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俺も私も生きている  作者: 高槻博
8/8

逃げるというのは麻薬だ。

夏目を目で見送った後、俺は自分の教室に行ったけど前日と変わらずアウェーの雰囲気がだだ漏れだった。

それもそのハズ。クラスの中心であろうやろう2人にイチャモンをつけてしまったからだ。もちろんそんなのは気にしなかったけど、こうも徒党を組んで疎まれている雰囲気を出されるとクラスとは小さな社会そのもののように覚えてきた。


それからというもの午前中の4時間の授業すべて俺の頭には何も入っていなかった。気づけばお昼休みに入っており、周りがざわついていた。教室に居づらいという気持ちもあったし、あの中庭のベンチに行けば夏目に会えるような気もしたから、母さんの作った弁当を持って中庭に向かった。


中庭には向かったもののそこに夏目の姿はなかった。別に期待してなかったし。と自分に言い聞かせてベンチに座った。日陰とはいえ、こんな残暑の残る中、外で弁当を食べるなんて自分でもどうかしていると思う。まぁクラスの奴らも俺が教室で食っていると気が気じゃないだろうし、こっちの方がいいのかもしれない。


「夏川くん?」


そんなことを考えていると夏目がいつの間にか近くにいた。あわよくばきてくれないかと考えていたんもんだから咄嗟に頬が緩んだ。


「何笑ってるの?笑」


夏目に指摘されたことで不味いと思って表情を閉めなおした。


「別に。」


俺があえて素っ気なく言うと夏目は「今朝はありがとね。お昼ご一緒しても?」と聞いてきたので、別にお礼をされることはしていないと言うことと、お昼を一緒に食べるけんを買い快諾した。


俺は口数が多い方じゃなかったのでこれといって話が盛り上がることはなかったが、夏目が本章を出せば、天真爛漫で明るく口数の多い子になるので聞き手に回れば良いだけだったので楽と言えば楽だった。そのお昼はなんでもない日常の話をしただけだけど、きっと俺自身も楽しかったんだろう、気づけばお昼休みの終了のチャイムが鳴っていた。夏目を教室に送って行こうとしたが手で制止をかけられた。先程までの天真爛漫の表情と違って教室での表情に一変していた。その表情を見るたびに、この表情を作ってしまったのは俺だと自分自身を懺悔している。

そんな表情で制止を掛けられると俺もその意見を尊重せざるおえなかった。


別々の道で教室に向かおうとお互いに背中を向け合ったところで夏目が唐突に声を掛けてきた。


「あ、夏川くん。明日もここでお昼食べない?」


「もちろん。」


俺はそう言い残すと再び背中を向けて歩き出した。

それでも夏目の方から誘ってくれたこともあり、俺自身嫌がられていないんじゃないかと思い込めたので幾つか気持ちが楽になった。もちろんそれが逃げという感情だということは理解していた。

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