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第94話◇

「くそっクソクソクソッ!  許さねぇ許さねぇぞっ一河広樹!」


 ダンジョンセンターにある個室にて怒りに燃える男がいた、黒山大助くろかわだいすけである。


 黒山は今まさに自分のこれまでの人生とプライドをズタズタにした男、一河広樹に対して何とか復讐をしてやろうと仕事をそっちのけで考えている最中だった。


 その頭の中には『強制の契約書』による自分の立場というものはあまりない。

 自分は一切表に出ずに他人を使って一河広樹たちを何とか破滅させられないか、そんなことを考えていた。


 あるいは人質を取って『強制の契約書』を奪えば全て上手く行くとか考えている。

 正に絵に描いた餅なのだが、自分に都合の良い展開が起こってくれる事を黒山は疑わない。


 ちなみに黒山を以前守っていたボディガードたちはトイレで自分の身を一切守ることができなかった事を理由に彼らは全員クビにしている。


 今の黒山の周りには護衛の人間すらいない。

 つまり誰も回りにいなかった。

 復讐心にかられる、たった一人で。

 それが黒山である。


 そして黒山は数分ほど前から怒りの声を上げて自身のスマホを睨みつけている。

 その電話の相手とは以前一河の新居に進入した上に破壊したあの侵入者たちのリーダーである。


 そのリーダー曰く「あんな化け物だなんて何一つ聞いていない、あんなのと戦うなんていくら報酬を積まれても不可能だ。これ以上無理言うのなら…いやっ今日限りでお前との繋がりを絶たせてもらう」そう外人リーダーは言うだけ言うとスマホの電源を切った。


 黒山からしてもその外人リーダーたちのチームにもはや何の期待もしれなかったがせめて新しい戦力となる組織との橋渡しくらいはしてもらおうと思っていた。


 しかし外人リーダー曰く「同業者にこんな不良案件を申し込んだら自分たちの居場所もなくなる、と言うかあの連中に睨まれたるとか御免だな、それも却下だ」と袖にされてしまった。


 ちなみにこの外人リーダーはチームのメンバーと共に闇社会から足を洗ってどこぞの国で農家をするとこの時には既に決めていたりする。


 以前は月城アンジェにも色目を使い袖にされた過去がある男である。

 人生において色々な相手に袖にされてきた男、それが黒山大助だ。


 本人はなぜ自分がそこまで他人に相手にされないのかを自覚する勇気はない模様。


「くそっあの使えない無能たちめ、どいつもこいつも何故この私のために働けないんだ!?」


 人間という生き物は自分が心底嫌った相手のために働くなどという事は基本的にしない。


 自分がどれだけ他者に嫌悪をされているのか、意識的にしろ無意識にしろ考えないようにしている黒山だ。


 しかしそんな黒山にはまだ切り札があった。

 それはここまで組織で自分を引き上げてくれた権力者であるパパの存在だ。


 黒山のパパは偉い人間である、少なくとも国が経営するダンジョン関係の組織、ダンジョン開拓省の中においては。

 今回もパパに泣きつけばどうとでもしてくれるだろうと黒山は確信していた。


(待っていろよ一河……パパのいやっ父の権力と私の力の前に平伏させてやる!)


 邪悪な笑みを浮かべて黒山はスマホで権力を持つパパと連絡を取る。

 しかしその途中で電話が切れ、パパが出ることはなかった。


 これまでパパが自分の電話に出ないことなど一度もなかった、何故なんだ?

 そんな風に思っていると黒山のスマホに誰かから連絡があった。


 名前を確認してみるとその相手は黒山のパパと同じくらい偉い人からだった。

 さすがにパパと同じくらい偉い人の相手には黒山も猫をかぶる。


 心に荒ぶる憎しみの方のは一旦しまって冷静に対応しようと決めてから連絡を取った。


「もしもし黒山です」


「黒山……お前は今、自分の親父に連絡を取ろうとしたな?」


「…………え?」


 黒山は内心で驚愕した。

 なぜ自分の行動がバレているのかと、いやそもそもなぜそんなことを気にしているのかと。

 しかしそんな内心は隠し黒山は冷静を装い尋ねる。


「はいっ確かに先ほど父に連絡を取ろうとしましたが、それが何か?」


「……とある方の忠告があった。お前がもし自分よりも立場が上の人間に連絡を取ろうとしたら、その通話がこちらに入るように…お前のスマホをに細工をしていたのだそうだ」


(私のスマホに細工だと、そんな真似出来るわけが…)


 黒川はハルカが『瞬間移動』のスキルを持つ事を知らない、一河たちがその気になれば人のスマホをくらい簡単に入手することは出来る事を。


 偉い人はやがてやれやれといった感じで電話の向こうの偉い人は言った。


「黒山、お前はその方達が与えた最後の チャンスの棒に振ったんだ…」


 黒山にはその言葉の意味が理解できなかった。

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