表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

12.魔導師、パーティーなんてそっちのけ

今話は短いかな。

ブクマ125件もどもです

はい、色々好き放題したリンです。お父様からは注意を、お母様からは称賛をいただきました。


拉致(あんなこと)するなら先に言ってほしかったな。心臓が飛び出そうだったよ。ゼオンの服も焦げてたし」


「良くやったわね~。ママ感心したわよ~。お姫さま、降りてきた後もチラチラとリン君の方見てたし、大成功じゃない~♪」


あの後お父様とお母様と合流し、王都内にあるリエラノーク家所有の別荘に戻ってゴスロリドレスから着替えて再び王城へ。

もうすっかり日は落ちており、今度は屋外じゃなくて城内部にある大ホールがパーティー会場だ。

テーブルには昼の軽食とは違い晩餐なような料理が並んでおり……そういえばこれ晩餐会でもあった気がする。


で、例の如く国王陛下の挨拶が……あると思ったら王妃様に仕事をぶん投げたようだ。いまホール上階にいるのはリリアーノ王妃であり、ゼオンハルト国王陛下はその斜め後ろでワインか何か飲んでいる。ずいぶんフリーダムな国王様だ。


「それでは皆様、楽しんでくださいませ」


挨拶が終わると大抵の貴族は友人との雑談か、交渉か、仲の悪い貴族とのにこやかで腹黒い会話へと講じている。おお怖い怖い。

さて、コネ作りの続きでもしようかな。

ザクスとグレンは僕以外にも結構な人数の知り合いを作ってたからそっちの付き合いがあるだろうし、ルーナはさっきから壁際で【静寂(サイレンス)】を使い周囲の音をシャットアウトしながら読書に勤しんでいる。ふむ、『魔導具作成中級編』か、中々良いチョイスだ。うん、問題無いかな。もし彼女が絡まれでもしたら一応助けに入ろう。


会場へ目を向けると、ふと黄髪の男の子が目についた。身長が高く顔も整っているのだが、何故か異様にキョロキョロしていたのだ。まるで怨敵でも探しているかのように。

……ああいう人とは関わらない方が良い、無視しよう。


会場にいる魔法使いはお母様、王妃様、他大人の貴族が八人でその内上級が三人、警備の騎士に何人も。

子供だとリュミイとルーナを除き五人か。

いや、もう一人、魔力を隠している子がいる。


「少し良いかな?」


何も考えて無さそうな顔をしてアップルパイを幸せそうに食べていたその子に声をかける。


「ん? あたしー?」


何と言うか、雰囲気は子リスだ。明るい茶髪にハチミツ色の瞳は無邪気そう。

しかしその小柄な体にはルーナ並みの魔力があるというのに、巧妙に隠されていた。僕以外に気付いた人はいないんじゃないだろうか。


「うん、君。僕はリンフォレーラ・フォン・リエラノーク。気軽にリンって呼んで良いよ」


「あたしはララリナ・フォン・アルスレーヴァ。ララって読んでね♪」


人懐っこそうな笑みを浮かべているが、勘でしかないけれどどこか腹に何か隠してそうな笑みだ。

無詠唱で【静寂(サイレンス)】を発動させて、周囲に僕らの会話が漏れないように調整すると、ララの笑みがほんの一瞬だけ固まった。


「ふふふ♪」


「あはは☆」


「魔力を隠してるのは面倒避けかな?」


「? 何の事」


「僕は魔力に敏感でね。君は、うーん、風、……あと闇もかなー? 自分の周りに薄ーく魔力を纏ってるのがジャミングになってて解りづらいな。空気中の魔力とほとんど同じ位の薄さだね」


「……」


途端、ララの雰囲気が子リスからヘビのような鋭く毒でもありそうな怖いものに変わる。図星だろうか。

下手な事を言ったら刺されてもおかしくないかな。


「別に言いふらしたりするつもりはないよ? むしろ隠すの手伝おうか?」


「……リン君は何がしたいのかな?」


「世界を変えたいな」


「……え?」


「世界を変えたいんだ」


ルーナに言ったのとほとんど同じことを彼女に伝える。

魔導具はもっと強くなれる。僕がしてみせる。そのためには人手が足りないから、手伝ってほしいな、って。


「あたしは面倒なのが嫌。貴族で魔法使いなんて政略結婚を避けられないし、ぎちぎちに束縛された世界で生きるしかないなんていうのは嫌だよ。だから魔力を隠して、その内家を出て……冒険者になりたいんだ。だからリン君の話は聞けない」


「君は一つ勘違いをしている」


「え?」


「僕は世界を変える。貴族として、一国家の人間としてじゃない。だから────」


そこから先をララに伝えると、彼女は小さく吹き出して、それからけっこう大きな声で笑い始めた。

やがて笑いが収まると、ララはそれでもクスクス笑みを溢しながら。


「解ったよリン君、あたしは君に賭ける。冒険者やるより、ずっとずっと楽しそうだからね」


「それは良かった。よろしく、ララ」


「うん、よろしくね」


ああ、本当に良かった。ここまで話してやっぱり断る、何て言われたら脅迫しなければならない所だったからね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ