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突然の来訪者。

「ラルフリード様! 大変です!!」


ディーナ達が家を出て二日目。


部屋でゆっくりしていると、突然パウルが部屋に押しかけて来た。


パウルが家令となって一年。


まだまだ若く、頼りないところもあるが、家のことを全て任せるくらいには成長してきている。


これもエルダの息子で、俺の従者でもあるマルセルがつきっきりで色々教えてくれているからだろう。


最近ではそんなに慌てることもなかったのだが、急に走ってくるなんて珍しい。


「パウルか……一体何があった。」


マルセルは後ろから歩いてきているのか、姿が見えない。


それか、マルセルが来られないような何かがあったということか……。


「その、あの方が帰ってまいりました。」


あの方……ということは、あいつか!


いつからか、この家で働いている者たちは、現当主であるオディロンのことを名前で呼ばなくなっていた。


理由は簡単。


誰もが当主として認めていないからだ。


「わかった。すぐ行く。母上には子供たちと一緒に部屋から出ないよう伝えてくれ。」


パウルに言伝を頼むと、俺は急いでエントランスへ向かった。


エントランスに向かうと、オディロンと一人の女が立っている。


恐らく、あの女がレイナ・マラカイトなのだろう。


それにしても……どう見たって普通の女だ。


何ならディーナの方が百倍かわいい。


マルセルが二人を相手にしてくれているようなので、俺はその様子をバレないように見守った。


「早く、チョコレートとコーヒーを出せと言っているんだ。あとその作り方もだ! 分かったら早くしろよ?」


あいつ、あんな横柄な態度を取るようなやつだったか!?


もう少し優しい雰囲気を出していたと思ったんだが……ディーナと結婚したばかりの時と全く違う雰囲気だと感じる。


「それと、小麦粉もね! あとぉ、今年の税金も貰って来いってパパが言ってたわ。」


「俺が領地を回った時には税金は既に支払われたと言っていたぞ。どうせお前たちが俺に成り代わって税金を集め悪用したんだろう! 本当に最低なヤツらだな。」


パパって……やっぱりマラカイト家が関わっていたのか。


しかも税金を貰って来いって。


そんな大金をホイホイあげるような家がどこにあるんだよ。


オディロンはオディロンで、ディーナが悪用したようなことを言っているし。


そもそも税金は国に支払う義務があるもので、オディロンが使っていい金じゃないということを知らないのか。


こいつら本当に頭大丈夫か。


そう思っていると、マルセルが負けじと言い返す。


きっとこれは俺が来るのを待っているんだろうな。


「チョコレートとコーヒーはお出しできません。勿論、小麦粉も税金もです。」


税金については早めに国に献上した。


というのと、下手に大金を持っていると、またあのバカが帰ってきた時に持っていこうとすると思ったからだ。


「えぇ、じゃあ何ならあるのよ。」


「この家にはあなた達にお渡しできるものは一切ございません。」


キッパリと言い切るマルセルに、思わず拍手してしまう。


それにしても……レイナの腹が大きく見えるんだが。


もしかしてまた子供を妊娠しているのだろうか……。


いや、ただ太っているだけの可能性も……。


「そんなこと言っていいの!? あなた達には私の大事な子供たちをあげたじゃない! ジェラルディーナとかいう女が私の子供が欲しいと言うからあげたのに、それは酷いんじゃないの!?」


え!?


ジェラルディーナがお前たちの子供を欲しいって……?


いやいやいや、いくらなんでもそれは無いだろう。


思わずレイナの言葉を聞いて突っ込んでしまう。


マルセルも話が通じない二人と話すのが面倒になってきたのか、眉間にシワが寄ってきている。


そろそろ出ていった方が良さそうだとエントランスに向かって歩き出すと、タイミングよく扉がゆっくりと開いた。


「はぁ……では直接ジェラルディーナ様に聞いてみてはいかがでしょうか。ほら、丁度あなた達の後ろに……」


マルセルが後ろを指さすと、オディロンとレイナが後ろを振り返った。


そこには、ジェラルディーナだけでなく、エリーとフィリベールが険しい顔つきをして立っていた。


「お久しぶりですね。旦那様……と、そちらは一体どなたでしょうか? あぁ、もしかしてあなたが泥棒猫のレイナ様でございますか?」


美人の無表情ほど怖いものは無いと言うが、ジェラルディーナの無表情は母上に似てすごく怖かった。


「ジ、ジ、ジェラルディーナ!?」


「えぇ、ジェラルディーナです。一応貴方の妻のジェラルディーナ・スフェレライトですわ。まぁ、貴方を旦那だと思ったことはこの二年間、一度もございませんでしたが……。それで、我が家に一体何の用でしょうか? 愛人まで連れてきて、まさかここに住むとか言わないですよね?」


ジェラルディーナが怒っているのは誰が見ても一目瞭然だと言うのに、そんな空気をぶち壊すかのように、あの女が話し出した。


「ふぅーん。貴女がジェラルディーナ? 可愛さの欠けらも無いのね。だからオディロンに捨てられるのよ」


「あら、お褒め頂きありがとうございます。可愛さですか? それは一体なんの役に立つのでしょうか。そこにいるクソ男に好かれる可愛さなら、ない方がマシですわ。それに、そこにいるクソ男に捨てられたなんて思っておりませんし、あなた達のおかげで私、爵位をいただきましたので。むしろありがとうございます。私を捨ててくださって。」


顔色ひとつ変えず、息継ぎもせずに言い放つジェラルディーナを見た瞬間。


俺は幻か分からないが、ジェラルディーナの後ろに怖い顔をした女が吹雪の中立っているのが見えた気がした。


「さぶっ……ここはこんなに寒かったか……!?」

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