第49話◇
何と言うか、事前にスキルの説明を受けてはいたけれど、とんでもない威力だ。
工藤さんたち女性探索者の様子を見るともはや呆然とするしかないって感じだった。
我ながらちょっとやりすぎてしまったかなと思うところはある。
しかしまだやることがあるのでもうちょっとやりすぎをやらなければならない。
「工藤さん、私は残りの敵を片付けますのでもうちょっと待っててください」
「は………えっはい?」
あの工藤さんがなんか変な感じの返事しかしないとは、なんとかしてくれると予想はしていたがここまで圧倒的な感じだとはさすがの彼女も予想できなかったのだろう。
私だって予想できていなかったのでお互い様である。
というわけで私は海上の方に銃口を向ける、そこにははまだまだ海賊スケルトンシップがたくさん残っているのだ、きっちり沈めてやろう。
「……『黒刃鎖龍弾』」
えげつないあの攻撃スキルを連発で発動する。
集中し高めた魔力とやらを解放してね、実のところさっきの攻撃スキルで消費した魔力は一部でしかない。
ハルカやアヤメの指示のもと高めた魔力はまだ十分に残っているのだ。
戦闘以外では使うこともない魔力なのでここできっちり使い切ってしまおうというわけである。
と言う訳で私はスキルをバンバン連発した、合計で七発ほど海上に向かって『黒刃鎖龍弾』を放った。
海上に七つの紫色に輝く魔法陣が出現するその様子を見てさらに驚く彼女たちだ。
まあ普通あんなわけのわからないスキルを連射できるって言われたら反則だよって思いたくなる気持ちも当然だ。
そしてその魔法陣からはスケルトンたちを殲滅したあの黒い龍が現れる。
7体の黒い龍はスケルトンシップへと突撃してものの数秒で残った大艦隊を殲滅した。
もう一度見ても圧倒的である、というか無駄にオーバーキルだな。
こちらに召喚した龍もそうだがスケルトンたちの掃除を終えた龍たちも全て仕事を終えたので光となって消える。
「……はいっというわけでスケルトン退治は終了です、皆さんお疲れ様でした」
「「「「「…………………」」」」」
一応私がこの場の責任者みたいなもんらしいので話を進めておくことにする。
高見さんと女子高生探索者たちを見る、こちらも呆然としていて返事も小さな声で「はい」とか「分かりました」とかがボソボソと聞こえてくるだけだ。
まあ返事をしてくれるだけ大したもんだと思う、結構な衝撃映像だったもんね。
そして銃に変身していたハルカとアヤメが人の姿に戻る。
「……ふうっ皆さん今回のスケルトン退治への協力ありがとうございました」
なんとあのハルカが他の人に対してお礼を言うだなんて……成長したものだ。
「それじゃあ~焼肉パーティーをするから引き上げましょうか~」
そんなアヤメの言葉を聞いて我々は拠点まで引き上げることにした。
焼肉パーティーの準備はとっくにできているので後は焼くだけである。
「お肉に野菜に海鮮、どれも用意してるから好きなのを言ってくれ」
「……ほっ本当に焼き肉パーティをする準備までしてたんですね…」
「もちろんだよ、だって働いた後はお腹も空くじゃないですか」
「…………そっそうですね」
それはそうだよキミ~。
戦った後に料理の準備からするのは面倒だからね。
さゆりの言葉に私が答えていると高見さんや矢野アズサがちょっと呆れたような感じでこちらを見ていた。
「…と言うかあんな切り札があるんだったら何でもうちょっと早く使わなかったんですか?」
響が少々へそを曲げたような感じで質問してくる、まあ確かにその通りなんだけどそこはハルカやアヤメの指示に従っただけっていうのが本音だ。
しかしいい年こいたアラサーが人の指示だけで動いてばっかというのもあれなのでそれとなく適当な言葉を選んで話す。
「さすがにあれだけの数のスケルトンシップが出てくるとは私も予想外だったからね。それにあの攻撃スキルは使うのに少々時間が必要だったから少なくとも向こうの戦力がどれくらいのものか判断がつくまでは切り札は温存しておいたんだよ」
「……そうなんですか?」
「それに何故か君たちが戦う気だったこともあったし、味方を巻き込む可能性がある時にはあの攻撃は使えないんだ。みんなまとめてスケルトンみたいに細切りにしてしまうからね」
「そっそうですね、分かりました…」
こちらの説明に響は不承不承ながら頷いた、アヤメのやつが出張ってくる必要はないと言ったもののそれに反発して前に出たのが彼女たちだという話なのでそこらへんをうまいこと利用させてもらった。
要は使おうと思えば使えたけど君らが好き勝手動くからこっちは切り札が切れなかったんだよっていう感じの話にしたのだ、言ってはなんだか事実なのでそこら辺は彼女たちの今後の問題だな。
さゆりが撤退の提案を私ではなく工藤さんにしたあたりもそうだが、ああいう場合は上に指示を仰ぐというのが正解だ。
そしてあの場所での責任者が私してある以上本来は私にその一言を言うべきだったところ彼女は工藤さんに話した。
そういう細かいところでお互いの関係性というものがまだまだ確認不足だったことは事実だろう。
まあ今はこの辺りの事を細く言ってもお互い気分を害するだけなのでやはり焼肉パーティーをして祝勝会をすることにしてしまおうか。