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第68話 私の大事な居場所

「ソフィ! 怪我は、酷いことはされなかったか?」

「ええ、大丈夫だった──きゃ」


 フェイ様の部屋に入った途端、待っていたとばかりに私を抱きしめる。お気に入りのぬいぐるみを抱きしめて離さない子供のように、彼は私を離そうとしない。

 私がそっと背中に手を伸ばして、抱きしめ返すまで子供になる。このぐらいの過保護なのが、私の知っている今のフェイ様だ。


「ソフィ……っ」

「んっ」


 そしてキスの数も増えている! し、心臓が持ちそうにないのだけれど!


「リリィからプランAだと聞いた時、自分の部屋で待機しているのが、どれほど苦痛だったか……」

「フェイ様……」


 スペード夜王国に向かうまでの四日間、色々な作戦を王妃、ジェラルド兄様、フェイ様と考えたのだ。ハク様は斥候を任せているらしいので、このプランを知っているのは私を含めて四人だけだ。


 ちなみにプランAは、私以外全員待機の場合で、逆に私だけ待機で全員出撃のプランFが一番過激だ。別に国盗りをするわけでもないのに、ジェラルド兄様とフェイ様の企んだ顔は少し怖かった。


 母様も昔は旅をしていたらしく、魔法や剣術はかなりの腕だったりする。色々あって旅をするまでは、クローバー魔法国の魔法ギルドで有名な二つ名持ちだったとか。


「それで大丈夫だと言っていたが、何があった?」

「あー、ええっとですね」


 今更ながら迂闊に「大丈夫だった」と言ったことを後悔する。フェイ様はにこやかではあるが、目がすでに笑ってない。待機中、我慢に我慢を重ねていたのがわかる。


「第一王子とその母親(正妃)は、依存性の高い毒を飲ませてソフィーリア様を傀儡にしようとし、その後逆上して襲い掛かろうとしました。第二王子はフェイ様に変装して、ソフィーリア様と二人きりになろうと画策し──正体を見破られて失敗。強硬手段を取ろうとしたところ、私と妖精の護衛者(スプリガン)で対応しました。第一、第二王子は牢獄に居るかと」

「ローズ、なんで言っちゃうのよ」

「そっか。じゃあ、二人ともこっちで始末しておく」

「フェイ様!?」


 今から「ちょっと用事を済ませてくる」ぐらいのノリで、物騒なことを言い出す。しかもいい笑顔で。

 フェイ様やジェラルド兄様の場合、即座に行動を起こしかねないので、プランAを使ったのだが、悪手だったのかもしれない。


「ええっと、フェイ様。証拠も十分に揃えていますから、王位争いから除外されます。だから──」

「いや、人生に終止符が打たれていないだろう」

「!?」

「婚約者様に賛成です。やるなら早い方が良いかと」

「ローズも煽らないの!」

「承知しました。……それでは、私はお茶を用意してまいります」



 そういうとローズは表情一つ変えずに、音も立てずに部屋を退出した。ローズなら魔法でお茶の準備することも可能だったが、気を遣って二人きりにしてくれたようだ。


「ソフィ、疲れただろう。こちらに座って」


 ようやくフェイ様の腕の中から解放された私はその温もりが離れてしまうことで、寂しさを覚えてしまった。抱きしめられて一番安心していたのはフェイ様ではなく、私だった。


 疲れているだろうと労ってくれるフェイ様は硬そうなソファの上に、いくつものクッションを用意する。どれもダイヤ王国から持ってきたものだ。

 すでにお茶会で疲れ切っている私のことを気遣ってくれたのだろう。


 ふう、と吐息を漏らす。そろそろ女王の顔も限界が近い。

 口元は上手く笑えているかわからなかった。不格好な姿を見せたくなくて、私は俯いて彼の名を呟く。


「……フェイ様」

「どうした?」


 思い切って私は後ろからフェイ様に抱き着いた。

 そこからの事はあまり覚えてない。

 正妃と第一王子でのお茶会、フェイ様に成りすまして現れた第二王子の存在──いや、悪意ある人間の視線と言葉と態度に、臆病な私の心は限界だった。


「ふっ……っつ、ああ」


 体中の震えが止まらなくて、フェイ様はすぐに私を抱き上げると「大丈夫だ」と優しく背中を撫でてくれた。

 いつものようにフェイ様の膝の上で、私の震えが止まるまでずっと傍にいた。彼の胸に体を預けると心臓の鼓動が聞こえてくる。


「こういう時は、人の体温と心音があると落ち着くらしい」

「…………ぁ」


 何か話そうとしたが、喉が引きつって声が出ない。フェイ様はそんな私を見て失望せずに額に、頬にキスをする。「大丈夫」と言われているような気がして、少しずつ肩の力が抜けていく。


 気が抜けたら震えは止まって、ただ今度は涙が零れ落ちた。止めどなく溢れて、頬を伝う。


「すまない。やはりソフィを一人でお茶会に行かせるべきではなかった。次からは私も一緒でなければ参加しないと伝えよう。私が一緒で不安ならジェラルドか王妃でもいい」

「……フェイ様が、いいです」



 そう素直に呟いて、私は気づく。

 彼らが向けてきた殺意や悪意が怖かったのだ。あんな視線を、罵倒をフェイ様は常日頃から浴びていたのだろうか。


「やっぱりフェイ様とはダメです」

「え」

「…………」

「ソフィ、ソフィーリア。な、なぜ、私ではダメなのか教えてくれないか?」


 酷く傷ついた顔でフェイ様は私を見つめた。心のなしか彼の瞳が大きく揺らいでいる。

 今にも泣きそうな顔をしているフェイ様の頬に、手を当てた。


「私に毒は効かないですが、フェイ様は違うでしょう。それにフェイ様も一緒だったら、酷いことを言われてしまう。そちらの方が耐えられないわ」

「その言葉をそっくりソフィに返すぞ。ソフィが私の知らない所で泣いていたら、死にたくなるし、その場にいなかった自分に腸が煮えくり返りそうになる」


 フェイ様は私に甘い。優しさと愛に溺れてしまいそうになる。

 未来を変えるために邁進しているし、周囲との関係も良好で不安は少しずつ消えているのは事実だ。けれど時々ふとした瞬間に不安になる。自分が今立っているのは薄氷の上ではないか、と。


 得体のしれない何かが、蠢いているような感覚。

 お父様が以前話した『原初の魔女』という名前が気になるのに、調べてもその記録や伝承は見当たらなかった。いや何かに阻害されているようなそんな気がする。


 だから油断すれば十二回目と同じ結末になるかもしれない。

 だって未来は誰にも分らないのだから。

 ポロポロと涙が止まらない。

 けれど、ひとりじゃない。

 怖いから、温もりを感じて安堵するようになった。

 少し訂正。フェイ様の腕の中だと安心できる。


(ここは安全で、温かくて、大丈夫。……どうやらわたしは、フェイがいないとダメに……なってしまう……わ)


お読みいただきありがとうございます⸜(●˙꒳˙●)⸝!

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