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第95話◇

「まっ待ってください! それはどう言う意味で…」


「……そうだな、何も分からないままでサヨナラと言うのも不憫だ。ならお前にも分かる様に一つ一つ教えてやる、まずダンジョンマスターについてお前は根本的に勘違いをしている」


「かっ勘違いですか?」


「私の元に現れた方の話によると、お前はダンジョンマスターをたまたまダンジョンを手に入れただけの社会の底辺などと抜かしたらしいな?」


「っ!?」


 この時点でようやく黒山は偉い人と接触したのが一河、或いはその仲間であると理解した。


 黒山は必死に取り繕う為に舌を回そうとした、今までもミスやピンチを口先だけで何とかしてきたと思っている男は今回も何とかなるとまだ思い込んでいる。


「そっそれは事実では? ダンジョンマスターなど運良く優良なスキルを得ただけの…」


「馬鹿が。彼らはダンジョンを手に入れた時点で同じ国の一般人などと考えるな!」


「…………へ?」


「ダンジョンを所有するとはこの地球とは違う世界に行け、更にそのダンジョンで生活出来ればこの社会で生活する必要もなくなる、何故なら有り余る資源がダンジョンには無限にあるからだ」


「しっしかし資源だけがあっても」


「資源だけ……? 本当に理解出来ないのかお前はっ! ダンジョンにはそのダンジョンを守るモンスターがいる、つまりその気になればダンジョンマスターは別の世界からこの国家を転覆させる為の戦力すら無限に湧いているんだぞ!」


「っ!?」


「ダンジョンマスターに対してダンジョンのモンスターが敵対する事はない、そしてやり方次第では主従関係すら結べるのだ、それはこれまで僅かに現れたダンジョンマスターから得られた情報から分かっている…」


「つ、つまり…」


「ダンジョンにはダンジョンマスターの許可がない者は侵入する事すら出来ない、そして兵器の類も然り。分かるか黒山、こちらは向こうに攻撃する手立てがないのに向こうはモンスターを幾らでもこちらに送り込めるんだ。私の元に人間に化けたドラゴンが現れた様にな!」


「そっそんな馬鹿なっ!?」


「いいかっダンジョンマスターは最早国の人間ではない。一つの国を持つ独立国家の君主だと思え、本来なら自国に現れたダンジョンマスターにはそれ相応の立場のある人間が『接待』を行うのだ、安全にダンジョンから資源を得られるなどそれ程の奇跡なのだから……それをお前はっ!」


「ヒッヒィッ!」


 スマホ越しの偉い人のあまりの剣幕に黒山はスマホから顔を離した。

 それでも怒鳴り声はハッキリと聞こえる。


「いいかっ貴様はただのダンジョンセンターのいち職員の分際で下手な外交官の真似事をした、挙げ句にお互いの立場を履き違えた圧力外交までしくさって交易を結び莫大な利益…いや国益を得られる未来をぶっ潰したんだ!」


 黒山の顔が海で冷え切った時以上に青白くなっていく。


「幸い国家に対して敵対しテロ行為などはしないと約束してくれた……私を含めどれだけの国の上層部の人間があの方達に映像や間近で土下座をしたか分かるか? それでも今後、国との資源の取引は一切しないとキッパリ言われたよ。お前の親父も今回の事でお前を庇う事は絶対にない、下手をすれば一族全員がどうなるかヤツはちゃんと分かってるからな」


「ちっ父がっ!?」


「あったっり前だ! ただの馬鹿息子なら好きにやらせたが自分が誰を相手に吠えまくり、その挙げ句に噛み付いたのかいい加減理解しろ黒山っ!」


 その後も偉い人は怒りに怒る。

 世の中が混乱するという理由で世間なは知られていないがダンジョンマスターと本気で事を構えて国家がボロボロになった実例とかが実はあるからだ。


 スキル『ダンジョン』の事はネットに載っているがその詳しい情報はダンジョンマスター以外知る事はなく、さらにダンジョンモンスターとそのモンスターが所有するスキルを上手く使えば国の上層部にいる人間を狙い撃ちにしたテロ行為くらい容易いのだ。


 そんな相手に狙われるなんて冗談じゃない、故に偉い人は自身の目の前に現れたハルカとラグネシアに土下座をして事を何とかおさめてもらった。


 実際にそれが簡単に出来てしまう事を実演されてしまったのだから抵抗する気すら失せた偉い人、今後は二度と黒山の馬鹿がそちらに迷惑をかけないように今すぐ何とかします云々と言った。


 そんな偉い人にハルカが告げたのが最後のチャンスだった。

 黒山は自身の行動を反省し、パパに頼る為の電話やメールをしない様なら話はここで止めてあげましょうと言った。


 偉い人は無理だろうなと思った。

 ハルカも無理でしょうねと分かっていた、それでも一河の性格を鑑みて手心を加えた。


 そんな話があった数日後、黒山は普通にそのチャンスを棒に振った。


 偉い人は黒山に散々この数日の間に溜まったストレス、主に他の上層部にいる偉い人たちからのダンジョン開拓省への鬼電や鬼メールによって溜まったヤツがここに来て大爆発。


 しばしヒートアップした偉い人は肩で息をする所まで怒りまくった、そしてスマホの向こうでただ固まっている黒山に最後の言葉をかける。


「……黒山」


「はっ……はい」


「お前に昇進を言い渡す、今日からとあるダンジョンセンター支部の支部長だよお前は」


「………へ?」


 黒山は頭の理解が追い付かなかった。

 てっきり退職処分になるとおもっていたからだ、しかし偉い人の続く言葉に言葉を失う事になる。


「そして今すぐその支部へと転属だ、仕度を整えさっさといけ」


「すっすみませんどこにいけば?」


「ああっそれは…」


 偉い人がとある島の名前を口にした。

 しかし黒山はそんな島の名前を聞いたことがなかった。


「そっそこは何処なんですか?」


「……まっ知らないのも仕方ないな、何しろ島民すら居ない無人島だからな」


「………………………………は?」


「無人島にコンテナハウスを用意する、そこが支部だ。喜べ今日から支部長だぞ」


「そっそこにダンジョンがあると!?」


「あるわけないだろ」


「ハァッ!?」


「あの方たち曰く、お前がまた馬鹿な真似をしようとしたら今後何があっても自分たちの視界にもお前が現れないようにしてくれと言われたんだ。当然日本の何処かに住んでいる可能性を考慮すれば最早お前には誰も居ない島にでも転属してもらうしかないよな?」


「そっそんな馬鹿なっ話があるかっ! 令和のこの時代に島流しだとでも言うんですか!?」


「そうだよ、島流しだ。流刑だよ流刑」


 黒山は絶句する。

 偉い人は言葉続けた。


「生活物資は二週間に一度船で届ける、言っとくが一度島に入ったら島が沈みでもしない限り島外に出る事は許さん、スマホもこちらが用意した物だけしか認めないからな、職員が直ぐにそっちに行くから…逃げるなよ」


 スマホが切られた。


「……………」


 黒山は無言で膝から崩れ落ちた。




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