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7.お父様、愕然とする

タイトルの通りお父様視点

その日は毎年恒例の、今年五歳になる上位貴族の子供が、ここまで成長したことを祝うと同時に友達(コネ)作りをするパーティーでのことだった。

むすm……息子のリンフォレーラ・フォン・リエラノークは今年で五歳になるため参加しなければならないものの……リンは内向的で魔法と読書にしか興味が無いと言って良いほど、研究者気質な子だった。

家族には、私にも良く懐いてくれているし理知的で、上級魔法使いの妻シエラから見ても、魔法を使えない私から見ても、とんでもない魔法の才能とそれを十全に駆使する発想力があると思う。勤勉で良く図書室で本を呼んでいるし魔法の練習にも積極的で、誕生日に何が欲しいか聞いたら迷わず「魔導書」と答える彼j……彼は将来きっと良い魔法使いになるだろう。


しかし、貴族に必要な社交性には欠けていると、私はそう判断していた。

彼が甘え、笑顔で話しかけるのは家族だけだ。使用人には淡白な対応しかしないし、外で遊びたがることもない。


そんなリンに私がパーティーの始まりに「自由にしていいよ」と言ったのは、研究者気質な彼j……彼が同じ趣味の子でも見つけて友を得られればいいな、程度に考えた結果である。

シエラはリンに何度か「お姫さまと仲良くなるのよ~?」なんて言っていたが、私は無理じゃないかなと思っていた。


「じゃあ私はリリアとお話してくるわね~」


「解った、私は適当に学園の同級生と話してるよ」


何気にシエラは王妃のリリアーノ・フォン・ヴォルヴァルザルグ様と学生時代からの友人だ。二人とも魔法使いだし、何度か試合などをしているのを見たことがある。


「おー、ライルじゃねえか。久しぶりだな。どうだ、この肉食うか?」


「何をなさっておられるのですか国王陛下、一応これは貴族の洗礼とも言える由緒あるパーティーなのですが」


「堅えこと言うなよ、同じ教室、同じ机で勉強した仲じゃねえか」


この軽い調子の赤みがかった金髪銀目で長身の男はゼオンハルト・フォン・ヴォルヴァルザルグ国王陛下。同級生で、同じ机で勉強し、時に剣を振り語り合った仲だが流石にこの大きなパーティーで昔のような接し方をするわけにもいかないだろう。


「頼む、ライル、また一緒に仕事をしよう。私一人では国王陛下(このアホ)の舵取りをできない、やっぱり私たちは三人揃ってなければ駄目なんだ」


「レイフ、心の声が漏れてるよ」


国王陛下(アホ)の後ろから来た銀の長髪に眼鏡をかけた男は宰相であるレイフレード・フォン・レイノルーク侯爵。ゼオンハルトと共に、同じ机で勉強した仲間だ。


「まあ、少しくらいならいいかな? お肉、いただくよ」


「おお、流石ライル、解ってるじゃねえか」


「……私はライルの柔軟さが羨ましい……」


それから私たちは三人で雑談や世間話をしていたのだが、その時間は唐突に終わりを告げた。


「【韋駄天(スカフ)】」


あの時その小さな魔法名に反応した者は多いだろう。隣にいたゼオンもレイフも声の出所へ素早く顔を向けた。

警護に近衛騎士隊が就いていたし、少なくない貴族が武術を習っている。魔法使いだって結構いたはずだ。

パーティー中、それも王城でだ、暗殺やテロを警戒感して、その場の空気が一瞬にして張り詰めた緊張に包まれる。

韋駄天(スカフ)】は移動補助の魔法だ、この場で使うとするなら誘拐目的だろう。

……ある意味、それはその予想は当たっていた。


声がした方へ多くの成人貴族や兵士が目を向けて、そして二重の意味で愕然とした。

まず、使用者がどう見ても四、五歳の子供だったこと。

韋駄天(スカフ)】は中級魔法だ、その年で初級魔法をちゃんと使だけで「才能がある」と評価されるのに、決して五歳の女の子が使えて良いものではない。

しかもその女の子は、まるで蝶のように空を翔んでいた。

韋駄天(スカフ)】はあくまで移動補助魔法で、断じて自由に空を翔べるものではない。そもそも、生身で飛ぶのは制御が酷く難しいため、空を飛ぶ魔法自体存在しないのだ。魔導飛行船とは訳が違う。

だというのにその女の子は、ふわり、ふわりと、踊るように日傘を広げて蝶のように翔んでいた。

そう、女の子だ。

黒地に白いフリルをあしらったふりふりのモノクロなゴスロリドレスと、左側頭部に青バラのコサージュ。ドレスと逆の、白地に黒の、レースをふんだんに用いた瀟洒な日傘の女の子──


(うち)の子じゃないですかーやだー。


……なにをしてるんだリンフォレーラ・フォン・リエラノークぅううう!?

ねえ君何やってるの!? ほんと君何やってるの!?


そのまま彼は姫様の側に軟着陸すると、何かを口にして手を差し伸べる。今まで姫様とお近づきになろうと頑張っていたであろう男の子の抗議を【静寂(サイレント)】で無慈悲に遮り、手を握った姫様を抱えてそのまま【韋駄天(スカフ)】で城の屋根まで翔んで行った。


『……』


不気味な静寂の中、(シエラ)と王妃様と国王陛下(アホ)だけが笑っていた。


「ククッ……今年は面白いガキがいるな。どこの誰だ? クククッ」


「うふふ、あんな強引なエスコート、ゼオン以外で始めて見ましたわ」


「ふふふ~♪」


ああ、国王夫婦が二人ともアホで助かった。

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