第59話◇
我々の服装について説明しておく。
まず私はリーマンスーツさらに上等にした感じの服装で、ボタンが金色だった。
リーマンスーツじゃなくてフォーマル スーツだっけ? 正直その方面には疎くスーツにも興味も知識もない私にはよく分からない世界だ。
そしてハルカは白を、アヤメは黒をそれぞれ基調としたドレスを着ている。
共に金糸の刺繍が入っていて胸元や肩が露出してるドレスだ。
ちょっと目のやり場に困る私だ。
「それではお客様、我が主がお待ちしておりますのでこちらへついてきて下さい」
ミスラの言葉に従い再び彼女の後について行く。
その後に続き進みながらお城の様子を見てみる。
先ほど集まったドラゴンメイドさん達がお城を掃除していたりと色々している場面を何度か見た。
こういう妙に生活感が垣間見えるのって悪くない、それにしてもあのレッドドラゴンとやらは私たちを城に連れて来て一体何がしたいんだろうか…。
「ハルカ、あのレッドドラゴンの目的って一体何なんだ?」
「目的までは分からないわ、ただこちらに害などがある気配もないからそこまで警戒する必要はないと思うわ」
「そうそうせっかく来たんだし少しはこのお城を楽しみましょうよ!」
アヤメは本当にお気楽だね。
けどなんとなく気持ちが落ち着いたような気がする。
するとミスラから声をかけられる。
「到着しました。こちらです」
私たちの目の前には両開きの立派な門があった。
その入り口は開かれていて、足元から先には細かな刺繍がされた赤い絨毯がまっすぐに引かれている。
その絨毯の先には段差がありその一番上にはこれまた立派な玉座があった。
そこにあのレッドドラゴンが座っている。
ここっていわゆる王様の間じゃないのか?
本当にこんな作りになってる部屋があるだなんて、まるでゲームの中に入ったかのようだ。
ここでずっと玉座に座ってるのて寒くはないのだろうか?
いやここ火山な訳だし、むしろ…まあそんなことはどうでもいいだろう。
ミスラが門の端っこに立って先に進めとアイコンタクトをしてきた。
まあ行けと言うなら行きますか。
私たちは歩を進める。
赤い絨毯の上をトコトコと歩く私たち、やがてレッドドラゴンが座っている玉座の数メートル手前まで来た。
こういう場面の時って、普通だったら左右に貴族とか護衛の騎士だとかがズラリと並ぶイメージだったが、そういう人たちは1人もいない。
まあ彼女自身が本当にドラゴンであるのなら護衛なんて確かにいらなそうだしな。
ドラゴンってやっぱり強くてかっこいいイメージがある。
私たちが前に立つとレッドドラゴンが口を開く。
「ダンジョンの主よ、よく我が城に来たな…」
「まあ…いきなり連れて来れましたからね」
「そもそもワタシたちを連れてきて何がしたいわけ?」
「そろそろ話を聞かせてくれると嬉しいのだけれど…」
なんかちょっと向こうが何かしらの役に入ってる感じだったけど、こちらとしてはいい加減話をして欲しいので空気を無視してさっさと質問をした我々だ。
「む~少しは私に付き合えと言うのだ…」
唇を尖らせぶーたれる美女。
これはこれで絵になりそうな姿である。
美人って何をしても絵になるものだ。
こちらの言葉にレッドドラゴンは溜め息を一つついて答える。
「まあ我が城に連れて来た理由のついては先に言っただろう、わざわざこちらの存在を教えてやったのに全然来ないから連れて来たのだ」
「それではこの城に連れて来た事自体には理由はないと?」
「いやっそもそも何か質問の一つも本当にないのかお主たちは?」
質問はさっきからしてます、まあいいか。
正直それなら色々ある。
例えばこのレッドドラゴン、まるで長年この火山と城の主ですって感じでいるが、私からすると数日前のダンジョンの成長で出現した火山に既に主がいるってなんなの?
彼女がレッドドラゴン、つまり人間なんぞより長年生きてそうな存在である。
そんなのが本当に数日前にいきなりダンジョンの火山と共に新たに生まれたというのだろうか。
そう言えば彼女が解放だのなんだのと口にしていた、あれはどう言う意味なのだろうか。
そんな疑問があるにはあるが…。
「私たちとしては貴女達がこちらに害意とかがないのならそれ以外は特に気にする事はないですよ?」
「……まあ。その懐の広さはある意味美徳なのだろうな」
レッドドラゴンとバトルとかさすがに勘弁だしね、敵対するつもりとかがないのならそれだけで十分である。
それ以外の謎なんて誤差の範囲だろう、気にしない気にしない。