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マイナススキル持ち四人が集まったら、なんかシナジー発揮して最強パーティーができた件  作者: 小鈴危一
2章

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【器用さ上昇・小】①

 百鬼怪道(ひゃっきかいどう)は、ごくありふれた小規模ダンジョンだ。

 最近見つかったミート・ゾンビが出る階層を除けば、特に稼げるわけでもなく、そのせいで長く攻略が進んでいなかった。

 しいて変わっている点を挙げるとすれば……テーマが独特なところだろうか。


「テト、そっちは任せた!」

「おっけー!」


 返事を聞いた俺は、目の前のモンスターに集中する。

 レッサーオーガの振り下ろす金棒を、軽く弾き返す。そのまま数発斬撃を叩き込むと、弱点部位を突くまでもなくモンスターが四散した。


 隣を見ると、テトに切り裂かれたアーススパイダーがエフェクトを散らして消滅したところだった。

 散らばったドロップを眺めながら、俺は一息つく。


「ふう」

「まだ私の出番はないみたいね」


 なんだか物足りなさそうに言うメリナに、俺は苦笑して答える。


「二十層だからな」


 百鬼怪道の二十層は、他のダンジョンの同じ階層と比べても、モンスターがあまり強くなかった。


「でも、そろそろ注意した方がいいんじゃないでしょうか。出てくるモンスターの様子も、なんだか変わってきていますし」

「そうだな」


 心配そうに言うココルに、俺はうなずく。

 スケルトンやウィルオーウィスプのようなアンデッド系モンスターばかりだった浅層から、徐々にレッサーオーガやアーススパイダーのようなモンスターも増えてきている。


 ただ、出現モンスターの法則が、今ひとつよくわからないが……。


「それにしても、このダンジョンなんなんだろ」


 テトが階層を見回すように言う。

 地下のはずなのに、生ぬるい風が吹いて、通路の端に生えていた植物を揺らした。

 テトは、その植物の茎をナイフでつつく。


「これとか、何? 草なの? 木なの? 妙によくしなるし……こんなの見たことないよ」

「たぶんだが、竹という植物だと思う」


 あまり自信はなかったが、俺は説明する。


「『竹筒』という、水筒用の素材アイテムがあるんだが、それがこんな質感なんだ。おそらくこの植物から切り出したという設定なんだろう」

「また設定、ね」

「こんなの、ダンジョンの外には生えてないですよね」

「どうだろうな。遠い土地には普通にあるのかもしれない」

「気味の悪い植物だなぁー……」


 サラサラと細い葉を揺らす竹を、テトは顔をしかめて見つめる。


「あとさぁ、この脇に並んでる大量の石だよ。なんか文字彫ってあるし、誰かが並べたみたいな感じだけど、柱にしてるわけでもないし……なんの意味があるんだろ」

「あら、これはわかりやすいじゃない」


 メリナが、通路を形作るように両脇に並んでいる、大量の石柱を見回す。

 綺麗な直方体は、明らかに自然物という雰囲気ではなかった。


「これ、お墓よ」

「え、墓なの? これ」

「人が切り出した石に、文字が彫ってあって、しかも周りにはアンデッド系モンスターが出るでしょ? これでお墓じゃない方が不思議よ」

「実は墳墓系ダンジョンだってことか?」


 俺は首をかしげる。


「だがそれにしては、他のダンジョンとずいぶん様子が違う気がするが……」

「墳墓系ダンジョンは、あれ全体が一つの大きなお墓って感じでしょ? でもこれはたぶん、一つ一つが全部違う人のお墓なのよ」

「一つ一つが……」


 墳墓系ダンジョンは、かつての王の墓という体裁であることが多い。

 それならここは……平民が眠る墓地、ということなのだろうか。


「でも、それならおかしくないですか? お墓なら、ここに彫られるのは死んだ人の名前になると思うんですけど……」


 ココルが墓石を覗き込みながら言う。


「ここには名前が彫られてる石なんて一つもありません。『山田家』とか『鈴木家』とか、変な単語ばっかりです」

「そう言われれば、そうね……山田って何かしら? 山の斜面を開拓して水田を作る地方があるとは、聞いたことがあるけど……」

「鈴木って鈴がなる木があるとかー? うるさそう」

「…………これ、人の名前なんじゃないか?」


 こちらを見る三人に向け、俺は言う。


「家と書いてあるくらいだ。これは貴族の家名にあたるもの……なんじゃないか?」

「ええ、こんな変な名前を家名にする貴族がいるかしら……?」

「貴族のお墓にしては、数が多すぎません?」

「しかもしょぼいしね」

「確かにそうだが……」


 彼女たちの言うことはもっともだ。

 だがなんとなく……それでも俺は、これが人の名前であると感じていた。


「……まあいい、進むか」


 俺たちは探索を再開する。

 階層を埋め尽くす竹と石柱の群れは、どこまで行っても尽きることがない。


 ダンジョンの内装は、そのテーマによって様々だ。

 仕掛(ギミック)と蟻だらけだった()(かけ)(あり)(づか)や、全階層が砂で覆われ、地下なのに強い日差しが差していた(ねっ)()(じょう)()など、常軌を逸した内装のダンジョンも多い。

 だがそれらと比べても、この百鬼怪道は奇妙で、どこか不気味だった。


 このダンジョンにしいて変わった点があるとすれば、この独特なテーマだろう。

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