだった。

 もし俺が制止していなかったら、あの侍のこともボコボコにしていたかもしれない。

 それでも手を止めてくれたということは……俺たちのことも考えてくれているのだろう。


「ところでなんだが、ユーリさんたちは何が目的でこのダンジョンに来たんだ? まさかとは思うが……」

「えっとたぶん、そのまさかッス。二十九層でのレベリング目的ッスよ」

「……あの連中は、全員レベル30くらいはあるのか?」


 そのくらいなければ危険だ。ただ、あまりそうは見えなかったが……。

 案の定、ユーリは首を横に振る。


「ウチを除いても、平均レベルは23か24くらいッス」

「やっぱりか……」

「ウチも危ないとは思ったんスけど……リーダーが、一度言い出したら聞かない人で……」


 リーダーとは、おそらくあの侍のことだろう。


「ウチも含めて、みんな経験値が欲しいのは事実だったんで、止めきれなかったんス。でも……このくらいの階層にまでくると、やっぱりヒヤッとすることが増えて……」

「それは、そうだろうな」

「モンスターを倒すのにも時間がかかるようになってきたんで、ウチもがんばったんスけど……」

「あなたがヘイトを奪いすぎてしまって、かえって危なくなったってことかしら?」


 メリナが訊ねると、ユーリは気落ちしたようにうなずく。


「はい……実はあのリーダー、レベル以上の階層に潜ろうって言い出すことが結構あって……前から同じようなことで、よく揉めてたんス……」


 メリナが溜息をつきたそうな顔で言う。


「それは完全に、パーティーの問題ね。レベル以上の階層に潜るのは、絶対にやってはいけないことではないけれど……それで危なくなるようではまずいわ。抜けてよかったんじゃないかしら」

「っていうか、弓型斥候にヘイトを奪われてるあの前衛も後衛もやばいでしょ。侍に暗黒騎士、赤魔導士に司教って、普通より火力も回復量もあるはずなのにさぁ」

「そうね……このくらいの階層で冒険するには、まだ実力が足りてないのかもしれないわ」


 呆れたように言うテトに、メリナも同意する。


 火力の上がる侍や赤魔導士、WIS(魔力)に大きな補正がかかる司教に、一部の闇属性魔法が使えるようになる暗黒騎士は、いずれも元の職業よりもモンスターのヘイトを稼ぎやすくなる派生職だ。

 弓の威力に補正がかかる弓手ならまだしも、弓型斥候にヘイトが散ってしまうようでは、実力不足と言われても仕方ない。

 まあ……それだけが原因と言い切ってしまうのは、さすがに少しかわいそうではあるが。


 ココルが朗らかに言う。


「せっかくですし、ユーリさんも一緒に二十九層まで行きましょう! 適正レベルよりはだいぶ下の階層になっちゃいますけど、パワーレベリングならこのくらい全然潜りますし。いいですよね、アルヴィンさん?」

「そうだな」


 レベルが上の者に助けられながら経験値を稼ぐパワーレベリングは、現レベルプラス10くらいの階層にまで潜ることはざらにあった。

 もちろん助ける側は、その階層をソロでもこなせるくらい強い必要があるが、俺たちなら問題ない。


「五人でミート・ゾンビ狩りといくか」

「何から何まで申し訳ないッス……」

「そんなのいいんですよ!」

「はあ……」


 ココルが元気づけるように言うも、ユーリは縮こまったようにするだけだった。


 やはり……パーティーを追い出されたのが堪えているのだろうか。

 俺も何度も経験したが、自分が要らない存在に思えてきて、あれは本当に凹む。

 元気が出ないのも無理はないかもしれない。


「あっ」


 その時、ココルが声を上げた。

 俺もその存在に気づく。


 前方に現れた、朽ちた肉体に鎧を着け、刀を装備したそのモンスターは、ゾンビ・サムライだった。

 通常のゾンビ系モンスターよりもすばやく、攻撃力が高いのが特徴だ。

 とは言っても、この階層で出るものはそこまで怖くない。


 普通に処理しようと剣を構えた時、後ろでココルが憐れむように呟いた。


「ああ、さっきの人……モンスターにやられてあんな姿に……」

「ぶふっ!」


 俺は思わず吹き出してしまった。

 言われてみれば、装備の形や色合いが少し似ている。

 周りでも笑いが起こる。


「んははっ、ほんとだ」

「ふふっ、や、やめなさいよ」


 メリナが笑いをこらえながら呪文を唱え、光属性魔法でゾンビ・サムライを四散させる。


 しばらく行くと、またも前方にモンスターが現れた。

 白骨の体に鎧を着け、そして刀を装備している。

 スケルトンの上位種――――スケルトン・サムライだ。


 その姿を見て口角が上がりかけたその時、ココルがまた呟く。


「ああっ、さっきの人!」

「ぶはっ!」

「あっはっは!」

「ふふっ、だ、だからやめなさいって」


 笑いながら剣を振って、スケルトン・サムライを四散させる。


 ドロップを回収しながら皆でひとしきり笑っていると、それを見ていたユーリが小さく言った。


「……あはは、みなさんおもしろいッスね」


 それから担いでいた弓を握り、はりきったように言う。


「次出てきたら、今度はウチがやってやるッス!」

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