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ゲリラライブマーチ  作者: 風月泉乃
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白紙の楽譜 第1話


「なぁフォル、なんで俺らは律義にこんなヤツの話しを聞かにゃあならんのだ?」

「目を付けられたからだろうな」


 突如として振って湧いた謎の男に俺達は為す術なく。

 強制的に話しを聞かされている。


「ふむ、何故君達に目を付けたかを知りたいと? では、教えてあげよう」


「聞いてねぇよ‼ 勝手に話しを進めてんじゃねえ」


 こちらの話しを聞く気など全くないようだ。

 妙なねっとりとした視線を俺に向ける。


「まずは君からだね、フロネ・ルシーちゃん」

「ちゃんずけすんな」


「君は良い、実に良い。そのミニマムボディー‼ 表情筋が死んでいるかのような小顔の癖に、ちょっと保護良くをそそる生意気そうな雰囲気なショタッ子。言葉遣いや気はちょっと荒い様だが、そこもチャームポイントだぞ」


 説明をしながら、男は何もない空間から何やらメモリの付いた紐で俺の体を測りながら、ちょくちょく自分のコンプレックスを的確に射抜いてきやがる。


「誰がチビだ」


 俺の右拳をしゃがんで躱した後に、蹴りを放つがそれもヒラリといなされる。

 男は唯頷いて、目を細めて俺の心か何かを見通すかのような視線を向けてくる。


「君は良いおモノを沢山、持っているな」


 背筋に冷たい感覚が走って、思わず男の前から飛び退く。


「ルシー?」


 とっさの事にフォルが不思議そうに首を傾げている。


「全種族の血か」

「なんで、そのことを……何もんだお前」


 殺気を向けた俺に、男は構わずに瞳をキラッキラにさせて擦り寄ってきた。


「きっと凄いんだろな。今度色々と見せてくれると嬉しい」


「あ、あぁ」


 昔に浴びた研究者達のような気持ち悪い感情ではなく。

 純粋で子供の様な感じだ。

 そのでいで、ちょっとした怒りや警戒心があっけなく崩れた。

 まぁ、呆気に取られただけとも言えるが。


「にゃろう、全く読めねぇ」


 人の意表を突いた行動をするくせに。

 そこに人を騙そうだとか陥れようという気配が感じ取れない、俺の感が鈍っているのか、それとも本当に考えてないのだろうか。


 いや、一貫して本当の事しか言っていないのは判ってしまうが、自分の能力は全てが中途半端なモノだ。

 感情が色の付いたマナで見えるという天神特融の能力を過信は出来ない。


 ――そうだ、全てが中途半端な出来損ない。

 気落ちした心を振り払うよう、頭を振って男に視線を戻す。


 一瞬だけ彼の目が真剣に俺を見ていた気がした。


「そして次に君だな、カラフィラル・フォルアート君」


 俺の目の前から煙の様に消えて、今度はフォルの手を取って擦り寄っている。

 一瞬の事で俺でも反応が遅れた。


「わわ⁉ っと、手を放してください」


 男の手を振り払おうとするが、がっしりと両手て握られていて離れない。


「君は良い声をしている、一音一音丁寧な発音だ。それでいて中性的な声質だから高音域の声音も出せるだろう。ルシーの小さいながらも力強い声質に実に合っている、男だというのに君は肌が白く綺麗だ。しかし健康的な肉体美をしている、足も長くモデルの様な体型だ」


 絶対に逃がさないとばかりに素早い動きで翻弄しつつ、フォルの体を隅々をまるで視姦しているかのようにみていく。


 というか、足とか腰に関しては妙に滑らかな手つきで触っていた気がする。


「だぁ~、その気色悪いのを今すぐやめろ」


 完全に死角から男に向かって飛び蹴りを放ったというのに、たやすく躱される。


「フォル、大丈夫か?」

「あ、あぁ……あんな良く解らない感覚は初めてだ」

 ブルっと少し顔を青くしてフォルの奴が震えている。


「ふははは、良い、実に良いよ。初めに会った君達はまさに私の理想の原石だ」


 一人で狂ったように訳の分からない高笑いをして、大空に向かって叫ぶ。


「私の事はマコトとんでも良いし、マコちゃんと相性深く読んでくれても構わないぞ。なんなら別の愛ある呼び方を考えてくれても全然かまわない」


 言葉の最後に妙な色気を出して、簡単に自己紹介だけ済ましやがった。


「誰だ呼ぶか」

「絶対に呼びません」


「ふむ、先ずは心の距離から近づけていこうと、そういう事だね」


「誰も言ってねぇ‼ 近づくな、十キロ以上は離れてやがれ」

 フォルも俺の言葉に何度も頷いて、「そうだそうだ」と相槌を入れてくれる。


「もう、つれないなぁ」



 俺の言ったことなんてほとんど聞くつもりないようだ。

 腰に手をあてがって、冗談ぽく肩をワザとらしく落として俺達を見てくる。



 とりあえず、この得体の知れない男には絶対に心を許していけない。

 そんな気がした。


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