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第56話◇

「ふうっ気持ちいいね」


「本当にね~~」


「……そうね」


 アヤメはともかくハルカも一緒に温泉入っている。

 まあ一人だけ入るなというのもあまりにも酷な話だから仕方ない、私だったら絶対嫌だし。


 リュックサックからタオルを取り出して私は腰に彼女達は胸元から巻いて入浴している。


 なんか本当はタオルを巻いちゃダメとか言うらしいけどそんなん言われてもね。

 こういうのはエチチケットみたいなもんだし仕方がない我がダンジョンではタオルもオーケーにしとこう。


 入る時に思ったのだがやっぱり着替えをする時に回りの視線のを遮れる場所が必要な気がする。


 この体に巻いてるタオルとかもそうだが新しいのを常に置いておける場所も欲しい。

 やはりこの露天風呂を気軽に使える様にするにはまだまだ改善が必要だ。


 そもそも来るのにハルカの瞬間移動がないとキツいと言うのが一番大きな問題だ。


「ムーーー」

「ん?」


 入浴カピバラの1頭がこちらに近づいてきて一声鳴いてくる。

 本来のカピバラがどう鳴くのか私は知らないがこの青いカピバラはムーと鳴くようだ。


 見た目の愛らしさもあってなんかとても癒される。

 もしかしてだがこちらの露天風呂、実はこの子たちが先に使っていたりしたのかもしれない。


 なんか利用してる感じが慣れているのだ。

 だとすると後から来た私たちの方が新参者ということになるのだろうか。

 なら一言お礼を言っておこう。


「私たちにも温泉を使わせてくれてありがとう」

「ムーーー」


 すると入浴カピバラが一声鳴くと頭を近づけてきて鼻を私にちょんとしてきた、これに何の意味があるのか分からない。

 だがなんとなく心がホッコリする。


 するとそれまで私たちと距離を取っていた他の入浴カピバラ達も自由に温泉の中を泳ぎ始めた。


 思い思いに温泉の中を移動し始めハルカとアヤメに鼻をちょんちょんし始めたのだ。


 不思議なもので人があまりにも多い温泉とかに入るとなると若干ストレスを感じてしまう私だが、こういう不思議な生き物たちがもりもりいる温泉ではそんなストレスは感じない。


 まあ大抵の人間はそんなもんなんだろ。

 そんなことよりもだこうやって温泉に入っているとそれだけで幸せな気分になってくる。


「ヒロキ君、何か飲み物とか食べ物って持ってきてないの? ずっとこのカピバラちゃんたちの様子を見てたからお腹減っちゃって」


「一応リュックサックを中には食べ物とか飲み物は持ってきてるよ、食べる?」


「サンキュー!」


 アヤメは瞬間移動なしの徒歩でここまで来てるからそのくらいは気を利かせていた私だ。


 アヤメが温泉から上がりリュックサックを中をゴソゴソし始める。

 私が用意していた軽食というのはサンドイッチとおにぎりをラップで包んだ物だ。


 作ったのはハルカである、私はラップで包む係をした。

 アヤメはそれを美味しそうにパクパクと食べる。

 すると何体かの入浴カピバラがそちらの方に近づいてきた。


「何っこれが欲しいの?」


「「「ム~~ン」」」


 基本的に人の物は自分の物だという精神のアヤメだが入浴カピバラの愛らしさに仕方ないわねとサンドウィッチ の一部を彼らにあげた。


 すると他の入浴カピバラ達も集まり始めたぞ、これには流石にアヤメも困った顔をしている。


「ちょ、ちょっと! これはワタシが食べる分なんだからそんなにいっぱい集まってもあげられないんだってば~!」


 アヤメが入浴カピバラに集られている。

 そんな光景にもなんとなく心がホッコリする私だ。


「入浴カピバラってああいうのを食べるんだね、普通のカピバラって食べさせちゃ駄目な物とかあったっけ?」


「まああの子たちもダンジョンのモンスターだから大抵の物は食べられるから問題はないと思うけど」


 ハルカが問題ないというのなら大丈夫だろう。

 正直ダンジョンモンスターが生物に近い姿をしていたからといってどこまで私が知る地球の生き物と似通った部分があるのかさっぱりだ。


 そもそも精霊とか出てくる世界だし私が知る常識なんて基本的に大して通じないと思ってる。


「「「「「ム~~~ン」」」」」

「「「「「ム~~~ン」」」」」


  おやっ何やら入浴カピバラ達が一斉に鳴き始めたぞ。

 どうしたというのだろう?


「「「「「ム~~~ンム~~~ン」」」」」


 入浴カピバラ達の大合唱である。

 そこまで大きい声というわけではないのだが、一斉に鳴いているとこれから何か起きたりするんじゃないかと考えてしまう。


 そんなことを考えていたらそれが現実になってしまった。


 つい先程まで入浴カピバラ以外は私とアヤメとハルカの3人しかいなかった。

 …のだがいつの間にか4人目がいた。


 真っ赤で美しく長い髪と金色の瞳を持ち、そして出るところがかなり出ているグラマラスな美女がいたのだ。


 美女が口を開く。


「お前たちはいつになったら山頂の方に来るんだ? 遅すぎるぞ…」


 何やら不機嫌そうである。

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