第38話◇
「それにしても、ここも大分変わってきたな…」
主に私たちが生活の拠点にしてる場所を改めて見ている。
場所は砂浜と森の中間にある短い草が生えている草原のような場所だ。
周囲にあるのはヤシの木がまばらにあるくらいで 地面の凹凸もなく平坦な場所で主に我々が拠点として使っている。
私が自作したレンガのカマドと2台のワゴン車、そして3つのテントがあった、パッと見はアウトドアキャンプの現場そのものだ。
しかしアヤメのスキルによって食料の調達と保存がかなり楽になっ上に冷凍食品関係の豊富さにも助けられ毎日様々な料理を食べることができる。
現代の進歩は本当にありがたい話だ、カマドの方は自分たちで料理をする時に役に立つ。
近頃はハルカが調理担当をよくしてくれている。
料理雑誌を片手に料理をよく作ってくれるのだ、もっともカマドの場合は火力は強すぎるらしいので料理をする時はアパートのキッチンやガスコンロとかをよく使っているのだけど…。
料理をする時はアウトドア用の折りたたみ式のテーブルや椅子をワゴン車に積んでいるのでそれを出してご飯を食べてる。
ポータブル電源も一つだけ買ってそちらの方は私はスマホの充電に、ハルカとアヤメにはノートパソコンもそれぞれ一台ずつ渡してある。それぞれ好きな映画だったりアニメだったりネットサーフィンだったりを楽しんでいるようだ。
それぞれがそれぞれの好きな時間を楽しみ、たまには一緒の時間を楽しむ。
そんな緩い繋がりを維持しながらここ数日は過ごしていた。
もちろん日頃は採取だ換金だと忙しいダンジョン生活だが、日も暮れて夜の時間になればゆっくりとした時間が流れる。
ダンジョンは夜になれば少し気温が下がるがそれでも長袖でいれば寒さもほとんど感じないくらいの気温だ。
ダンジョンゲートの向こうはもう1月も後半、冬がまだまだ寒い時期だ。
もうしばらく春はお預けなのである、果たして今年は四季がまともにあるのかどうか……。
できることなら春が長めで夏は通常より短めの営業でお願いしたいものだ。
気温の変化に身体がついていけないんだよ、アラサーの今でもこれじゃもっと歳を食ったらどうなってしまうんだ?
ダンジョン育成計画の方は未来のことを考えると明るいと思う、しかし自らの身体のこととなるとまるで明るい未来が想像出来ん。
「ヒロキ君、とりあえず今日は森の方にワタシは採取しにに行ってくるわね~」
「ああっわかった、私とハルカもすぐに出発する」
「あまり1人で奥まで行ってはダメよアヤメ」
さっ今日も一日お金を稼ぐために頑張るとしますか。
森はもちろん砂浜の『ブルーシェル』も今もキッチリ採取してる、日課の砂浜散歩と合わせてちょこちょこと採取だ。
森の方は草むしりやらをしながらたまに見かけるモフリンベアーに見つかりハグを無理矢理されたりと最近は慣れ始めた日常を繰り返す。
そしてその日の夕方、空がオレンジ色になる頃には採取を切り上げて私たちはダンジョンの拠点に戻ってきた。
「いや~今日も結構採取してきたわね、あ~疲れた~」
「私はそこまで疲れていないわ…」
「ハルカは瞬間移動で行って戻って来れるんだから移動しない分疲れないでしょ~」
2人のやり取りを聞きながら私はワゴン車に積んである折りたたみ式の椅子とテーブルを用意する。
出しっぱにしてもいいのだろうが私はこういったものは毎回ごとにちゃんと片付けるタイプなのだ。
カマドにライターで火を入れて、お湯でも沸かすしようかな。
「2人とも飲み物はコーヒーとお茶どっちがいい?」
「ワタシはコーヒーでお願い出来るかしら~」
「私もコーヒーでお願いするわ」
「分かった」
カマドと言ってもそこまで大きいものではないが自信作だ。
何かと使っている、上に金網を敷いてその上にお湯を入れたケトル(要は小型のヤカンみたいなやつね)を熱してお湯を用意する。
他にもウォータージャグなど様々なキャンプ用品が身の回りに増えた。
アヤメは意味もないのにやたらとデザインが凝ったランタンとかをいくつも並べていたよ。
まあ確かに夜にランプの明かりというのは悪くない、火の扱いを間違えてテントを燃やさないかだけが心配だけど。
やがてコーヒーの準備する。
3人で椅子に腰掛けて用意したコーヒーをひと口飲む。
ハルカがひと息ついてから口を開いた。
「今晩のご飯はチャーハンとポトフにしようと思うわ、後は冷凍の野菜をボイルして温野菜でも用意しようかしら」
「いいんじゃない? どうせ小腹が空いたらカマドで適当になんか焼くんだし~」
「アヤメ、食べ過ぎると太ってしまいまうわよ?」
「ダンジョンコアである私たちは体型も体重も自由じゃない。関係ないわよ~」
「…………」
本当にそうなのだろうか、近頃アヤメのお腹周りが若干ぽっちゃりになってきたような気がする私だ。
しかし気のせいの可能性もまだあるのか?
「あっ今ヒロキ君、失礼なこと思ったでしょ!」
「ふっ…バレちゃったかな?」
「もうっヒロキ君!」
もうじき夕方から夜に変わるだろう。
ここからはまたゆっくりとした時間が流れそうだ。