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自分の本音を知らなかったりするからな。

作者: ヨスガ
掲載日:2025/02/05


 遺体を抱いて泣き続ける彼に、溜息しか出ない。


「馬鹿だな」


 本当に大切な物を失ってから気づくなんて。

 自らの過ちを、失くさないと気付かなかったなんて。


 慰めは、なんだろうか。


「けれどまあ、人間なんて、そんなものだろう」

「そんな物、だって?」


 彼はゆっくりと振り返る。その目は意外にも空虚ではなく、怒りに満ちているようだった。


「彼女は死んだんだぞ?よくもそんな」

「ああ死んだな。お前のせいで」

「俺のせいだと?」

「俺は何度も警告してやったろう。自らを振り返ってみろと。何も気付こうとしなかったのはお前じゃないか」


 いくさで手柄を立てるのだと、戦場に出る度に怪我を負う度に奇跡的に助かり笑顔で戻って来た。

 その不可思議さを、何度も指摘してやった。

 魔法使いの娘を嫁に貰った、魔法使いの娘の加護だと、吹聴していただろうに。

 本当に考えもしなかったのだろうか。身代わりの魔法なのだと。


「……彼女が、勝手に、した事だ」

「それが本音か。お前のその涙は彼女のためではなく失った自分が可哀想だから、か」


 ふう、とまた溜息を零した。ああ、本当に、人間は利己的だ。


「娘は、リディアはいったいお前の何が良かったんだろうな」

「少なくとも、あなたよりは俺が良かったんでしょう」


 耳が痛いな。リディアは確かに俺を嫌って家を出ていった。

 けれど。


「遺体をどうする気だ?」

「うちの一族の墓に」

「そうか」


 彼はもう振り返らなかった。親である俺に詫びを入れる事もなく。

 リディアの遺体を抱いて去って行った。


「本当に、あれの何が良かったんだ?リディア」


 胸元に忍ばせていた宝珠を取り出し問いかけた。

 小さな体のリディアはすうっと目を開けた。


「父さまより、魅力的に見えたんです」

「まあ、確かに若いし夢や希望に溢れて見えてはいたな」

「あんな風に思われてたなんて知らなかった」

「人間は本音を隠したり、自分の本音を知らなかったりするからな」


 勉強になったろうと、娘に――ホムンクルスに問いかけた。


「はい。とても勉強になりました。父さま、勝手をしてごめんなさい」

「いいさ。子どもの我が儘を聞くのも親の仕事だ」


 新しい体を作ろうなと約束してやり、宝珠を大事に懐にしまい直した。


END

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