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マイナススキル持ち四人が集まったら、なんかシナジー発揮して最強パーティーができた件  作者: 小鈴危一
1章

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【嫉妬神の加護】⑤

「えっ、あ、あなた……私の話聴いてた??」

「聴いてました! そのうえでお願いします! わたしたちとパーティーを組んでください!」

「あのね……言ったでしょう。私はパーティーを組むべき人間じゃないの。私のマイナススキルのせいで、そこの剣士がもしキルをためらうようになったら、あなただって危険な目に遭うかもしれないのよ? 私だって前衛が役立たずになるのは困るわ」

「それはっ……いえ! じゃあ、今だけ! 少しの間だけでも、試しにパーティーを組んでみてもらえませんか? 今だけ、試しに、です!」

「うーん……それなら……わかったわ。少しの間だけね」


 という流れで。

 魔導士のメリナは、俺たちとパーティーを組むことになった。


 パーティー登録をする前と後とでステータスの変化を確認してみたが、本当に全ての数値が10%も上昇していて驚いた。

 これだけなら本当に強力なスキルなのだが……そう都合よくはいかない。


 というわけで。

 俺たちは今、セーフポイントを出て、モンスターを探して歩き回っているところだ。


「……で、これは今、何をしようとしているの?」


 メリナの問いに、ココルはキョロキョロと周囲を見回しながら答える。


「このパーティーで、一度モンスターを倒してみたいんです。キルする人は誰でもいいので、アルヴィンさんもその時はお願いします」

「ああ、わかった」


 ココルの意図にはなんとなく想像がついていたので、俺は素直にうなずく。


「……あー。もしかして、あなたのレベル上げがしたいのかしら? 確かに私のスキルがあると、神官にもキルボーナスが入るものね。ただ……三人パーティーでも半分になってしまうから、もう少し上の層で、補助してもらいながら自分で倒した方が効率的だと思うけど」

「いえ、そうじゃないです」


 ココルが首を横に振る。


「わたしにレベリングは必要ありません。それに、たぶん……わたしにキルボーナスは入らないと思います」

「……?」


 そうこう言っている間に、進行方向にモンスターが現れた。

 テンタクルプラント。頭部が花になっていて、触手のように蔓を操る植物型モンスターだ。


「いいわ。任せて」


 駆け出そうとする俺を、メリナが止めた。


「―~―~―~、―~―~―~―~―~―~」


 そして、詠唱が開始される。


 ココル以上に速く、滑らかな詠唱だった。

 神官とは役割が違うから単純に比較はできないが、少なくとも魔法職の後衛としては同等の実力を持っていそうだ。


 そして、メリナが構える杖から火球が生み出され、飛翔する。

 それはテンタクルプラントへと命中し、即座にその体を四散させた。


「一撃か? すごいな」

「弱点属性を突けばこんなものよ。これでもレベルは【38】あるしね」

「……そうか」


 レベル自体は、ココルはもちろん俺よりも低い。

 だがソロに向かない魔導士が、ここまでレベルを上げるのに相当な苦労があったことは想像がついた。


「あ、あの……」


 後ろからココルが声をかけてくる。


「メリナさんは、何属性使えるんですか?」

「メインで使ってるのは五属性で、レベル【38】の魔導士が使える呪文は全部覚えてるわ。あとはそれ以外で役に立つものをいくつか、ってところかしら」

「ええっ、そんなに!?」


 ココルが驚きの声を上げる。


「すごいのか?」

「は、はい……。神官と違って魔導士は、使える呪文がずっと多いんです……とても覚えきれないくらいに。だから普通はレベルが上がるにつれ、杖の性能や持っているスキル、あとは個人の好き嫌いで使う属性を絞っていくものなんですが……」


 そう言えば俺を追い出したパーティーリーダーの魔導士も、レベルはずっと低いにもかかわらず三属性しか使っていなかった。


 メリナが苦笑しながら言う。


「運が良いのか悪いのか、私、属性強化のスキルを五つも持っているのよ。死にスキルを作るのが嫌で、必死で呪文を覚えたのよね。それに魔導士がソロでやっていくためには、モンスターの弱点属性を突けるようになるのが一番だから」


 冗談めかして言っているが、それはどれだけ大変だったことだろう。


 魔導士や神官のような魔法職が使う呪文は、スキルとは違う。

 レベルの上昇と共に使える技が増えていく点では、前衛職がたまに持つ【剣術】や【槍術】スキルと似てはいる。

 だが決定的に異なるのは、魔法はスキルのように勝手に使えるようには決してならず、自分で呪文を覚えなければいけないことだ。


 呪文の内容に意味はなく、ただの音の羅列に過ぎない。

 それを覚え、正しく発音し、しかもできるだけ速く唱えるというのは、かなりの反復練習を積まないと難しい。

 前衛に守られ、運動量も少なく楽そうにも見える魔法職だが、実態はそれだけ大変な職業であることを俺は知っていた。


 メリナの場合は、それが五属性分だ。


「あっ、そ、それより……」


 と、ここでココルが急に話題を変えた。


「あの……メリナさん。メリナさんのスキルのデバフって、この……《嫉妬神の呪い》ってやつですか?」

「ええ、そうよ。ステータスを見たのかしら? 私のところに、溶けたハートマークのアイコンがついてない? STR(筋力)VIT(耐久)の数値も、それで3%減少しているはずよ」

「……」


 パーティーメンバーのレベルやスキル、状態異常にバフやデバフ、残りHPなどの簡易ステータスは、自分のステータス画面から確認することができる。パーティーを組むメリットの一つだ。

 メリナは、ココルがそれを見たのだと思ったのだろう。

 ただ、それはおそらく違う。


 少しおいて、メリナが首をかしげる。


「あれ? でもさっき、付与演出がなかったような……」

「……一応。一応もう一戦、行ってみましょう。そ、それではっきりするはずです」


 ココルが興奮で震えたような声で告げた。

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