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約束の一年。

コーヒーとチョコレートができて半年が経った。


あっという間にアルナイルもカイトスも二歳となり、ステラも一歳となって、最近はハイハイして家の中を走り回るようになっていた。


アルナイルもカイトスも一歳の時にはよちよち歩きで歩いていたから、ステラもそろそろ歩けるようになるのではないかと思ってるが、ハイハイの方が楽なのか歩こうという素振りがなかなか見られない。


女の子ということもあって歌を歌ったりする方が好きなようで、言葉にならない声でいつも楽しそうに歌っている。


アルナイルとカイトスは私よりもエリーのことが好きなのか、いつも「パパあそぼ~!」と言って近寄って行ってはチャンバラごっこをしてラルフお兄様に怒られている。


ほとんど我儘を言わないいい子たちだけど、そういうところを見ると「男の子だな」と思う。


「もうオディロンが出て行ってから二年が経つのね。あっという間だわ! そろそろ一度王都に戻った方がいいかしら。国王陛下との期限もあるし……」


執務室で収支を見ていると、私の声が聞こえていたのかエリーが入ってきた。


「そうだな。ディーナの言う通り、父上が呼んでいる。急だが明日一緒に王都に戻ってほしい。」


確か一年前も急だった記憶がある。


せめてもう少し早く連絡くれればいいものを……。


「はぁ……わかったわ。明日ね……。今回はステラも増えているし、私だけで戻るわ。」


三人いると町の中をゆっくり見ることは難しそうだし、カイトスやアルナイルも最近は走り回るようになっている。


どう足掻いても一人では見切れないだろう。


「今回はその方がいいかもしれないな。そろそろ納税の時期だし、家を空けてオディロンに色々持っていかれるのも嫌だしな。今回はラルフがこのままここに残ってくれるそうだ。」


ラルフお兄様が残ってくれるのは、お母様を心配して……ということもあるんだろう。


ラルフお兄様だったらオディロンより強いだろうし、安心してお母様たちを任せられる。


「そう……。ラルフお兄様が残ってくれるということなら安心だわ! ついでに少しゆっくりしながら町のお店を見ましょう!」


アルカイオス商会も、シュエット商会も売り上げは好調で、この二年で赤字になることなく続けることができている。


特にチョコレートやコーヒーができてからは、貴族の中ですごい人気が出ていた。


ちょっと高めの値段で設定したことも功を成したのだろう。


「いいな。そうしよう! それからゆっくりこっちに戻って来るか。」


そうしようって……商会の視察なんだからついてこなくていいのに、エリーは一緒についてくる気でいるのだろうか。


あ、もしかしたら、おいしいものが食べられる……的なやつか……。


「色々お店が見たいなら、エリーはエリーで回った方がいいんじゃない? 私は視察で回るだけだから、一緒に回ったところで楽しくないわよ?」


「い、いや……そういうことじゃなくてだな……」


そういうことじゃない……?


エリーならかっこいいし、すぐ婚約者ができそうなものだけど。


「じゃあ、どういうこと? 一応私、人妻だからオディロンのことが片付くまでは噂になるようなことしたくないのよ。もし回るならフィリベール様も一緒だったらいいけど。」


変に貴族内で「浮気している」「不倫している」なんて言われてしまえば、オディロンの断罪がすべて水の泡になってしまう。


それだけは絶対阻止したい。


「それは分かっている。フィリベールと三人で回ろう。良いよな……? フィリベール!」


エリーの言葉にため息をつくフィリベール様。


フィリベール様なんか、「私を巻き込まないでくれ」と顔に書いてある。


それなのにそんなに王都の町中を回りたいなんて。


よっぽど食べたいものがあるのかもしれない。


私もフィリベール様と同じようにため息をついてから、「わかったわ!」と一言返した。


翌日。


お母様とラルフお兄様に子供たちを任せて、王都に向けて出発した。


***


王都につき、荷物をフローライト家に置くと、その足でそのまま王宮へと向かう。


今回の予定は二泊三日だ。


今日、国王陛下に謁見した後、明日は町を見て、明後日帰るという弾丸である。


以前と同じように謁見の間に行くと、すでに国王陛下や他の貴族当主、お父様が待っていた。


「待っておったぞ、ジェラルディーナ。一年ぶりか。」


「はい、お久しぶりでございます。クリストフ・カルブンクルス国王陛下。息災そうで何よりでございます。」


挨拶もそこそこに、本題に入る。


この一年のことについてだ。


スフェレライト領地の中にあった山の中に、トンネルを作ることに成功したこと。


トンネルを作ったことで、収穫率がアップし、税収も安定してきた事。


それと、少しずつだが、やせた土地が復活しつつあることについても伝える。


「トンネルを作ったことで、今まで迂回して三日かかっていたところ、半日で行き来できるようになりました。そのお陰で以前よりも頻繁に領地視察が可能になっています。」


私の言葉に、周りの貴族たちがざわざわとする。


ここに全貴族がいるというわけではないようだが、何となくここにいる人たちの理由が分かった気がする。


恐らく、スフェレライト領と同じように何かしら領地に問題がある貴族たち……だろう。


「ふむ。トンネルについてはいい報告をもらっている。そのお陰で他の地でもトンネルを作ろうという動きになりつつある。トンネルを作るうえで気を付けなければならないことはあるか?」


「そうですね。あまり大きく掘りすぎないことです。あとは土の状態でしょうか。可能でしたら、我が領地でトンネル工事を行った者たちを派遣することも可能です。派遣した上で予算などを決めていくのもありかもしれません。」


さりげなく我が領地の領民を売り出しておく。


他の地に派遣されることで収入が上がることもあるからだ。


「そうか。確かに慣れている人たちがいるのはありだな。これから派遣して、土の状態などを探る土木作業部を作ってみるのもありかもしれん。」


土木作業については、トンネル以外にも舗装工事など色々なところで役に立つ作業だ。


国王陛下の考えはとてもいいだろう。


私は国王陛下の言葉に頷いた。

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