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第44話 腹黒聖女アリサの視点3

 時は巡り、ダイヤ王国歴一五〇六年十月。

 《《十二回目の時間軸に戻る》》。


「なんで、《《なんでクリア出来ないのよ》》!? 邪悪なダイヤ王国は滅ぼして、私が女王になるはずなのに! 妖精王オーレ・ルゲイエ、見ているでしょう!? 私を女王にしてちょうだい!」


 ダイヤ王国の国境付近でアリサは喚き散らした。


(ゲームと同じようにちゃんと分岐点も守ったし、クエストだってクリアしたでしょう! 最初はヒロインで逆ハーになれるから楽しみだって思っていたのに、なによこのクソゲー。バグだらけじゃない! ゲームスタートはダイヤ王国が茨に包まれている状態からだったのに、何度やり直しても《《女王即位式の二年前からしか始まらない》》。だいたい私がダイヤ王国に入れないってどういうことよ。忍び込んでも、正式な手続きをしてもすぐに国の外に追い出されるなんて間違っているわ!)


 十二回のやり直しをしても結末は同じだった。

 そして十二回中、一度もフェイ王子を落とすことが出来なかったのだ。


(最終章でアレクシス皇太子とフェイ王子がヒロイン()を取り合う……って展開も全然ならないし! 魅了と洗脳でやっということを聞く感じなんて面白くもない。本気で私に恋をして、私を手に入れるためにアプローチかけるのを期待していたのに……)


 それでもアリサはアレクシスに一縷の望みをかけていた。

 アレクシスはダイヤ王国でソフィーリアを殺す役だ。その彼に『女王のティアラ』を持ち帰るようにしっかりと言い含めて置いた。

 この女王のティアラというのは、ゲーム設定では新たな女王となるキーアイテムで、幾度も奪おうとしたが、手にすることが出来なかったものだ。


(それにしても、アレクシス以外は本当に役に立たないわね。フェイ王子は婚約破棄をした後で後継者争いだとかで国に戻っちゃうし、エルヴィンに至ってはいつの間にかいないし……! その点、アレクシスは単純だけど私の事を聖女として扱うし、積極的にアピールしてくるから好感度高いのよね♪)


 早く戻ってこないかと外を眺めているが、空に黒々とした煙が上がるばかりだ。

 丘の上にはハート皇国の野営用のテントがずらりと並んでいた。兵士たちは慌ただしく駆けずり回っている。誰も着飾った白い長衣(ローブ)姿の聖女(アリア)を気に掛ける者はいなかった。

 みなダイヤ王国から持ち帰った食材が腐食し消えていくことに怯え、喧々囂々(けんけんがくがく)と騒いでいた。


「こんなことならダイヤ王国と、ちゃんと交渉すれば──」

「食料に困らないからって来たのに!」

「これじゃあ明日の食料も、それだけじゃない。故郷に送ってやるはずの食べ物もないじゃないか」

(はあ。これだから亜人は……。食料、食料って、口にするのはそればかりね)


 亜人たちはその場に泣き崩れた。大の男がみっともなくむせび泣く姿は見ていて見苦しく、アリサの癇に障った。怒鳴り散らそうかと思ったが、ここは聖女の顔で応えるが得策だと気づく。


「私が次の女王になるのだから、泣いてないでアレクシス殿下を迎えに行きなさい!」

「聖女様……」

「そうだ、まだ……聖女様の奇跡がある」

「そうよ。全ては妖精王の導きのままに」


 アリサの言葉を発したその刹那、状況が一変した。

 彼女の絶望を照らすかのように、金色の光が突如空の上に広がっていくではないか。次いで光のあった場所に無数の幾何学模様が浮かび上がった。今までにない展開にアリサは目を輝かせる。


「おお!」

「奇跡だ!」


 絶望する兵士たちは涙を流しながら空を仰ぎ見る。

 亜人たちの瞳に生気が戻った。崇高の念を実感し、アリサの気分も一気に高揚する。


「そう、私が待っていたのは、こういうのよ! 私こそがダイヤ王国次期女王となるの!」

「いや。《《お前では絶対にダイヤ王国の女王にはなれない》》」

「!?」

「アレクシス殿下! 殿下がお戻りになったぞ!」


 転移魔法によって血塗れのアレクシスがアリサの目の前に現れた。鎧も殆ど半壊し、額から血が流れ落ちていた。緋色の髪がより赤々と見える。皇太子が重症で帰還したことに兵士たちは動揺しつつも、何人かの兵士たちは救護班を呼ぶように指示を出す。

 混乱と焦燥と動揺が広がる中、聖女アリサは傷ついたアレクシスに詰め寄った。


「アレクシス殿下、ティアラはどこ!? 勿体ぶらないで私にくださいな!」



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