第47話◇
スケルトン軍団がこちらの予想を超えて大量に現れる。
ハルカとアヤメが冷静に状況を分析しする。
「おそらく今残っているスケルトンシップの中にスケルトンサモナーを大量に集めた船がいるはずよ」
「そいつらが協力して大規模な召喚魔法を展開、おそらくあの船じゃなくてどっか遠くにあるスケルトンたちの本拠地から大量のスケルトン共を送り込んできてるんだと思うわ!」
成る程、どおりでね。
あの大量の魔法陣から現れるスケルトンたちの数は既に百を超えている。
いくら何でもあの船に乗ってるゴブリン全部合わせてもそんな数はいないだろう。
スケルトンを召喚するスキルって力を合わせるとそんな遠くからでもスケルトンを呼び出せるんだな、また一つ賢くなった気分だよ。
全然嬉しくないけど。
「つまりあのスケルトンシップのどれか、スケルトンサモナーを大量に集めたスケルトンシップを一河さんに破壊してもらう必要があるってわけですね?」
そう言う工藤さんに対して私は少し迷った。
いっそもう彼女たちには後ろに下がってもらって私とハルカとアヤメの3人でここに現れたスケルトンたちを一度掃除するべきではないのか?
ハルカが以前言った言葉が本当ならこの大量のスケルトンたち相手でも今の私たちなら対処ができるはず。
スケルトンシップを沈めたいのも本音だがまずは彼女たちの安全を確保する方が大事なのではないか。
そう思案していると彼女たちは行動を開始した。
「みんなっ数が増えてもスケルトンはスケルトンよ、全て倒しましょう! 『逆巻水流撃』!」
「合わせるわっ『聖光鉄槌』!」
工藤さんの攻撃スキルで放たれた水柱が進軍してくるスケルトンたちを押し流す。
さらに高見さんも攻撃スキルを発動する。
先ほどは一つだった白い光のハンマーが三つに増えてスケルトンたちをもぐらたたきみたいにぶっ叩く。
「こうなればやるしかないね、さすがに僕もスケルトンにやられるなんてごめんだし…『疾風迅矢』!」
アズサも攻撃スキルでスケルトンたちを攻撃を仕掛ける、一度に三本もの魔法の矢を放ちスケルトンたちは暴風に吹き飛ばれている。
「ふんっむしろこれまでが手応えがなかったくらいよ! 『火焔刃』!」
「どれだけ数が増えても殲滅するだけです…『雷撃晶体』」
響とさゆり、彼女たちもそれぞれの攻撃スキルでスケルトンたちの数を減らしていく。
本当に胆力ってもんがあるな、普通はビビるだろうに。
「ヒロキ君~今のうちに魔力を高めておいてね、次の攻撃スキルは少し本気のを行くから~」
「ええっ例のアレを使いましょうヒロキさん」
「……分かった、準備に入る」
なるほどアレか。
今回の戦いに備えハルカとアヤメに教えてもらった新たなスキルである、まあそのスキルを使えるのは2人であって私じゃないんだけど……。
しかし何故かそのスキルを発動するには私の魔力とやらを高める必要があるらしいのだ、そして確かにあれは少々溜めがいるからな。
ヘソの下あたりに力を入れる、そうすると全身がほんのり暖かくなるのだ。
アヤメ曰くこれが魔力を高めているのだそうだ、魔力だ何だと言われても禄に分からない私だがこれをすると確かにハルカたちの攻撃スキルの威力が上がる。
そして探索者である高見さんたちはとてもよく戦っている、しかし工藤さんと私たちは知っている。
連中の戦力がただのスケルトンだけではないということを。
故にこっからは時間との勝負ではないかと私の直感が告げているのだ。
魔力とやらを高め続ける私はスケルトン軍団がさらなる攻勢に打って出る前にでかい攻撃スキルを一発かまして連中の士気を削ぎたかった。
しかし世の中というのはいつも思った通りにはいかないものである。
スケルトンたちが出現させた魔法陣、その中からローブを着込み手に杖とかワンドを持った新たなスケルトンたちが現れる。
それを見たさゆりが眉をひそめながら言った。
「あれはスケルトンメイジですね、私のような魔法系の攻撃スキルを多用してくれる存在です。1体や2体ならともかく、数十体を超える数では見たことありませんね」
冷静な彼女が警戒するということはおよそただのスケルトンとは段違いの戦力を有するということだろう。
それは油断ならないな。
しかし現れたのはスケルトンメイジだけではなかった。
そいつらの後に続いて現れたのはやたらと立派な白銀の鎧を身に着け、大きな盾と剣や槍を手にした重装備のスケルトンである。
「あっあれはスケルトンナイト!? 正直1対1でもヤバイ相手よ、あんなのまでゾロゾロ現れるとかありなの!?」
無数のスケルトン相手に日本刀一本で無双状態だったあの響が苦虫を噛み潰したような顔で言っている。マジかそんなデタラメに戦闘力が高い彼女でも1対1でもきついようなヤツが何十体もぞろぞろと現れてきやがったのか。
「くっ…だったら僕の矢で!」
アズサが矢を放ちスキルで攻撃を仕掛けるがスケルトンメイジの放った風の魔法がその攻撃を相殺した。
「くそっやっぱりあいつからの攻撃スキルもこっちのスキルと同等の威力があるみたいだよ!」
彼女のスキルと同等の威力の魔法系スキルか、確かにそれは厄介過ぎる。
さらに敵の増援は続く。
今度もローブを着込んでいる魔術師っぽいスタイルなのだがスケルトンメイジとは若干装備が違う、魔導書的な本を持っていた。
その姿は私も知っていた、工藤さんが断言する。
「まさかスケルトンサモナーまでこっちに呼び寄せるなんてね、どれだけの数がいるのかしら……あいつらは自分たちよりもはるかに戦闘力の高いモンスターを召喚する可能性があるから気をつけて!」
そう、この前はたった1体出たスケルトンサモナーが今度は数十体と並ん出てできやがったのだ。
冗談じゃないぞ、そして更なる増援を見て高見さんが固まった……。
「そんな……スケルトンキングだなんて……」
魔法陣から最後に現れたのは人間の数倍はあるであろう巨躯の持ち主だ、マントをはおり頭には本当に王冠を乗っけたスケルトンの王様みたいなやつが現れたのだ。
しかもそれが数十体である!
「いやキングがあんな数いるの? おかしくないかな?」
「まあキングって言っても所詮は魔力で生成されてるダンジョンモンスターですからね…」
「いくらでも替えがきく代用品で数も揃えられる存在、それがダンジョンモンスターてやつなのよ。少なくともここ以外のダンジョンの大半はそんな経営方針なのよね~~」
「…………………」
何と言うか……いろんな意味で呆然とするしかない状況なのに別の意味でちょっと切ない話を聞いてしまった私だ。
いくらでも替えがきく代用品か……なんであの物凄い戦力相手に切なさを覚えてしまうんだろう。