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第二話

「え、学校ですか?」


 ファナさんの下に来てからのある日の朝食の時、ファナさんは唐突にその話を持ちかけてきた。


「そう学校。知らないの?」

「いえ、知っていますけど……なぜまたいきなり?」


 僕は当然の質問をした。当たり前だ、この数年間まったくそんな話もなかったし何よりも今更だ。


「ま、正確には魔法学校なんだけど。理由はいろいろとあるけど、一番の理由は私が王都に要があるからなの。でもあなたを置いて行く事になるし、それだと私がいない時間魔法の修行ができないでしょ? だから、その間だけでも学校で魔法を学んできて欲しいのよ」


 ――王都か……。


 僕は天井を見上げ呆ける。


 ――やっぱり怒っているだろうな。


 王都の中でも一番大きい建物に住んでいる少女を思い出し、はぁと溜息を吐いた。

 溜息を吐いた僕に気づいたファナさんは首を傾げる。


「ん?」

「あ、いえ。そうですねえ。でも僕の魔法を公衆の前で使ってもいいんですか? あれは見せないほうがいいって言ったのはファナさんじゃないですか。多分入試となると魔法を発動しないといけないと思うんですけど」


 そう聞くとファナさんは右手で拳を作ってもう片方にポンっと叩くと納得したように話し始めた。


「おう、そうだったね。でも大丈夫だよ。魔法は使わなくてもいい入試があるんだから。魔力量を検査するだけでの入試があるのよ」

「へえー」


 詳しく聞くとこうだった。貧しい環境で魔法が学べなかった人達も扱っている学校では、魔力量が多いとういのは所謂いわゆるエリートになり得る原石のようなものだ。

 可能性がある子供を入学させるのは当然のことだとのことだ。

 もちろん、入学して一年経っても芽が出なかったら二年生には上がれないし留年も出来ない。つまり切られるのだ。魔法業界は厳しい世界で魔力が多いだけで入学できるだけでも有り難いことだ。


 魔力入試と言うこの入試で入学した者は、当然魔法の実力がないとういことで最下位クラスに入ることになる。

 もちろん例外はある。異常なほどの魔力を持っていれば、即最上級クラスとは言わなくとも中の上か下には必ず入れる。恐らく僕はその類の人に入るだろう。


「はぁ、分かりました」


 これ以上口論してもきっと負けるだろう。長年の経験が僕にそう訴えてくる。なら、早いうちに折れてしまったほうがいい。


「んー、なんか張り合いがないなあ」


 どうやらファナさんはお気に召さなかったようだが。

 ファナさんはしたかないと口にして、詳細を話し始めた。


「それでね、レイちゃんに行って欲しい学校っていうのは魔法シュベッツ学園ってところなのよ」

「ん? って、シュベッツ学園って超名門校じゃないですか!」


 机をバンと叩き身を乗り出して声を上げた。


「そう、だから多分アーガス家の人たちもいると思うから間違っても問題なんて起こさないようにしてね」

「起こしませんよ。僕をなんだと思っているんですか? 復讐心なんてとうの昔に捨ててきましたよ」

「へえ、じゃあなんで魔法を学ぶの? 魔法を磨く理由はなに?」


 そう聞かれると悩む。なんで……かあ。なんでだろうか。


 確かに、最初は復讐のために魔法を磨いてきた。傲慢かもしれないけど僕にはそれほどの力があると自負しているからだ。

 でも、それもこの数年でいつの間にか消えていた。なんだかそんなことに必死になるなんて馬鹿馬鹿しいし勿体無い気がしてきて。


「そうですね。魔法を極めたいからでしょうか? 単に魔法を極めたい。きっとそれだけのことです。別に理由なんてものは有りません」

「そう、それがあなたの答えね」


 ファナさんはなんでかホッとしたような顔をしてそうつぶやいた。その表情も一瞬で、直ぐに元の明るい表情になった。


「んじゃあ、準備しましょうか」


 ファナさんは朝食の最後を口に入れてそう言った。

 僕も最後の一口を口に運んだ。




 入学式当日


 僕は、ファナさんからもらった制服を身にまとい、軽く朝食を済ませる玄関で靴を履く。


「行ってらっしゃい。ちゃんとバランスのいい生活と食事をするのよ」

「それはこっちのセリフです。ちゃんとバランスのいい食事してくださいよ! 放っておくと自分の好きなものしか食べないんだから」

「はいはい、野菜もちゃんと食べますよーだ」


 僕はその言葉を聞いて家を出た。


「行ってきます!」




 ――その時の僕は知らなかった。ファナさんがその学園に行かせるわけを。そして、あの事件から六年。ここから僕という人生を歩み始める。


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