表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/80

第78話 婚約破棄の提案・後編

 

 最初はどうなるかと思ったけれど、セイエン様やソウハ様、ライハ様とのお茶会は穏やかな雰囲気のまま終わった。次期国王の話には肝を冷やしたけれど、それだけフェイ様の能力を買っていたと考えると嬉しい。

 フェイ様がダイヤ王国に訪れて私の婚約者になった経緯は、この国に居場所がなかったからだ。

 ハク家の後ろ盾も当初はなく、身一つで彼は私の前に現れた。


(でも今は、この国がフェイ様の有能さを認めている。少なくとも第七王子たちは気づいているということよね。それってなんだか、自分の事のように嬉しいわ)


 そんな暢気なことを考えている最中、フェイ様の歩みが早くなっていることに気づいた。

 いつもは私に合わせてくれているのに、急いでいるのだろうか。ちょっと不安になる。


「フェイ様。何か急ぎの用があるなら私のことは気にしなくていいので、先に戻ってください」

「……」

「フェイ様?」

「え、あ……!」


 ようやく振り向いたフェイ様は、私の息が上がっていることに気づいたのだろう。素早く身を翻して私の元に歩み寄る。



 変な声が出てしまったのは無理もない。急にフェイ様が私を抱き上げたのだから。体が宙に浮く感覚はいつになっても慣れない。

 部屋の中ならいざ知らず、ここは廊下である。一瞬にして私は恥ずかしさに死にそうになった。


「フェイ様! わ、私、歩けますから」

「却下。……部屋に戻ってから抱きしめようと思ったが、もう限界だ。これ以上我慢していたら……」

「したら?」

「理性が焼き切れる」

「!?」


 今度はフェイ様が額を重ねた。そして軽く触れるだけのキスは、驚くほど柔らかかった。

 自分の体全身がカッと、顔が熱くなる。周囲に人がいる場所で──そう文句を言おうとしたが、彼の顔を見て声が出なかった。

 今にも泣きそうなほど瞳を潤ませて、幸せを噛みしめるような顔をしている。


「ソフィ」

「フェイ様?」

「ありがとう、私を選んでくれて」

「はい」

「ありがとう、私の隣に居てくれて」

「私こそ、ずっと私を守ろうとしてくれて……」

「ソフィ」

「信じてずっと待ってくれて、ありがとうございます」

「ああ」


 そう言うなりフェイ様は歩き出した。私を抱えているのに、速度は先ほどよりも少し速い。

 このままでは危ないので、フェイ様にしがみつく形で首に手を回す。すると満足そうに私の頬に唇が触れた。


「!」

「愛している」

(嬉しいけれど、やっぱり恥ずかしい……ん?)

「「「キャーーー!!」」」


 遠くから悲鳴めいた声が聞こえた。どうやら侍女たちが働く場所の近くにいたようだ。敵意や殺意ではなく、好奇心や興味ありげといった視線が注がれる。


「……フェイ様。もしかしてわざと見せつけるために、この道を通ったのですか?」

「さあ、どうだろうな。私は早くソフィと二人きりになりたかっただけなのだが。……嫌だったか?」

(この方は日に日に意地悪になっていく……!)


 フェイ様ばかり余裕なのが悔しくて、対抗心が芽生える。


「フェイ様。気持ちはとても嬉しいのですが恥ずかしいので、せめてキスは二人の時にしてもらえませんか?」

「ああ、わかった」


 そう言った後でフェイ様は、私の頬に唇が触れた。まったくもって人の話を聞いていない。「嘘つき」と睨んだが、悲しいほどに効果がなかった。むしろこの状況をとても楽しんでいる。


「フェイ様……!」

「本当に貴女は可愛らしい人だな」


 屈託なく笑うフェイ様に、自然と笑みが漏れる。

 いつの間にか彼の足並みは落ち着きを取り戻し、私と歩く時の歩幅で歩き出す。部屋までの間、フェイ様の温もりを堪能することにした。



「すまない」

「急ぎの案件があるのですか?」

「いいや」


 なぜか気まずそうに髪をくしゃくしゃにすると、困った顔で私を見つめる。


「早くソフィと二人きりになりたくて、気持ちが急いてしまっただけだ」

(ん? んんんんん!?)


 フェイ様の爆弾発言よりも、彼の顔がほんの少し赤いことの方が驚いた耳まで真っ赤で、いつになく色んな感情が溢れ出て、困惑しているようなご様子だ。


(これは貴重な──じゃなくて、熱でもあるのでは?)

「ソフィ?」

「そ、そのフェイ様。少し屈んでいただけませんか?」

「構わないが……?」


 六年前はもっと距離が近かったのに、あっという間に背丈も伸びて目線も変わってしまった。それは少し寂しいけれど、私のために屈んでくれる彼が大人になっても変わらずに優しい。

 こつん、と額をくっ付けた。熱くはない。

「!」

(こんな風にするのって、いつ以来だったかしら)


 フェイ様にこうやって熱を測ったのは、五年前だっただろうか。

 ダイヤ王国に留学して一年ごろ、環境が変わって安堵したからか知恵熱を出したことを思い出す。そんな些細な記憶すら今は懐かしくて愛おしい。


「うん、熱はないみたいで良かった」

「…………貴女は、本当に」

「ふ──きゃ」

お読みいただきありがとうございます⸜(●˙꒳˙●)⸝!



めちゃコミックオリジナルとしてコミカライズ連載中

現在9話まで先行配信中

コミカライズタイトル名『やり直し悪役女王は溺愛に惑う ~婚約破棄したいのに、王子の愛が止まりません~』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

平凡な令嬢ですが、旦那様は溺愛です!?~地味なんて言わせません!~アンソロジーコミック
「婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?」 漫画:鈴よひ 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

【単行本】コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

訳あり令嬢でしたが、溺愛されて今では幸せです アンソロジーコミック 7巻 (ZERO-SUMコミックス) コミック – 2024/10/31
「初めまして旦那様。約束通り離縁してください ~溺愛してくる儚げイケメン将軍の妻なんて無理です~」 漫画:九十九万里 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

攫われ姫は、拗らせ騎士の偏愛に悩む
アマゾナイトノベルズ(イラスト:孫之手ランプ様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

『バッドエンド確定したけど悪役令嬢はオネエ系魔王に愛されながら悠々自適を満喫します』
エンジェライト文庫(イラスト:史歩先生様)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ