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第129話◇

「本当に、本当にヤマダくんや他のゴーレムが入ったキューブも後で回収しにきてくれるんですよね!?」


「ええっ今回の問題が片付けば私も手伝いますから……」


 てっきり魚になるのが嫌なのかと思ってたらゴーレムを置いていく事の方が嫌だったみたいだ。

 そこは無事に戻れたら回収に力を貸すことを条件に先に進む事を了承してくれた東雲さんである。


 ちなみに東雲さんは茶色の派手さはないけど落ち着いた雰囲気のある鑑賞魚って感じだ、本人の性格とかなり開きがある外見をしていた。


 魚になる時に衣類は消えた、その理由は不明だがキューブを詰め込んだリュックサックは水面の壁の向こう側に置かれていた、ゴーレムアームもだ。そして響のレンタル刀も置いてきてしまったので必ず回収するつもりである。


 そして水面の壁から向こう側の道は完全に水中洞窟と言った感じだった。

 光源は洞窟の張り出した岩自体が結構明るく光っている、美しい珊瑚礁と私たちよりもずっと小さな魚が泳いでいた。


 水中洞窟は少し先に進むとどんどん狭くなっていく。これは人間の姿のままじゃ先には行けなかっただろうね、あのダンジョンギミックはこの為にあったのか。


 その通路は先程までの一本道と違いしばらく進むと幾つか分岐路が現れる。


「一河さん、どれにします?」


「右にしましょう」


「理由をきいても?」


「見分け方も何も分かりません、悩むだけ時間の無駄ですよ」


 水面で魚なのに普通に会話出来る、とても助かる仕様なのだがこの状態がいつまで続くのか、と言うか制限時間とかあったら人間に戻った瞬間圧死なので割と切羽詰まってるのだ。

 だからスピードを重視してここは進みたい。


 魚の姿になったら普通に泳げている事にも内心は戸惑いつつも先を急ぐ、すいすいと進む。

 むっ行き止まりか……先へ進める正解の道には目印とかないのかな?


 まあそんなの見つけられる訳もないので戻ったら別の道に進む。

 次の通路は進むと三つの新しい通路があった。

 どうやらさっきのは当たり……らしい、しかしまた別の通路が出て来るとか。

 いくら綺麗な景色の洞窟でもちょっと飽きてきた。


 この謎のダンジョンエリア、多分嫌がらせとかそんな悪意によって造られたエリアなんじゃないかと私は思い始めてる。

 ここにハルカとアヤメがいればこのエリアごと全てを吹き飛ばせるかも知れないのに、残念である。


 魚の姿で銃を扱えるのかは分からないけどね、こう言うのは心意気だから気にしないのだ。

 そしてまた勘で選んだ通路に進む、そこでは最後に残った所が正解で連続行き止まりと引き返すのは疲れた。


 そして次の通路の先には……五つの通路があった。


「……なんか、ムカついてきました」


「だから私はダンジョン探索者とかさっさと引退したんですよ」


「…………」


 二人の苛立ちは十分に理解出来る。

 しかしここで私まで愚痴を言い出すと先に進もうとする人が居なくなるので二人を説得して再び進み始めた。


 あっ洞窟の壁にイソギンチャク発見。


「ぐああっ! なんかピリピリしてきました、助けて一河さーーーん!」


「東雲さんダメですよ、イソギンチャクってその触手に毒があって危険なんですから」


「私たち、カクレクマノミじゃないですもんね」


 イソギンチャクに囚われた東雲さんの救出を何とか成功させる、やはりダンジョンとは油断ならない場所である。そもそも迂闊な真似は控えて欲しいですね東雲さん。


 そんなこんなで探索を続けていき、ようやく出口らしき場所に出られた。

 水中洞窟に入った時と同じような水面の壁に魔法陣が描かれていた、それにしてもモンスターは全く現れないがそれ以上の悪意に満ち満ちてる通路だった。

 マジで嫌いになりそうだった。


 二人と視線を交わし意を決して私が先行する。

 魚の姿なのでヒレの部分で魔法陣に触れる、すると予想通り今度は人間の姿に戻って空気のある水面の壁の向こう側にいた。


 あっ消えたと思っていた服が復活している、そこは素直に良かった。流石に響と東雲さんにアラサーの裸とか見せたら普通に変態として捕まってしまう。

 ここに警察は居ないけど、少なくとも私の立場が失われる事になるのでそうならずに良かった。


 何気に結構危ない橋を渡っていた事を自覚した私だ、そして一応は安全を確認する。

 大丈夫みたいだ、手で二人に合図を送ると二人も魔法陣を通ってこちらに来た、もちろん服装も復活している。


 しかし装備は全てあの通路の所に置いてある、もしもここでモンスターに襲われたら素手でも戦えそうなのって私だけなんだよな……。

 モンスターが出ない事を祈ろう。


「ふうっ魚になるだなんて初めての経験だったわ……」


「あっ東雲さんもそうだったんですね」


「普通はそうでしょ、本当に一河さんのダンジョンって他のダンジョンとは違いすぎますよ」


「なにぶん他のダンジョンに殆ど行った事がないから分からないんですよね」


 一番最初に行っただけだからね。

 さてっ楽しくお喋りしてる訳にもいかないので先に進むとしますか、そう思います視線を続く通路に向ける。


 ここから先は十メートルくらい向こうは階段になっていて上に向かうみたいだ。

 いい加減この謎のエリアから脱出したいけど、このまま出口に辿り着けるのか分からない。

 何よりこんな訳の分からんエリアとかさ、ダンジョンだったら必ず最後に……。


「…………行きますか」


「「はい」」


 予想なんてすると嫌な可能性ばっかり頭に浮かぶ、本当に私ってマイナス思考な人間なのかな。

 意を決して階段をズンズンと上がっていく。


 そして、その先には。


「侵入者発見! 直ちに包囲する!」


「「「「侵入者発見! 直ちに包囲する!」」」」


 鎧を着込んで手に槍を持ったマーメイド部隊がいましたとさ。

 水中でもない空中を泳ぐように移動して私たちを数秒と掛からずに包囲する。

 ちなみにそのマーメイド部隊の奥には豪奢な装飾をされた青いドレス姿の美しく……なによりとんでもなく強そうな気配をビンビン感じる美女が控えている。


 うん、嫌な予感的中。

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