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異世界で賢者と呼ばれているおっさんはただの料理好き。

作者: 味噌の国の人

「炊きたてのご飯の上にたまごと味の素少し、あといい感じに醤油をかけなさい」


部屋の奥にいる男、賢者の言葉を聞いた人々は歓声を上げた。

男は、うんうんと満足げに頷いている。


「では、諸君、今日の講義はこれで終わろう。ごきげんよう」


人々がぞろぞろと部屋を出て行く。


「あの…」

そんな中、1人の女性が賢者の背中に声をかけた。


「どうしたのかな?」

賢者が振り向く。


「賢者様…お尋ねしても良いでしょうか」

「あぁ、構わないよ」

「いい感じってどれぐらいですか」


「…というと?」


賢者は質問の意味が分からず聞き返してしまった。


「賢者様が先ほど”いい感じに”醤油をかけなさい、と仰ってました。それはどれぐらいでしょうか。大さじ何杯とか小さじ何杯分とか具体的に…」

「あぁ、そのことであれば、自身がこれぐらいが丁度いいと感じる量が適量なのだよ」

「出た!適量!」

「なに?」

「賢者様の本に度々出てくる言葉です、”適量”。適量とはどれぐらいのことなんですか!しお適量、コショウ適量…お水も適量、適した量って事ですよね?ということはその量が存在しているわけですよ。でしたらその量をお書きください。適量という言葉ではわかりません!」


女が一気にまくし立て、気圧される賢者。


「えーと…」

「こんないい加減な書き方では困ります。いくら賢者様といえども民を惑わす行為は慎んでいただきたい」

「いや、民を惑わす行為ってそんなつもりは」

「では、我々はこの本をどう読み解けば良いのですか」

「どうって、そのままなのだが…例えば、適量というのは適した分量になるよう味見をして調節して欲しいという意味なのだ。だから、ご自身の気に入った味加減を探って欲しい、そういうことです」

「待ってください、それでは同じものを再現出来ないじゃないですか」

「同じものを再現したとしてそれが必ずしも全員が美味しいと感じるものとは限りません。私から言えるのはそれぞれが美味しいと感じる味をそれぞれが探求する心を忘れて欲しくないのです」

「なるほど、賢者様はそこまで考えて…わかりました。私なりの美味しさを探求したいと思います」


一礼して女は去って行った。

部屋に1人残された賢者。


「…やれやれ。まずは作ってみて美味しかったらそれがまたレシピになるじゃないか。作る前から困ったもんだ」


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