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円居の歌  作者: 初雪
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蜜蜂(四)


 コルネイユはいつの間にか、エマではなく川の向こうに視線を移していた。輪郭の曖昧な稜線を眺めているようでもあり、此処からは見えない何処かを探しているようでもある。


 ――その薔薇はいたって普通の自生植物で、種から生まれ、土から養分を得て育ち、交配を繰り返し、次の冬には再び新しい花が咲く。ただ、僕の故郷は雪が多いからね。蝶も鳥も姿を消すほど寒いのに、どうやって受粉するのだろうと不思議だった。けれど、なんということはなかったよ。ただ越冬する虫が花粉を運ぶのだって。


 冬に咲く花はどれも、雪を凌ぎ冬を耐える生物があると知っている。

 どんなに小さな虫も花も、地球に在るものは円を描くように種を絶やさないし活動を止めない。海水が雨雲となって丘へ戻り、水が巡り続けるのと同じくらい、花が毎年咲くことなんて当たり前のこと。


 僕は世界のことを、数えきれないほどのピースでできたパズルだと思っている。一輪の花も一匹の昆虫も一人一人の人間も、どんなささやかな生物の命も、世界を完成させるために神が用意したピースのように見える。

 種は、そう容易くは途絶えないのだろう。神の創造したパズルが、そう簡単に欠けるわけはないから。ひとつ欠けたら、全部崩れてしまうから。

 花が滅べば蜜蜂が滅ぶし、蜜蜂が滅べば花が滅ぶ。だから地球はどちらも生かすために守ろうとするだろう。そんな世界に僕らもいる。


 薔薇も、蜜蜂も、僕も、きみも、かけがえのない地球の守られるべき一部分。命の本質はどれも同じ。地球にとって僕らは人間でも花でも構わない。主はアルファでありオメガでもあると云うだろう。命もそれと同じだ。僕の魂は、僕でありながら薔薇でもあり、蜜蜂でもある。


 そうなんだよ。僕は、蜜蜂。





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