プロローグ
こんな世界はつまらない……
何のために生まれ、何のために生き、そして死ぬ……
そんなことを考えながら無味乾燥な日々を生きる人々の群れ……
そんな世界を眺めながら物好きな神様は考えました
もしかしてこの世界って人間にはあんまり面白くない?! 凹むなあ… いい感じにできたと思ってたんだけどなあ… 精気失ってる人間多すぎんだよなあ… もしかして世界観にミスマッチしてる人間がおおいのかもなあ…
「このままほっておいてもなんかあんまり面白くねえなあ… いつもなら生まれ変わりに期待って感じなんだけどそれならいっそ今からほかの世界にぶち込んでやるか! もしもーし、オレオレ!ちょっとそっちの世界に人間送りたいんだけど…えっ、いいの? サンキューね」
そんなこんなで神の実利を兼ねた暇つぶしが始まったのである
とりあえず三途の川のあたりうろついている人間にでもお話にいくかな
三途の川、そこは生と死の狭間 そこから行けるあっちとこっち、ここをうろついている人間がいるとしたらそれは生きてはいるが死と隣り合わせ、いつ死んでもおかしくはない状態の人間
ならばこの試みを試すにはちょうどいい人材だ
「おっす、元気?」神は三途の川の近くをウロウロしている男に声をかける
「えっと…はい…あの付かぬことお聞きしますがここは一体…」と中肉中背で見た目20代中盤の黒髪でとりわけ特徴のない名前も山田太郎とかが似合いそうな男が答えた
「えーとね、ここ所謂三途の川ってやつ?渡ったら死ぬんだけど渡っちゃう?死んだら基本生まれ変わるんだけど生まれ変わる先は日頃の行いとか実績によりけりってかんじかな~」
「そ~こ~で~神、ああ俺神なんだけど新しいこと考えてて一回軽めに生まれ変わり体験してみない?生まれ変わった先が嫌だったら引き返せば元も世界に戻せるし、気に入ったらそこで第二の人生しちゃってもいいよ!どう?」
神はぺらぺらと男に提案していく
男は暫くの間考え始める
男が口を開こうとしたそのとき遮るように神が口を開いた
「まあ、嫌っていてもやっちゃうんだけどね!」 そういうと神は男を川に突き落とした
そして突き落とした川はまばゆい光に包まれ男は忽然と姿を消した。
~男の視点~
「今日も疲れた…」
山田太郎は今日も営業を終え家路につく
この男、山田はそこそこ大学を卒業後ウサクサ食品に入社し営業マンとして働いていた
生真面目な山田は営業成績もよく社内でもそれなりに評価を得ていた
しかし山田には悩みがあった
彼の会社で売っている健康食品は所謂似非科学の見る人が見れば胡散臭い商品であったことだ
山田は優秀な営業マンである、しかしそんな商品を売りつけることの罪悪感は彼の心を蝕んでいった
そんな心を癒すのはコンビニで売っている強めの安酒だけであった
酒でそんな罪悪感を洗い流しながら家路につく
「今日は酔いがやたら回るなあ」
そう思った矢先横断歩道の階段から足を滑らせる山田
視界が暗転した
目を覚ますとそこは見知らぬ場所であった
見渡すと川がありそこには橋がかかっている
「これが三途の川ってやつか…ほんとにあるんだな…」
そう思っていると話しかけてくる男がいた
「おっす、元気?」
そう問いかけてくる男は浅黒い肌に黒髪ロングのパーマがかった髪、首にでかい首飾りをしたチャラそうな男だ
彼の話によるとここは生と死の狭間であり、どちらにも行け、死ぬと生きてきた時の行いに応じて生まれ変わるらしい
胡散臭い話だ……
しかし自分も傍から見たら十分に胡散臭い人間なんだろうな…
そんなことを考えながら、元の世界に戻ることをチャラ男に言おうとした矢先、言葉は遮られ、宙を舞い、川へと飛ばされる自分
なんて人生だ
心の中でそう嘆いた