表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/56

第16話 第十王子シン・フェイの視点2

 ソフィーリアが歌う声はバルコニーまで聞こえて、泣きそうなほど胸がいっぱいになった。

 彼女ともう一度、会って話がしたい──。


『貴方が誰かはわからないけれど、誰かが誰かの代わりなんて出来ないの』


 そう彼女が言ってくれた言葉が、私の心に響いた。

 母が言っていた言葉を思い出す。優しくて明るい世界に私を引き戻してくれた。


『もし生きる理由がないのなら、私を助けてくれると嬉しいわ。それじゃあ、ちゃんと生きてね』


 目的をくれた。

 生きる意味を彼女が与えてくれた。


(もう一度、ソフィーリアに会うためにはどうすればいい?)


 城内の書庫でひたすら書物を読み漁り、後ろ盾として楊明を頼った。彼は四大名家の一角を担う出自だったので声をかけた。しかし私の予想とは裏腹に、彼は私の血縁者だと明かす。年齢も本当は十も違うのだと明かした。


「貴方様が望むのなら我が家が後ろ盾となりましょう」


 伯家の後ろ盾を得た私は王位継承権を放棄し、代わりに官吏登用の学科試験を受け合格。

 スペード夜王国は三省六部によって成り立っており、吏部(官僚の人事)、戸部(財政、地方行政)、礼部(教育、外交)、兵部(軍事)、刑部(司法と警察)、工部(公共工事)の六つに分かれており、その中で私の立ち位置は三省六部の礼部に就任した。

 目的は外交――ダイヤ王国との関係を深める為だ。


(順調だ。あとは実績を積んで――)



 ***


 その頃だろうか、奇妙な夢を見ることが増えた。

 白亜を基調とした部屋。何故か私はソフィーリアの隣では無く、対峙している。見知らぬ少女が腕に引っ付いて離れない。

 なんだ、この女?


 ソフィーリアは美しく成長して胸が躍った。妖精女王と彷彿とさせるほど気高く、見惚れる。 太陽のような金色の柔らかな髪はとても綺麗で、私を見る瞳は琥珀色で愛らしい。

 彼女に手を伸ばそうとするが、体が動かない。

 声も出ない。


「ダイヤ王国女王ソフィーリア・ラウンドルフ・フランシス。貴女との婚約およびダイヤ国とスペード夜王国との同盟を白紙に戻させてもらう」


 は? 

 私がソフィーリアと婚約していた? それを破棄?

 意味が分からなかった。なぜ愛しい人に、思い人にそんな酷いことを言わなければならないのか。

 まるで操り人形のように何もできず、私はソフィーリアと婚約解消。彼女に触れることも声をかけることもできない。

 悪夢だった。


 いや本当の悪夢はここからだった。

 ダイヤ王国が滅んだ。そして――ソフィーリアが殺された。

 毎夜見る悪夢は途中まで内容は同じだったが、死に方が少しだけ違う。

 けれどどう足掻いても彼女の死を回避することはできず、死に際にすら間に合わなかった。


(どうして……私がソフィーリアを思うことすら許されないから?)


 夢に魘されつつも、ソフィーリアへの思いを断ち切ることなど私にはできなかった。

 私が十六歳になった頃、ダイヤ王国の次期女王との政略結婚話が浮上した。父が厄介払いのつもりで追い出したのか、人質として私を送り出したのかはわからない。ただ婚約ができなければ、私に戻る場所がないという分かりやすい現実だけがあった。


(もう一度、彼女に会える。……悪夢と同じ道筋を辿ろうとしても、それを彼女の死を回避すればいいだけのこと……)


 悪夢によるお告げが何を意味していたのか。

 ソフィーリアに近づくなと警告していたのかもしれないが、もう遅い。これが妖精やなんらかの力によって私に見せているのなら今さらだ。

 手を打つのなら私がソフィーリアと出会わないようにすべきだったのだ。すでに出会って、ずっと想い続けてきた気持ちを今さら捨て去ることなどできはしないのだから。


楽しんでいただけたのなら幸いです。

下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマもありがとうございます。

感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

平凡な令嬢ですが、旦那様は溺愛です!?~地味なんて言わせません!~アンソロジーコミック
「婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?」 漫画:鈴よひ 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

【単行本】コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

訳あり令嬢でしたが、溺愛されて今では幸せです アンソロジーコミック 7巻 (ZERO-SUMコミックス) コミック – 2024/10/31
「初めまして旦那様。約束通り離縁してください ~溺愛してくる儚げイケメン将軍の妻なんて無理です~」 漫画:九十九万里 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

攫われ姫は、拗らせ騎士の偏愛に悩む
アマゾナイトノベルズ(イラスト:孫之手ランプ様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

『バッドエンド確定したけど悪役令嬢はオネエ系魔王に愛されながら悠々自適を満喫します』
エンジェライト文庫(イラスト:史歩先生様)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ