第4話 レイ 戦うことにしました
俺はルーナさんに買われ外の世界デビューをして、周りを眺めていた。
しかし、そんな悠長なことをしている暇はなかった。
なぜなら、通りすがりの人たちに、笑われたり、石を投げられたり、それに何の反応も示さなければ足を引っかけられ何回か転ばされたりした。まぁ、レベルが上がったおかげでかすり傷程度だったけど、、、
どうやらこの世界は奴隷が文字通り者扱いされているようだ。
そう思っていたが、何人かはルーナさんに軽蔑の目を向けていた。
しかしルーナさんは特に気にした様子もなく、受け流していた。
・・・ルーナさんは、一瞬だが、悔しそうに口を歪めていた。・・・しかし、俺はそれに気づくことはなかった。
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それから少し歩くと、かなり豪華な馬車が見えてきた。
その馬車の周辺には護衛と思われる人たちが数名、経緯日をしていた。
「見張りご苦労様、では行きましょう。」
「「はっ!」」
(ほぉ、この統一された動き、だいぶ訓練されているなぁ。それにしても、やはりルーナさんは上の立場の人なのかな?もしかしたら子爵位の立場なのかな?)
俺がそんなことを考えていると、ルーナさんが俺を馬車の中に来るように手招きした。
「ほら、レイさん、こっちへいらっしゃい。」
そして俺は促されるまま馬車の中へ入った。
・・・とても、すごいです。
まず驚いたのが、馬車の乗り心地だ、揺れはほとんどなく、そして座り心地も最高だ。
気を抜いたら夢の中に行ってしまいそうだ。
・・・あれ?俺は確か奴隷として買われたんだよね?こんな待遇受けちゃダメじゃね?
俺はこの世界に来てから5年の内に、すっかり奴隷という扱いに慣れてしまったようだ。
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ローズ・ルーナ side
ローズ・ルーナの生家、ルーナ家は、5爵位一つ、《伯爵》としてそこそこの権力を持っていた。
しかし、ルーナ家は国の重鎮たちからだけでなく、国民からも軽蔑の目で見られていた。
それは、ルーナ家が国で唯一奴隷制度に反対しているからである。
そんなルーナ家の頭首のローズが、なぜ今日奴隷商のもとへ赴いたのかには、ある理由がある。
(全く、国の重鎮は何を考えているのかしら!あんなことを言うなんて!)
先日・・・
「全くローズ・ルーナ殿は何度言ったらわかるのかね?奴隷は人ではなく物だ。それ以下はあれどもそれ以上は無い!」
そう言うのは公爵家の1柱、フィリックス・チャッビー
チャッビー家の頭首で、奴隷制度賛成派の一人だ。
「なぜです!いくら奴隷といえど、同じ人間ですよ?なぜそんなに卑下したがるのです!」
「なぜも何も我々貴族は特別な存在だ。たかが奴隷後時とと同等なわけあるまい?っククク」
「ッなぜそこまで!もしかしたらチャッビー殿もあのような扱いを受けていたかも知れないのですよ?」
「ックク、何をばかなことを、我々は選ばれし存在だ。万が一にもそんなことにはなるわけがない。」
「ですが!」
「ッええい!黙れ!そこまで言うのならば証明して見せろ、最も、できるはずもないがな!」
「できますとも!なんとしても認めさせます!」
「そうか、、、では、来月この国で行われる剣舞祭、そして、半年後に行われる魔導祭、この二つの大会で優勝して見せろ。勿論、お前が買った奴隷でな。ックククク!」
「ッな!そんな無茶な!」
「どうした?できないのか?勿論、これができなければ、公爵権限でお前の家族は全員奴隷として売り飛ばすがなぁ!っハッハッハッハッハ!」
「なぜ家族の話がここで出るのですか!夫と子供たちは関係ないではありませんか!?」
「ふむ、、、それがどうかしたのかね?それで?やるのか・やらないのか?」
「ック!、、、やります。」
「ハハ!楽しみじゃのう?せいぜい頑張ることだ。」
そしてチャッビーが部屋から出ようとしていた時、
「待ちなさい!私が負けたら奴隷になるというのなら、あなたが負けたらあなたが奴隷になりなさい?」
「ふむ、、、いいだろう、どうせお前が負けるだろうがなぁ!」
ということがあったのだ。
奴隷反対派が奴隷を買うということは自分にとってこれ以上ない屈辱だったが、その感情を押し殺し、奴隷商に来た。
「、、、いい奴隷はいるかしら?」
「はいぃ!もちろんでございます!今日も良いのが揃っていますよ!」
嬉々として語る奴隷商に怒りを覚えるが、悟られないように奴隷のほうを見た
(酷い、、、ここにいるほとんどが子供じゃない! しかもみんな全てをあきらめたような顔をして、、、)
そうしてさらに怒りの感情が出てきて隠すのに苦労するようになってきたとき、ある子供に目が留まった。
(あれ?あの子目にまだ光がある。まさか!この状況でもあきらめてないの?)
その子供こそがレイだった。
しかし、光が宿っていたのは、レイがこの世界に来てから今まで外の世界を知らないため、わくわくしているだけだなどと分かるはずもなく、、、、
(あの子なら、、、)
「決めた、あの子にするわ。」・・・・・
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レイside
「、、、ねぇ、レイさん?少しいいかしら?」
「?、、、はい、何なりと、ルーナ様。」
「そのね?まずはそのぉ、、、口調を軽い感じにしてくださらない?」
「いえ、俺h、、、私は奴隷ですので、ご主人様にそのような口調で話すことはできません。」
「それよ!それ!俺でいいわ!いや、これは命令よ?口調は敬語をやめなさい!」
「ッ!、、分かりました。」
「もう、分かった、でいいのに、、、それでね?レイ君、あなたにお願いがあるの。」
そしてローズは話した。レイを買った理由、この国の奴隷制度の事、反対派がほとんどいないこと、そして、チャッビー公爵との勝負に負けたら家族が奴隷にされること。・・・
「お願い!レイ君!勝手なことだってわかってる、けど、家族と離れたくないの!」
バッ!、、、ローズさんは勢いよく奴隷である俺に向かって頭を下げた。
「そんな!やめてくださいローズ様!頭を上げてください!」
「グスッ、、、でも、レイ君には関係ないことなのに、巻き込んじゃって、、、グスッ」
「、、、分かりました。わたs、、俺にできることがあるのなら、やります。俺はローズ様の奴隷ですから。」
「本当にいいの?下手をすれば死ぬかもしれないのよ?それも、あなたには関係のない理由で、」
「いえ、関係ありますよ。俺も奴隷制度には思うところがありますし。」
「グスッ、、、レイ君!ありがとう!本当にありがとう!気になることがあったら言ってね?できることがあれば力になるから!」
そう言ってローズさんは俺の首を絞めるように、そう、大きいぬいぐるみにヘッドロックをかけるように抱きしめてくれた。
異世界転生して5年目、俺はやるべきことが決まった。この人たちを助けるため、というのもあるが、自分自身がこれからどれだけ強くなれるのかが楽しみでしょうがなくなってしまった。それにこの人たちを助けることが出来れば、これからこの世界で生きていくにあたって、いい後ろ盾になってくれそうな気がする。
という自分の中の闇に気付き、罪悪感に苛まれるレイだった。