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第四話

「一のE……一のEと」

「あった。ここだぞ」


 教室をウザが見つけると僕たちは教室に入った。

 

 教室の黒板には、でかでかと『指定された席で待機』と書いてあり、下には座席表が貼ってあった。


 教室でしばらく待機していると担任の先生らしい男性が入ってくると、教卓を前に立ち手に持っていた名簿帳らしきものを教卓の上に起いた。

 先生は、背はお世辞にも高くはなく、しかし顔つきは大人の男って感じの顔つきだった。


「ようこそ!! 魔法シュベッツ学園へ。私はこのクラスを担任するシーザス=クレイだ。よろしく頼む」


 元気が良くて、悩みと言ったら身長だけではないかと思うほど明るい印象を持たせた先生だ。


「早速だが、二ヶ月後に魔法テストをする」


 ニコニコ顔のシーザス先生は悪びれもなくそう言ってきた。

 教室中がザワザワと騒ぎ始めた。


「テスト内容は前の黒板に貼っておくからよく見ておくように」


 シーザス先生は、黒板にテスト内容を貼り終えると次の連絡に入った。

 そのあとも色々な連絡はあったが最近不審者が多発しているや、学園外では魔法の使用を禁止するなどの注意事項だった。


 シーザス先生の話も終わり、いよいよ解散となった。

 教科書も何も入っていないバッグを持ち教室を出た。


 上履きから外靴に履き替え校門へと向かう。


 午前中に終わったのでまだ太陽は登っており今日の残りの時間を何に使うか考えていた。


 取り敢えず、ファナさんが用意してくれた一軒家に荷物が届くまで家にいるとして、その後は何をしようか。

 買い物や、街探検、家の掃除などいろいろ考えたが街を見て回りながら決めることにする。

 前まで森の中に住んでいた僕は、三年ぶりの街並みを懐かしげに見て回った。

 まず、僕の目に止まったのはある店の野菜売り場にあるソルトオレンジだった。

 この果物は、塩辛いし酸味があり正直果物としては美味しい分類には入らないが調味料などとして使うには丁度いい果物でもあった。

 普段料理をしない人はあまり好まないが、齧った程度だが料理できる僕は、今日の晩御飯の調味料として欲しかった。


「今は、お金も持ってきていないし家に帰ったらまた来よう」


 他の店も見て周り予定だったがどうやらこの店で今日の晩ご飯はできそうなのでファナさんが用意してくれた家に帰ることにした。



 ファナさんが用意してくれた家は、学園からはそう遠くないところにある民家の一つだった。

 僕がこれから住む家は、木とレンガを巧みに使った家、決して贅沢ではなく、どちらかと言えば質素な二階建ての一軒家。

 僕がアーガス家の人間だった事を知っているからか、ファナさんは比較的庭の広い家を用意してくれている。

 これから、この家に住むと考えるとなんだかワクワクしてきた。


 家の中に入ると、あらかじめ持ってきた普段着に着替え再びあの店へと向かった。


 店ではソルトオレンジは勿論、他にも明日の朝食にパンなども買うことにした。

 買い物をして暫くすると、太陽は空の真上に来ていた。

 店を出てすぐにランチをやっているレストランがあったので、そこで昼食をとることにした。


 店で注文した料理は、鶏肉のディアブロでこれには先程買ったソルトオレンジが使ってあった。

 この料理は、鶏肉に胡椒と少なめにした塩をなじませて焼き、最後にソルトオレンジの果汁を数滴垂らしたものだった。


「うまい!」


 この数滴が有るか無いかでは全然違う。

 まず当然ながら、味が変わってくる。普通のに比べて爽やかさを出し塩と胡椒の濃いめの味を上品にさせてくれる。

 次に香り、これが一番の違いだ。このソルトオレンジは柑橘系の中でも一番いい香りをしていると言われている。

 海の潮香りと柑橘の香りがうまくマッチした香りで、堪らず唾液が出てくる。

 僕にとっては、少しの至福のひとときだった。


 鶏肉のディアブロも食べ終え、外を見ながら食後の紅茶を飲んみ終え店を後にした。

 荷物が届くにまだ時間はあるので、ぶらぶらといろんな店によりながら帰ることにした。


 雑貨屋、薬屋、創造魔法クリエイトマジックの参考のために武器屋にも寄った。

 二年前は、見様見真似で盾を作ったけど形も不格好で何より硬度が足りなかった。

 それを反省点として、剣などを観察する。

 剣の他にも弓、弩、斧、ナイフ、刀など、どれも大量生産もので一級品のものでは無いが様々な武器が揃っていた。


 店を回るのがだんだんと楽しくなってきて遂には裏通りまで来てしまった。


 しまったなぁ、そろそろ荷物が届く時間だ。

 早く表通りにでないといけないな。


 僕は、もと来た道をたどっていった。


 空は、青からすっかり紅色に変わり始めていた。

 裏通りが、より一層暗さをます。

 しばらく、道をもどっていると路地裏から何やらもめている声が聞こえてきた。

 見れば、女の子二人とチンピラのような男が三人いた。


「ちょっと、やめてください!」

「もう! やめろって言ってんのよ! さもないと私の魔法で消し炭にするわよ!」

「やめろっだてよ。俺達ただ遊ぼうって言ってるだなのによ」

「ケッケ、ほんとほんと何をやめればいいの? て言うか魔法って、君その年齢からして魔法シュベッツ学園の生徒でしょ?」


「たしか校則で学園外は魔法行使を禁止とするだったよな?」

「ああ、だから君たちは何もできない。おっと、助けなんて呼んでも来ない――――」


 男が夢中に話している最中に僕が首筋あたりに強烈な手刀をくらわせる。

 はじめに話していた男は、最後まで言い終わる前に前のめりになって倒れた。

 突然現れた僕と仲間が倒れたことに男達は一瞬ビックとなったが、瞬時に僕に対して殺意を向けてきた。


「てめえ、何のつもりだぁあ!!」

「殺される覚悟は出来ているんだろうなあ!!」


 一人がナイフをポケットから取り出し斬りにかかってきた。

 僕はそれを食材などが入った紙袋を身代わりとしてよける。

 ナイフが袋に突き刺さり紙袋は、ビリッと裂け中に入っていたものは全て地面へと落下していった。

 明日食べるはずのパンは傷が付き、シュガーオレンジは真っ二つに切られていた。

 真っ二つになったシュガーオレンジを掴みそれを男の目に向かって勢い良く汁を放つ。


「うがぁああああ。痛ってえぇえええ!! 」


 シュガーオレンジの汁を目にかけられた男は両手で目を抑え絶叫した。

 その隙に、手刀で意識を奪う。


「ちくしょうが!! 俺の魔法をくらえぇえええええ!!」


 残ったひとりは、魔法が使える奴らしく手を僕に向け聞き覚えのある魔法名を叫ん出来た。


「≪ファイヤーボール≫!!」


 二年前に放たれたものと同じものが目の前に現れた。


「その魔法はもう慣れた」


 僕はそう言うと、足元に落ちていたナイフを蹴り上げ手に取る。


「はぁああ!」


 レイノが力を込めるとナイフは青色の光を帯び始め冷気を纏い始めた。

 それを、業火に向かって振り下ろした。


 その瞬間


 業火は、二つに割れ僕を通り過ぎ、最後には白い蒸気を放ち消滅した。


「くらえ!」


 男の懐に入り腹部を回し蹴りを与えた。男は、横に吹っ飛び白目をむいて気絶つした。


 三人を撃退し終わった後、女の子を見ると唖然とした様子でこちらを見ていた。


「えっと、大丈夫? その、怪我とかは?」

「え? あ、はい。助けてくれてありがとうございます。あなたこそ大丈夫ですか? 魔法放たれましたけど……」


 そう答えたのは、男三人に向かって攻撃的な発言をしていた子だった。

 ピンクの髪のツインテールで、意志の強そうなつり目の大きな目をした美少女だった。


「うん、大丈夫だよ。さっきの魔法は僕が斬ったからね」

「あ……あのぉ、魔法って斬れないと思うんですけど……」


 もう片一方の女の子が呟く。こっちは浅緑色に少し水色がかった色の長い髪の少女だった。


 瞬間、僕は頭を金槌に打たれた様な衝撃が走った。


 目は大きく髪の色と同じで浅緑色で、小さくも鼻筋が通っている鼻、しっとりとした唇を全て収めている小顔の美少女だった。


 暫くの間僕はその子に目が離せなくなっていた。


「え、えっと……私の顔に何か?」


 頬を赤くしながら必死に絞り出して僕に聞いてきた。

 ハッとなり


「あ! そ、そうだ何言っているんだろう僕は、魔法なんて斬れるわけないのにね」


 え? そうなの? 魔法斬れないの? 知らなかった。

 それよりも、見とれてしまった。


「えっと、それじゃあ一先ずここから離れよう」

「それはそうだけどあれどうするの?」


 指さされた先には、僕が買った食材が無惨に散らばっていた。


「あ……どうしようか……」

「あ……あの、よかったら私のバック使ってください」


 可愛らしいバックを差し出された。


「えっと、流石にこんな可愛いバックに入れるのは申し訳ないかな」

「い、いえ大丈夫です。助けてくれたのでこれぐらいは……」

「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」


 顔を赤くして必死に渡す姿に流石に僕も断れなかった。というか可愛い。


 浅緑色の女の子からバックを受け取り比較的傷んでいないものをバックに入れた。


 表通りにでた所で僕はあることを思い出した。


「あぁあ!! 荷物!」

「え! にもつ?」


 いきなり叫び出して二人とも驚いたが、僕の発言に首をかしげた。


「ごめん、本当は落ち着くまでカフェでお茶をって思っていたんだけど用事を思い出したんだ。本当にごめん」

「あ、私たちは大丈夫だよ。本当に助けてくれてありがとう」

「あ、ありがとうございました」

「うん、どういたしまして。それじゃあ気を付けて帰るんだよ」


 急いで家への道を走る。やばいよ、今日僕が受け取らなかったらファナさんの所に帰ってしまう。

 着替えとかも今日届くし、それに……ファナさんが起こりそうだ……。

 幸いにも丁度荷物が届いた。


「ふう、なんとか間に合った」


 届いたのは、ベッドなどの家具全般となぜかファナさんを形どられた抱き枕が入っていた。

 何をやっているんだ。と呆れながらも何も変わらないファナさんに対して僕は安心した。

 

 ある程度荷物を出し終わった頃には、もうすっかり夜になっていた。

 僕自身今日は色々ありすぎて疲れた。

 僕は、家具などを揃えた寝室に入りベッドにダイブする。

 もちろんファナさんの抱き枕は使わない。

 つ、使わないぞ! 幾らグラマーな大人の体を忠実に再現しているからって使わないからな!



 明日から早速テスト勉強をはじめたりしないといけないなぁ。

 確かあの子達もシュベッツ学園の生徒だって言っていたな、名前も聞けなかったし、また会えないかなあ。


 あの浅緑色の子可愛かったなぁ。

 そんなことを考えていると深い眠りについた。

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