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そろそろ堪忍袋の緒も限界です。

「おかえりなさいませ。ジェラルディーナ奥様。」


スフェレライト領に着くと、侍女や従者たちが出迎えてくれる。


乗ってきた馬を預け、邸の中に入るとパウルが近づいてきた。


「奥様。お休みを満喫されていたところを邪魔してしまって申し訳ございません。それで……後ろにいる方々は今日こちらにお泊まりになる予定でしょうか?」


王都を出る前。


準備を終えて邸を出ると、エリー、ラルフお兄様、それにフィリベール様が馬を連れて待っていた。


話を聞いたところ、お父様がラルフお兄様に一緒に行ってほしいと伝えたところ、二人もついてきたらしい。


「そうね。それぞれ別の部屋を用意してあげて頂戴。それで、手紙に書いてあった袋はどこ? 中身は確認した?」


「袋の中身は確認いたしました。その……中身については、奥様に見ていただいた方がいいかと……」


パウルの言葉に、昨年のことが脳裏をよぎる。


パウルが案内してくれると言うので、後をついていくと、一つの部屋の前で止まった。


「こちらです。」


そう言って、ゆっくり扉を開ける。


そして扉の先にいたのは――


昨年と同じように、小さな生まれたばかりの子供だった。


私が呆然と立ち尽くしていたのに気づいたラルフお兄様たちは、何があったのかと不思議そうに部屋の中へ入ってくる。


「ジェラルディーナ。何があった……って、その子どもは……?」


部屋の中に入ると、子供がスヤスヤとベッドで寝ているのだ。


しかも、カイトスやアルナイルよりも小さい赤ん坊が……。


誰だって吃驚するだろう。


私は心を落ち着けるように一度大きく深呼吸をしてから、パウルに話を聞いた。


「この子はやっぱり……? オディロンとレイナの子ども……で合っているのかしら?」


顔立ちはオディロンに似ているような気がする。


恐らく父親はオディロンで間違いないのだろうけど、カイトスやアルナイルが来たときよりも一回りくらい小さいのが少し気になる。


「何分、以前と同じように袋だけ置いて行かれたものですから……母親の名前までは聞き出せませんでした。ただ、父親はオディロン様で間違いないかと。」


やっぱり、あの男の子供か。


一度出て行って一年ぶりに帰ってきたと思ったら、盗みをするだけでなく、子供まで置いて行くとは……。


「……本っ当にあの男!!! 万死に値するわ!!!」


わなわなと手に力が入っていく。


絶対、次会ったら、あの男とその愛人をこの国から居られなくしてやる。


それどころか、繁殖活動もできなくさせてやった方がいいわね。


「去勢した方がいいわね。」


私がボソッと言った言葉が三人にも聞こえていたのか、三人とも「ヒェッ」と小さい声を上げている。


でも、あいつらはそのくらいした方がいいだろう。


だって、自分たちで子供を育てることすらできないんだから。


怒ってばかりいると子供によくないと思った私は、ゆっくりと子供に近づき抱き上げた。


「この子は……女の子ね。名前はステラなんてどうかしら。」


花言葉で、小さな強さや心が和むという意味もある。


確か、知恵という意味もあったはずだ。


アルナイルとカイトスは星の名前でもあるし、ステラにも星という意味がある。


家族で衝突した時、この子がきっと一つにまとめてくれるんじゃないだろうか――そんなことを少し思ってしまった。


こんな小さい子に全てを託すつもりはないけれど。


きっとこの子の笑顔が、色々な人を笑顔にしてくれる。


そんな気がするのだ。


私の言葉を聞いて、エリーが近づいてくる。


「カイやアルよりも一回り小さいね。でも女の子だったら納得だ。このままスクスク育ってくれるといいけど……ステラ。これからよろしくね。俺がお前のパパだからな。」


また、パパって呼ばせようとしているけど……。


なぜそんなにパパって呼ばせたいのだろうか。


もしかして、そういう趣味とか……?


いや、今は聞かないでそっとしておこう……。


エリーの言葉が聞こえたのか、うっすらと目を開けるステラ。


ステラに私たちの顔が見えているのかはわからないが、小さく微笑んだ。


「……ってちょっと待て。まさか、またお前が育てるのか!?」


すごくいい雰囲気で話を終えようとしていた矢先、ラルフお兄様がこちらに向かって近づいてくる。


どうやら、そのまま育てるとは思っていなかったらしい。


「勿論、私が育てるわ! それよりも、私はやらないといけないことがあると思うのよ。オディロンと愛人のレイラをこのまま野放しにさせておくのはよくないと思うの。だから、南の地の領地改革が進んだ暁には……」


「「「……暁には……?」」」


「あいつらをフルボッコにする時間にいたしましょう!」


このまま二人を……というよりは、オディロンを野放しにしておけば、また子供を連れて帰ってくる可能性だって出てくる。


南の地の改革までは、少なくても一年以上はかかるだろう。


その間に少しずつ追い詰めて、最後はフルボッコにする――というのが私の計画だ。


「まずは手始めに印章を使えなくして、その後はお金よ。税金を勝手に使った分は全て請求するんだから。もし返せないんだったら、その時はその時よね……そのあとは、領主の座から引きずり降ろして、最後は去勢して、この国からいなくなってもらいましょう……ふふふ……今から一年後が楽しみだわ……。」


今からあのクズ野郎をけちょんけちょんにできると思うと、楽しみでならない。


きっと今の私は、クズ以上に悪い笑顔をしているのだろうけど、全然気にならなかった。

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