努力だけで成り上がる男の物語
よろしくお願いします。
人は生まれながらに平等ではない。
容姿が優れた者
運動能力が高い者
勉学に秀でている者
はたまた天才と呼ばれる人間
例を挙げればきりがない。
しかし、何の才能も無かった彼は
努力の天才であった。
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神奈川県立橋本高校、特徴的なことはなく、県立で少し頭が良いと言う程度だろうか。
桜並木の通りを抜けると小さい頃よくお世話になった大病院が見える。
風にのって運ばれてくる桜のほんのり甘い匂い、入学式の日だからなのか、雲一つない快晴だ。まるで空が新たな門出を祝福してくれているようだ。
そんなのどかな風景がショウは好きだった。
10分程歩くと目的地であった神奈川県立橋本高校へ到着した。
思い返せば色々なことがあったものだ。
ショウの意識は過去へ...
立川ショウは一般的な家庭に生まれ、親の愛情をほどほどに受けながら育った。端から見ると子どもだがショウには秘密があった。
前世の記憶だ。
あまり思い出したくないが、前世の自分は運動もそこそこ、
勉強も平均以上ではあった。しかし、突出したものが一つも無かった。要するに、つまんない人間だったのだ。
会社、一応大手とはよばれる大企業に勤めていたが給料はそこまででもなかった。出世は主査で打ち止め。
後輩に追い抜かされることも多々あった。
そんな自分が嫌いだった。
ある日、転機がショウに訪れる。
いや、転機ではなく転生とよぶのがいいかもしれない。
その日は小春日和と言うのにふさわしい暖かい日だった。
いつものように地下鉄に乗り会社の最寄り駅で降りた。
信号は青だった。
道路標識は折れ曲がり、辺りには赤いものがたくさん飛び散った。それが自分のものだと理解するのに数秒、表せないほどの痛みが全身を襲った。ふと自分の右側をみると腕がなかった。
目の前がぼやけてきた。眠い。死にたくない。
大丈夫ですか!と自分が突き飛ばした小学生が駆け寄ってきた。
救急車の音が聞こえる、ような気がする。
どうやら耳も駄目になったようだ。眠い。この様子だと自分はもう助からないだろう。
数年前に死んだ母親が手を振っている。眠い。
いまそっちへ ⋅ ⋅ ⋅
こうして、男は死んだ。死因は飲酒運転のトラックに轢かれたこと。34年の生涯だった。
そのはずだった。
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