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第5話 入学!勇者アカデミー

~前回までのあらすじ~


勇者(イサモノ)家に生まれた男子は代々勇者になるというしきたりがあるのだ。よって太郎は勇者になる為、冒険の旅に出た。

と言うのは真っ赤な嘘である。しょっぱなから過去を変えてしまい申し訳ない。


さて、重い足取りで勇者アカデミーへと向かう太郎。幼なじみで同級生の安倍サダメと待ち合わせをしている。

このように不安な心境な際は、とりあえず知り合いが居るだけで安心するものである。

そうこう考えているうちに、太郎の前に安倍が現れた。なんだかとても妙な格好をして。


「よっ、太郎久しぶりー!」


人の気持ちを知ってか知らずか、清々しい笑顔が憎たらしい。

この安倍と言う男、外見はパッツンと切り揃えられた金髪が中性的で可愛らしいが、性格は鬼畜なほどのどSである。案外コイツ、太郎の不幸を楽しんでいるのかもしれない。

とにかくど畜生な奴なので、信仰心が足りないから僧侶の勉強をしろと言われたのも納得である。


「ああ……安倍、おはよう……」


陽気な安倍に比べて、太郎は暗い。殴りたいほど暗い。


「なんだよー、久々に会えたと思ったら超暗いんですけど」


「うるさい……お前に俺の事情が分かるかよ」


唯一の頼りである友人に会えても、やはり勇者が嫌で嫌でたまらない心境は変わらないようだ。


「ま、気持ちは分かるけどな。大体中学の時いけてないグループだったお前が華やかな勇者なんてさー」


「人の悲しい過去を掘り返すなよっ」


人の古傷をえぐりそこに塩を塗り込む男。安倍と言う人物の性格がお分かりいただけただろうか?そう言えばコイツ、中学の時遠足の登山先で怪我をした太郎を見捨ててさっさと帰った男である。

いくら幼なじみとは言え、こんな奴と一応友人付き合いを続けている太郎も、何と言うかお人好しだな。


「しかしお前、そんな恰好で恥ずかしくないの?俺も人の事言えないけどさ」


肩パッド付学ランにサークレットと言う劇的にダサい太郎に対して、安倍はと言うと十字架が描かれた大きな三角帽、そしてケープ付のコートと言った、いわゆるRPGの僧侶っぽい恰好をしている。

まあ住宅地をうろつく格好ではないが、僧侶という職業を考えると太郎よりいくらかはマシかもしれない。


「うふふ、可愛いでしょ?」


「可愛いって……お前なー」


馬鹿な話で盛り上がる二人であったが、そんな彼らを狙う怪しい影が背後に迫っていた。

その怪しい人影は、物音一つ立てず太郎へ近付くと、その瞬間一瞬にして何かを奪い取り去って行った。


「な、なになに?今変な男がぶつかっていったんだけど……」


「おい太郎!後ろ後ろ!」


「後ろ?後ろに何か居るの?」


「そうじゃねぇよタコ!お前背中見てみろ!」


「えっ……あぁーっ!」


気が付くと太郎が背中に背負っていた剣と盾が無くなっていた。さっきまで確かに持っていた筈なのに。

ふと見るとぶつかった男が剣と盾を持っている。どうやらぶつかった拍子に盗まれたようだ。


「ぬ、盗まれた!ドロボーッ!」


太郎の叫びも虚しく、泥棒は戦利品を抱え颯爽とその場から立ち去って行った……。


「今のはきっと盗賊クラスの奴だな」


「盗賊!?ちょっと待て、勇者アカデミーは犯罪者まで育てるのか!?」


勇者や僧侶のクラスはともかく、盗賊まで育ててしまっては倫理も何もあったもんじゃない。


「太郎……そこは深く考えるな……」


ツッコみたい気持ちでいっぱいだが、ツッコんだら負けのようである。とりあえずこれで、勇者アカデミーには様々なクラス、及び職業があるという事が分かったと言うべきか。


「うう、まさか学校に付く前に装備を盗られるなんて……確かに父さんのお下がりじゃダセーし重いし使えるかどうかも分からなかったけどさ……」


「お前何気にヒドイ」


丸腰になった太郎を慰める安倍。そんな二人は、なんやかんやお喋りしながらとうとう勇者アカデミーへと辿り着いた。


チバ王国某所に存在する勇者アカデミー。

ここはその名の通り、勇者を育成する学校である。勇者を始め、多種多様な職業も取り扱っており、ここへ通えば特殊な職種の専門的な勉強ができるであろう。

まるで城のように大きく重厚な校舎は、勇者を育て上げる学校としての風格を漂わせている。ちなみに全寮制。


「おおぉ、すっげー……」


思っていたよりも遥かに立派な校舎に、驚きを隠せない太郎。あの胡散臭いパンフレットや情報からだと、大した事ないレベルかと思ったが違うようだ。

思わず田舎者のように上ばかりを見上げてしまう太郎であった。


「じゃあ俺たち教室別々だから、またな」


そう言うと安倍は、足早に自分の教室へと向かった。


「え?ちょっと待ってよ、行かないでよ~」


「入学式終わったら会えるだろ?じゃあな」


「安倍ェ……」


あんな友人でもやはり近くに居ないと心細い。

再び足どりが重くなった太郎だが、今更逃げ出す訳にもいかないので自分が所属する『勇者クラス』を目指して歩き出すのだった。


【つづく】

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