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マイナススキル持ち四人が集まったら、なんかシナジー発揮して最強パーティーができた件  作者: 小鈴危一
1章

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[       ]⑥

「ア、アルヴィンさん……?」


 ココルが戸惑ったような声を上げる。

 メリナもテトも、彼女と同じような表情をしていた。

 俺は言う。


「全員、動揺しすぎだ」


 ドライアドは動きを止めたままだが、あまり時間はかけられない。


「落ち着いて考えろ。俺たちは深層冒険者だ。パーティーの平均レベルは54。四人でなら、四十層のボス程度問題なく倒せるはずなんだ」


 ボス攻略のパーティー平均レベルは、階層数プラス10が望ましいと言われる。

 実際には、階層数と同じくらいの平均レベルでもクリアされることは多い。

 俺たちが勝てないはずがないのだ。


「で、でもアルヴィン」


 テトが恐る恐る言う。


「ここではスキルが使えないんだよ? ボクたちがここまでレベルを上げられたのも、パーティーを追い出されたって冒険者を続けてこれたのも……全部マイナススキルと引き換えに持ってた、たくさんのスキルのおかげじゃないか! それが使えないのなら、ボクたちは……」

「俺は、そうは思わない」


 テトに向け、迷うことなくそう宣言する。


「俺は……決して生まれ持ったスキルだけで、ここまで来たわけじゃない。必死に剣術を磨いたし、ダンジョンやモンスターの知識も学んだ。冒険者として生きていくために、懸命に努力してきた。だから、今の俺がある。――――戦闘も戦闘以外も、全部上手いと言ってくれたのは君だろう、テト」

「っ……」

「みんなも、俺と同じなんじゃないか?」


 俺は続ける。


「ココルはとにかくすごいよ、こんなに上手い回復職(ヒーラー)には出会ったことがない。メリナもだ。呪文を覚える記憶力も、狩りの地形やモンスターの攻撃パターンを見出す目敏さも、メリナに勝てる奴はいないだろう。テトは、同じ前衛として嫉妬するよ。返り討ち(カウンター)は昔、俺も身につけようとしてできなかったんだ。有効タイミングや弱点部位を見つけるセンス、そしてそこを的確に突ける技術は、素直に尊敬する」


 三人は、黙って俺の言葉に耳を傾けている。


「みんな、努力してきたはずだ。ここにいる誰の強さも、生まれ持ったスキルだけに頼って身につけられるものじゃない。何かを学んで、研鑽してきたはずだ。そうやって得てきたものがあるはずなんだ。それはレベルもそうだし、覚えた呪文や、集めたアイテムもそうだろう。だが、何よりも――――」


 俺は、一番伝えたかったことを告げる。


「――――冒険者(プレイヤー)スキル、なんじゃないのか」


 冒険者(プレイヤー)スキル。

 スキルとも、レベルとも、パラメーターとも違う、冒険者としての強さ。

 ステータスとは一切関係ない、自分の身体に刻みつけた素の技術(スキル)のことを、冒険者たちはそう呼んでいた。


「ここは、きっとそういうダンジョンなんだ」


 普段と違うことがあった時は、なぜかをよく考えるようにしている。

 余裕がない中でも、俺は頭の隅で常に考えていた。


「階層によって様々なモンスターが出る。そしてボス戦では、スキルを使用できない――――。もし箱庭の作者がいて、このダンジョンの作りに意図があるのだとしたら……すべては冒険者(プレイヤー)スキルを試すためだったんだと、俺は思う。生まれ持った才能ではなく、努力が試されるダンジョンだった。だからこそ――――俺たちは、勝てる」


 俺は告げる。


「マイナススキルを持ちながら努力してきた俺たちが、勝てないはずがないんだ」


 皆の沈黙が、静寂を作る。

 だが、それはすぐに破られた。


「そ……そうだよ!」


 テトだった。


「ボクたちなら勝てるよ! よく考えたら、たかが四十層のボスだもんね。五十層まで潜るボクがクリアできないなんておかしい。スキルなんてなくたって余裕だよ!」

「ちょっと、慌てすぎていたみたいね」


 メリナがふと笑って言う。


「召喚される取り巻きも、枝の攻撃も、別に大したものじゃなかったわ。それでこっちは四人だもの、スキルが使えないくらいの縛りがあってもいいわよね」


 それから――――皆の視線が、ココルへと向かう。


「わたしは……信じようと思います」


 神官の少女が、顔を上げ、力強く言う。


「アルヴィンさんの言葉と……わたし自身の技術(スキル)を」


 パーティーの意思は決まった。

 ここからが、本当の戦闘開始だ。


 テトが投剣を掴みながら、メリナが杖を構えながら、ドライアドの本体を見据える。


「そういえばさー、まだボスにダメージ入ってなかったよね」

「どう攻略するのがいいのか、ちょっと確かめてみましょうか」


 投剣と火球が、ドライアド本体に向けて放たれる。

 だがそれは、蔓のような枝が無数に集まり盾となり、防がれてしまった。

 どうもダメージが入るようには見えない。


 しかし、それは全員の想定内だった。


「決まりね。本体への攻撃はまだ届かないわ。枝を攻撃するわよ」

「ああ」


 俺は振り上げていた剣を、地面を這っていた最後のポイズンスティール・メイルへと振り下ろす。

 紫色の鎧は、残りのHPを消し飛ばされて四散した。


「――――さあ、来い」

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