第六話
コンコン、木製のドアを軽く叩く。
「一年E組、レイノ=ランカスタです」
ドア越しでも聞こえるくらいの声で僕はそう言った。
「入れ」と言う、女性の声が聞こえてくる。
僕は、それに従いドアを開け理事長室へと入った。
「失礼します」
理事長室には、少し目がきつめの豪快な女性とでも言うのだろうか、力強さなどで引っ張っていきそうな印象を持たせる女性だった。
「やあやあ、よく来てくれた。レイノ=ランカスタ君。いや…………レイノ=アーガス君」
「んなっ!」
なぜこの人は僕の秘密を!
僕は、早急に警戒態勢に入る。
その姿を見た理事長は、不思議そうな顔をして言った。
「ん? 君は、ファナから何も聞いていないのか?」
「え?」
ここで、ファナさんの名前が出てくるとは思わなかった。
でも、僕の正体を知っている人はファナさんくらいしかいないから当然か。
「手紙とかもらっていないのか?」
「あ!」
僕は、ポケットからファナさんから届いた手紙を出す。
「これですか?」
「恐らく。読んでいなのなら今この場で読むがいい」
手紙を開き中身を読んだ。
:やっほー、レイちゃん元気してるー?
行き成りこんな手紙出してびっくりすると思うんだけど。
実は、レイちゃんの入学には条件があるのよ。今さらでごめんね。
なんで、言わなかったんだって思っている? でも言ったら絶対「嫌です」って言うでしょ? だから言わなかったの。
詳しい意内容は学園長に聞いてね。
ファナより
「だそうです」
「ふむ、とてつもなく大雑把だな」
それあなたが言う! 確かにこれは適当な感じはするけど……。だけど、僕からしてみれば貴方の方が大雑把な性格に見えますよ。いや、まだ会ったばっかだから分からないけど。
「よし、ではもう少し詳しく説明するぞ。まず、私とファナは古い友人だ。そこで、君を独り立ちさせたいというのをあいつから相談を受けてな。だから私はこの学園に入学させたのさ。つまり君は理事長特権で入学したわけだ」
「そ、そんなことしていいのですか?」
恐る恐る僕は聞いた。
幾ら理事長だからといってそんなことをしてもいいのか?
「無論良くは無い。だが君に実力があれば別だ」
「実力……ですか?」
「ああ、実力を図るにあたって私は、この学園の教員、関係者にある提案をした」
次に放たれた言葉はとんでもないことだった。
「決闘だ」
「え?」
「決闘っと言っても近日行われる≪魔剣舞踏会≫というやつだ。君にはそれに参加してもらい。そこで実力を証明してくれ」
魔剣舞踏会とは、年に一度行われる魔法と剣で一番を争う大会のことだ。マンドラ王国のみで行われるこの大会は、国中の冒険者なども参加してくる。
いうなれば、この大会で一番を取れば国内一とも言えるのだ。
大会は、魔法と剣で分かれることは無く魔術師と剣士同士でも闘う。
剣士は、魔術師よりも不利では何のか? と思う人もいるだろうが、そいうことはない。
剣士は無意識のうちに、魔力を使い身体強化をしている奴らが大半で、中には魔法を使うものだっている。
国としても、魔術師の育成には力をいれているがそれは単に剣士が弱いからというのではなく、剣術は個人でも磨けるためなのだ。
それに、冒険者ギルドが剣術の稽古を見てくれるので学校は必要がないのだそうだ。
「まあ、取り敢えずそういうわけだ。これは強制だからしっかりやってくれよ」
「わかりました」
「ああ、それと魔法テストは君は受けなくていいよ、魔剣舞踏会と被るし、それに予選が君の魔法テストみたいなものだから」
そういい、理事長はほかの仕事に取り掛かった。
そのあと、昼休みの終わりの鐘が鳴り、理事長室を後にした。
ぎゅるるるるる
そういえば、腹減ったなあ。
「うめえ、この肉わかめうどん。結構いけるわ」
「うん。美味しいわこれ」
「そうですね。私もこれ好きです」
レイノが理事長室に行ったすぐに、セラたちは昼食をとった。
ウザが、自分のを食べ終えるとレイノが頼んだうどんをみる。
「どうせ、あいつ昼休みの間に帰ってこないんだろ。なら食われないより俺が食ったほうがうどんも幸せだよな」
そう言うと、ウザは何の迷いもなくレイノのうどんを平らげた。
「あんた勝手にレイノのうどん食べたんだからお詫びにカツサンドでも買っていってあげなさいよね」
「あ、大丈夫。私本当はお弁当を持ってきていたんだ。それを上げる」
「ほほう、セラはレイノを胃袋から掴む気ですな!」
「え? ええええ!! そ、そんなんじゃないよ!」
「なるほど、あいつのことが好きだったのか。よし、俺も二人の恋を応援するぜ!」
レイノの知らない所で密かに計画が立てられていた。