第44話◇
海上に現れた魔法陣、まずその規模感が違った。
本来ならいくつか現れる程度の筈がそれが数えるまでもなく数十を超えている。
つまり今回のスケルトンシップはそれだけの数が現れるということだ。
結構な規模という前情報は工藤さんたちにも与えていたのだがその予想をすらおそらく超えてきたのだろう。
工藤さんを始め高見さんも女子高生の3人も驚愕した表情をしていた。
そしてスケルトンシップが現れる。
……なんじゃあれ。
現れたスケルトンシップはただの普通の帆船ではなかった。
なんか以前現れたスケルトンシップよりでかいのだ、しかも貼られた三枚の帆の一番でかいところにドクロマークが書いてある。
そしてここに船のカラーリングが全体的に黒色だ。
パッと見ほぼ間違いなく連中はただのスケルトンシップではなくパイレーツなスケルトンシップなのだと思う。
奴らは海賊スケルトンなのである、船はほぼ真正面なので確認とかはできないがきっと船体の横には砲門とかついているかも知れないな。
やがて続々と現れる海賊スケルトンシップ。
その数は魔法陣の数と同様に数十を超えている、おそらくだが三十隻以上はいるだろう。
とんでもない大艦隊だ、海上に横一列並ぶ巨大な海賊船がこちらに向かっている。
その異様な大艦隊を目の前にして一度はスケルトンシップを見たことがある工藤さんですら渇いた笑みを浮かべていた。
そして今回がモンスターの襲撃が初見な高見さんたちはと言うと……。
「いくらなんでも…あんなのどうしようと言うの?」
「かっ数が多すぎる…あんなのどうしようもないよ!」
「……今すぐダンジョンから退出することを提案します」
「ほっ本当にやるの? 本気でやるしかないってわけ?」
みんなビビってパニクってる。当たり前だな。
私だって内心はかなりビビってパニクってる、それが人間の普通の反応である。
しかし私の左右にいるハルカとアヤメは人間ではないので特に何ら気にした様子もない。
2人がそんな感じなので私もそれに合わせてなんかこうっまだ余裕はありますよ的な感じで彼女たちを様子を見ていた。
「……それじゃハルカ、アヤメ、始めるとしようか」
「はい」
「オーケー!」
2人が返事をすると同時にその姿を黒い銃へと変える。
今日突然現れたハルカとアヤメに対してこの人たちは誰なの的な感じで様子を見ていた高見さんたちはその変身にも大層驚いていた。
彼女たちの視線が私に集まる。
ここは一つ余裕ありますよ的な見栄のひとつでもはらせてもらおうかな。
「以前説明した通りです。私があの連中たちを片付けます皆さんはダンジョンに敵が侵入してきたモンスターの対処をお願いします」
というわけでハルカとアヤメの攻撃スキルである。
アヤメガンで『黒鎖弾』を撃ちまくりあの艦隊たちの動きを阻害しまくりだ。ハルカガンの『黒刃弾』でご立派な船体を切り裂いて船を海に鎮める。
海上の船と砂浜では距離は結構あるのだがそれでもハルカガンとアヤメガンのおかげで銃弾はこちらを狙った通りの場所に飛んでいく。
そして実際に三隻ほど船を沈めてみせると彼女たちのパニック度合いもだいぶ落ち着いてきた。
まあ落ち着いてきたと言うかあの大艦隊相手に本気でやり合うつもりの様子の私を見て唖然としているといった感じだろうか。
そんな呆然とした様子の顔の彼女たちに工藤さんが話しかける。
「さあみんなっもう敵は目の前に迫ってるんだから いつまでも固まってるわけにもいかないわよっ!」
工藤さんの激励に我を取り戻した彼女たちは改めてスケルトンシップの方を向き直りそれぞれの武器を握りしめる。
その目はまさにモンスターと戦う探索者のそれだ、彼女たちならもう大丈夫だろう。
四隻目をハルカのスキルで沈めたタイミングだった。
砂浜の方に以前も見た魔法陣が出現する、ほぼ間違いなくスケルトンサモナーだな。
魔法陣の数は三つ、どうやらあの海賊スケルトンシップ。あの二十数隻以上ある船の中にゴブリンサモナー がいる船が三隻はあるらしい。
「あの魔法陣からは大量のゴブリンがなだれ込んできます、可能な限り足止めをお願いします、戦闘が無理になったら後方に退避を!」
「「「「「はいっ!」」」」」
私の言葉にその場の全員が大きな声で返事をする。
「臨戦態勢! 一河さんを中心に彼がスケルトンシップを沈めるまでの時間を稼ぎます!」
「数が数よ、油断しないように!」
工藤さんと高見さんの声が聞こえた。
その後は不快な鳴き声を叫びながら魔法陣からスケルトンたちがドンドン現れる。




