第九話
気が付けば書き溜めていたのがなくなってきている!
でも、テスト勉強が……えい! 僕は書くぞ!!
【さあ、続きましてBブロックです。Aブロックではデアハルガー=リューズ選手のように圧倒的な力をもった人は現れるのでしょうか! デアハルガー=リューズ選手のあの活躍でより一層ハードルが上がってまいりました!!】
実況アナウンサーの声が会場全体に響きわたり、それに釣られ観客も、そしてレイノたちBブロックの出場者もテンションが上がっていた。
【――では、Cブロック代表決定戦! 始めっ!】
Aブロックと同じ実況の始めの合図と共にゴングがなった。
と同時に参加者全員が気合を入れるため「うっしゃーー!!」と大声を上げていた。
「悪く思うなよ、小僧!」
剣を振りかぶった男が、僕に向かって正面から襲いかかってきた。
よし、先ずは――
創造魔法で片手直剣を創り男の剣を受け止める。
いきなり剣が出てきたことに驚いた隙を見て男の腹に思いっきり殴りを入れる。
「ぐほっ!」
殴られた男は、白目をむいてその場で倒れる。
よし、この調子で勝ち残っていこう。
「狐の仮面の小僧ぉ! まだここに来るのは早いぜ」
またも、僕を獲物とした者が襲いかかってくる。
相手はハンマーを持ちあげ、僕目掛けて振り落とす。それを、ギリギリのところで躱す。
「舐めるなあああ!!」
叫びと共に男は振り終えたハンマーを再び僕めがけスイングするように振る。
ハンマーの重みに負けているな。これなら舞台から出して除外できるかも。
舞台の端に誘導しようと、行動をとったその瞬間、
「穿て≪フレイムアローズダウン≫!」
空に魔方陣が浮かび上がり、中から炎の矢が大量に舞台中に落下してきた。
「おっと」
こちらの方に落下してきた矢は、小さい動きでよけ、僕を襲ってきた男は見事に矢の餌食になった。
上級魔法か、やっぱり上級魔術師が居たな。
【おっとおお! これはまさかの急展開!!! 始まってそうそう出場者が多数脱落したぞ!! 残りは二人! もう決着がつくのかああ!】
「チッ! 残った奴がいるとはな。俺の炎をよけれたのには褒めてやる」
上級魔法を放った本人らしき赤髪の男が僕に向かって話してきた。
赤髪のその男に僕は見覚えがあった。
忘れはしない。あの日、あの夜、父さん――いやハリスに命じられて僕を殺そうとした刺客の一人だった。
そうか、あんたも出場してたのか。
知らぬまに僕は高揚感に包まれていた。
ハリスの前にあんたにも借りを返しとかないとと思っていたんだ。丁度いい。
「チッ、いいぜ。お前のその殺気に満ちたオーラ、やっぱそうこなくっちゃな! ≪ファイヤーボールズ≫」
男がそう叫ぶと以前と同じ、赤い炎が複数打ち出された。
炎は全部で五つ、全てが僕めがけてとんでくる。
それを僕はいとも簡単にひらりとかわす。
「チッ、これをよけるか。ならば――」
赤髪の男は魔力を集中させ、不敵な笑を浮かべ叫んだ。
「上級魔法≪ヘルファイヤー≫!!!」
赤髪のとこの手からは、今までの炎よりも比べ物にならないほどの大きさと熱を帯びた業火が放たれた。
しかし、僕はその場を一歩たりとも動ごかなかった。
着弾と同時に会場を震わせるほどの轟音と爆風が舞台を包んだ。
「カッ、どうよ? まあアーガスの分家は伊達じゃないということだな」
男は勝利を確信した顔で叫ぶ。
僕のいる舞台は今だ、土煙と熱気に包まれている。
しばらく静寂だったその場から声が聞こえた。
「昔の炎から進歩していないな。ねえ、ウルグラ=ハイク」
土煙が薄まったそこに狐の仮面を被った全く無傷の僕がいた。その手には、青色に光らせた片手直剣を持って。