表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/92

【ドロップ率減少・特】③

 数日後。

 明け方まで降っていた雨があがり、空に虹が架かったその日。

 俺は、件のダンジョンの前に立っていた。


 山肌に開いた巨大な穴。

 地下へ続くその入り口は、幾何学的な模様の石材で囲われている。無論人工物ではなく、ダンジョンが生まれる時に自然にできるものだ。


「……」


 周囲を見回すが、誰もいない。

 人気のある大きなダンジョンならば、入り口付近にはポーションや食糧、装備を売る露店が並び、客引きやたむろする冒険者たちの声でうるさいくらいなのだが、ここは静かなものだ。そう言えば、来る時も誰ともすれ違わなかった。

 典型的な、過疎ダンジョンの光景。


「……まあ、別にいいんだけどな」


 俺はダンジョンへ一歩踏み出す。

 すでに準備は調えている。今さら買う物もない。

 むしろ、ライバルがいない方が好都合だ。


 入り口をくぐり――――ふと横の壁に、何かが書かれていることに気づいた。

 暗がりで見にくいが、角度を変えつつなんとか読んでみる。




“老人は答えた。”


“「然り。この肉体は衰え、聖剣は錆び付き、魔の術を行使する心力も枯れ果てた。しかし、我が▒▒▒▒▒▒は、未だ▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒」”



“――――――落日洞穴”




「……ははあ」


 俺は文面の正体に思い至る。

 どうやら、これは思わせぶりな原典(フレーバー・テキスト)らしい。


 ダンジョンには必ず、こんな意味ありげな文章がいくつも残されている。

 ある程度攻略され、情報が出回ればほとんど無視されてしまう代物だが、中にはボスや仕掛け(ギミツク)、出現モンスターの情報や、隠し部屋に安全地帯の位置といった重要なヒントが書かれているものもある。ダンジョンを最初に攻略する冒険者にとっては、宝よりも貴重なものだ。


 ただこれは、そういったものではなさそうだった。

 一部が掠れて読めないが、単なるダンジョンの紹介文だろう。


落日洞穴(らくじつどうけつ)、ね」


 それがこのダンジョンの名前だ。

 ステータスにある現在地欄にも、その名称が表示されている。


 どういう意味だろう?

 大氷窟や霊骨回廊など、ダンジョンの名前はその特色を表していることが多いが、これはよくわからない。


 落日……斜陽……衰え…………?


「……ダメだな」


 やはりわからない。

 俺は考えるのをやめて、ダンジョンへ歩みを進めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

カクヨム版→『マイナススキル持ち四人が集まったら、なんかシナジー発揮して最強パーティーができた件』

ツイッター作者Twitter

書籍版が発売中です!(完結)

表紙絵1

コミカライズされました!

表紙絵コミック
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ