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09.調査隊集結5

***


 彼は懐から何か取り出した。長方形のタロットカードのようなものを机に並べ始める。何やら記号が書かれているが、日本では一度も見たことがない造形をしていた。


「占ってあげよう。何、未来視は使わない。どうせ君達の未来は見えないからね。サービスだ。異世界には魔法がないらしいから、この世界の占いを見せてあげようじゃないか」


 パラパラと、カードが宙に浮き始める。それは私を取り囲むように踊り始め、ドームのように頭上を覆い始めた。

 我慢の限界だった。勢いよく立ち上がると、カード達は重力に従ってパラパラと地面に落ちた。私はそれを明確な意思を持って踏みつけ、背中を向けた。


「魔法? 占い? くだらない。自分の力で未来を切り開くのが好きで探偵をやっているんです。お前らみたいな占い師は大っ嫌いだ」


引用:『00.過去の話』

***


 占い師兼『時の魔術師』カラン・ターマに罵声を浴びせ、自室に戻った。


「はあ」


 そりゃ、ため息だって出る。受け身でやれやれと被害者面をするのは嫌いだし、そういう人種を軽蔑すらしているが、流石に今回は許してほしい。


 この調査隊が発端で、世界を巻き込む戦争が起きる。普通に考えるならば、西国ダルフと純愛の魔王が戦争中なのだから、その規模が拡大するということだろう。

 調査隊の中には、西国の使者がいる。交渉人として派遣される重要人物だが、そいつが何かやらかす、というように思える。


 カラン曰く、問題なのはその調査隊に私がいることだ。戦争を止めるためだけだったら、西国の使者に来るな、と言えばそれで済む。しかし、あの占い師はそれどころか、静観を決め込むらしい。つまりは、私という変数を利用して、戦争を止める以上の成果を出そうとしているように見える。


 異世界人の未来は見えない。私というイレギュラーが混ざることで、混沌を生み出そうとしている。世界を巻き込む戦争に発展するか、世界平和が訪れるか。まるで、今後の世界情勢が調査隊に掛かっている火のようだ。

 有り体に言えば、私は利用されているのだ。


 くだらない。

 未来視魔法なんて使わなければ、カランの行動は全て不要だ。私というイレギュラーに頼る必要もない。

 そもそも、戦争とは根本的な原因が存在する。発端の事件はトリガーでしかなく、溜まっていたものが爆発しただけだ。


 魔法に頼っていないで、政治で大元を解決しろってんだ。未来視による対処なんて、暫定対応にしかならないだろう。


 まあ、私には関係のないことだ。 私が気にするべきことは、地球への帰還方法だ。異世界の戦争も、未来も私にとってはどうで良い。


 気にするべきは、魔王城の地下に眠る魔力源についてだ。下見がてら地下に行くことはできなかったが、深夜に部屋から出た収穫はあった。

 

 国連という如何にも世界を股にかける規模の組織が公認する、カランが調査隊に加わっている。

 魔力源の信憑性はかなり高そうだ。意外と、その魔力源こそが世界規模の戦争の発端かもしれないし。

 それほどの注目を浴びている魔力源ならば、地球に帰ることだって可能だろう。


 そこで、嫌な考えが脳裏をよぎった。



 異世界に帰ることがトリガーとなって戦争が引き起こされることになったら、私はどうするだろうか。ロベルト教授の専攻が魔力エネルギー保存についてであることから、魔力は基本的には有限であることがわかる。


 地球への帰還ゲートを模倣し、魔力を消費仕切ったとして。それによって純愛の魔王が怒り狂い、世界を巻き込む大戦争が起こる……、十分有り得そうな話だ。



 しかし、それでも私は地球に帰るだろう。多少後味は悪いかもしれないが、私の正義感に抵触はしない。結局、人殺しの直接的な原因でない限り、私の心は動かない。


 それが、元警察官で、今は探偵の黒羽徹という男だ。多少の違法性は許容できる。その先の諸悪の根源を滅ぼすことができるのならば。


 まだ、日本でやり残したことがたくさんある。こんな訳のわからない場所で足踏みしている場合ではないのだ。


 そんなことをつらつらと考えているうちに、眠気が脳内を侵食してきた。考えてみれば、望月茜の逃亡劇に深夜まで付き合わされて、そのまま異世界に来てしまったものだから徹夜だ。

 ここまで長く起き続けたのも珍しい。自分では気がついていなかったが、異世界という未知の環境で気を張っていたのだろう。


 そのまま、眠気に体を委ねる。瞼を瞑り、一瞬にして夢の中に落ちた。



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