第55話◇
モフリンベアーの相手をすることしばらく、とりあえず近くに来た順番から撫でたりモフモフしてあげた。
しかしいつもはある程度相手をしたらすぐに森の中に戻るのだが今日はなかなか戻らないな。
「もしかしたらこの子たちも私たちの探索についてきたいのかもしれないわね」
「そうなのかい?」
「プオン!」
俺とハルカの会話にまるで言葉が分かっているかのように一番大きなモフリンベアーが返事をした。
私としては一緒にこのダンジョンで生活してる仲間なわけだし共に探索するのも悪くはないけど…。
「それじゃあモフリンベアー、君の仲間達と一緒にこの森を探索するかい?」
「プオーーン!」
「「「「プォオオーーーッ!」」」」
モフリンベアー達の元気のいい返事を聞いて私たちは一緒に森を探索することにした。
私たちが歩き始めると小さなモフリンベアー達がゾロゾロと後をついてくる。
一番大きいあの子が私たちより少し先を歩いていた。
ハルカに確認したところ今回の探索はあのモフリンベアーのリーダーの後ろについていくのが正解だろうという話だ。
その理由については別に聞くことはない、ハルカがそういうのなら何かしら理由があるからだ。
ある程度、森を探索していくと幾つも新たな採取ポイントも見つけることができた。
やたらと派手な花だったり見た目が他のと違う植物の群生地だったりと森のロケーションだからこそと言えるような採取ポイントが多かった気がする。
中にはやたらと派手で毒々しい感じの キノコがポコポコ生えてるような場所もあった。
ハルカ曰くあれらのキノコは毒はないらしい、さすがにそれは本当かよと思ってしまった。
いつかキノコの精霊みたいなのとかも現れたり……いやっまさかね。
モフリンベアーについて行くと以前アヤメが釣りをしていた川にも連れて行かれた。
「この川は特に変化はないのかな」
「いえっ住んでいる魚の種類は確実に増えているはずよ」
そうなのか、はたしてどんな魚が住んでいるのだろう。
モフリンベアーのリーダーがズンズンと川の中に入り腕を振るった。
その度に川の魚が私の方に向かって飛んできた。
顔に当たりそうになるが、それは勘弁なので全力で躱したよ。
魚を見てみると確かに以前モフリンベアーにもらった魚とは明らかに違う種類の魚が増えてる。
なんか全身が綺麗な青色だったり銀色だったり金色っぽい色をしてる魚とかいた。
ハルカ言うにはこういう珍しい魚もダンジョンの資源として価値が高いらしい。
「プオンプォオオーン!」
モフリンベアーがこっちに近づいてきた。
ちょっだから濡れた体で抱きついて来ようとしないでくれってば。
しかしモフリンベアーはなかなか私の言うことは聞いてくれない。
また…濡れてしまった、まあ全身がずぶ濡れじゃないだけマシと考えよう。
そんな感じで一日一緒に探索をしていると満足したのかモフリンベアーたちは 再び森の中へと帰って行った。
……本当に自由だよね、あの緑色のクマさん達は。
私も濡れてしまったので今日は帰ろうと思う。
そして探索を終えた私たちだった、拠点に戻りまず思ったのは服を着替える事と…。
「ハルカ、お願いがあるんだけど。また温泉にまた入りたいから露天風呂の方まで瞬間移動で連れて行ってもらえる?」
「別に構わないわよ」
「ありがとう」
下は着替えるが少し汗をかいたし冷えてしまった。
こう言う時は温泉に限る。
とりあえず着替えやブルーシートなどを適当にリュックサックに詰め込んでいこうと思う。
あとは…お酒もいいかもしれないな、あの露天風呂の方は基本的に他の子がいるとそっちを優先してしまう可能性が高くなるので今日みたいにいる人間が少ない方が私が利用できる。
アヤメだってずっと温泉に入ってるわけじゃないんだしもうとっくに上がってるだろう。
準備を終えた私はハルカと共に瞬間移動で露天風呂の方の温泉に向かった。
そして現地に到着するとすぐにアヤメが声をかけてきた。
「ヒロキ君~」
「アヤメ、もう温泉は十分堪能したのか い?」
「いや~それがさ~」
アヤメが露天風呂の方に視線を向ける。
すると何やら別の生物が温泉に入っていることに気がついた。
それは見た目がカピバラに似ている生物だった、但し全身の毛が青いカピバラである。
「………何あれ?」
「う~ん多分害意のあるダンジョンモンスターじゃないとは思うんだけど~」
野菜の精霊もそうだったが、ダンジョンについて少しは調べたつもりの私でもちょっと分からない存在ばかりが出て来すぎな気がする。
「アレは入浴カピバラよ、温泉のあるダンジョン自体殆どないから知られていないけど。ダンジョンの温泉の質を保ってくれたりするダンジョンモンスターね」
それっどの辺りがモンスター?
まあモフリンベアーもそうだけどさ。
見た目はあのカピバラを更に可愛い感じにデフォルメされていてあざとさすら感じてしまう私だ。
すると入浴カピバラ達がこちらを見た。
数が結構いるで視線の圧をかんじるな、するとカピバラ達がス~と移動して温泉に空きを作ってくれた。
「……まさか入れと?」
「きっとそうよ、ワタシも入って良いのか分からなかったからずっと迷ってだけど。入りましょうよヒロキ君!」
「えっいやいや流石に…」
「別に亜梨沙たちもいないんだから平気よ平気ーー!」
結局アヤメに押し切られてしまい混浴する事になった。
タオルを私は下半身に、アヤメたち体に巻くことを条件に取り付ける事が出来た私を誰か褒めて欲しいもんである。