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第125話◇

 倒されたタンザナイトロブスターの死骸はアヤメによってキューブ化された、後日解体してその素材を各自に配給する事になった。


 何でもあのタンザナイトロブスターのタンザナイトとは蒼くて美しい宝石からきた名前だそうであのモンスターの素材を加工した装飾品や装備はそれはもう見事な美しい蒼色のものになるそうだ。


 それ故に結構人気のあるモンスター素材らしく、需要と供給の法則によって加工されてない素材だけでもお高いらしい。それで今回頑張った皆にボーナスとして渡す事にしたのだ。


 何故か高見さんは難しい顔を、そして工藤さんは苦笑いをしていたのが気になったがよく分からないので取り敢えず無視する事にした。

 この世界のダンジョンでは倒されたモンスターはゲームみたいに消えたりしない、ほっておくと腐って大変な事になるモンスター素材だがそれを利用する人間の技術だってちゃんとあるのである。


 あっそれと全く頑張ってなかった東雲さんが自分のゴーレムの素材にしたいのでタンザナイトロブスターの素材を少し分けて欲しいと言ったら無言で工藤さんからアイアンクローをやられて呻いていた。やはり工藤さんは東雲さんには厳しいね。


 しかし働かざる者なんとやらだ、私もそこまで甘ちゃんではないので今後タンザナイトロブスターの素材を東雲さんが欲しいと言ったら何か働いた報酬として渡そうかと思っている。

 多分これでも工藤さんから言わせると甘過ぎますって言われるだろうな……。


 スキルを破られたさゆりは若干シュンとしていたけど久々に我がダンジョンで探索者らしい活躍が出来た響やアズサや高見さんはいい運動になりましたと笑顔だった。


 その笑顔を見て思う。やはり彼女たちは探索者でバトルも仕事の内なんだなと、今度ネシアに相談してもう少し安全面を考慮した探索可能エリアとか我がダンジョンに生み出せないかと考えている私だ。


「ふふっタンザナイトロブスターなんて早々ボスクラスで出現する事なんてありませんよ、本当に一河さんのダンジョンって面白いですね」


「ねぇありさ~本当に私は貰えないの? ね~ってば!」


「うるさいわよカナ、また頭をガッてやられたいの?」


「うひゃっ!」


 東雲さんが工藤さんにビビって逃げる、なんで私を盾にするように回り込んでくるのだろうか。なんか東雲さんに私はチョロくて普通のアラサーだと見られてる気がする、まあその通りなので否定も出来ないんだけどさ。


「まっまあまあ落ち着いて下さい、もちろん東雲さんにタンザナイトロブスターの素材をタダで渡す事はしません。これは皆で手に入れた物ですから」


 そう言う私も東雲さん同様に何にもしてないのでこの素材に関して所有権を主張するつもりはない、だって青いザリガニの甲殻とかそこまで欲しくないし。

 それと何となく私のリュックサックの中にあるバーサーカークラブの素材、同じ甲殻類なのにこの需要の落差には思うところもあるがそれを言っても仕方ないので何も言わない。


 この世にはどうしても、似たようなもんでも多くの人に求められる存在と一切求められない存在。つまりは日陰者と言う二つの存在がいるのだ、人生の大半を日陰者だった私にはその寂しさ分かるぞバーサーカークラブ。


 う~んなんとかこの黒いカニたちの素材にも日の目を当ててやりたい、黒を基調とした装備とか東雲やネシアの所のドラゴンメイドさんにお願いすれば作ってくれないだろうか、それを我がダンジョンの探索者とかの基本装備としてみるとか。


 おっと実現性が微妙な妄想はこれくらいにしてこれからの事を話そう。


「取り敢えずボスを倒した訳だけど、ここから先には続く道とかはないみたいだね?」


 私の言葉に他の皆もそれぞれの思うところを口にする、普通なら更に先へと進める通路や階段、または魔法陣が現れるのだそうだ。しかしそんなものは何処にも見当たらない。


 仕方ないので一度引き返して疲れた身体を温泉で癒しますかとか工藤さんたちが言っているが響がまだ少し不満があるみたいだ。


「も、もう少し待って下さい。確かに一見行き止まりですけど隠し通路とかある可能性はありますから」


 うんうんここで冒険が終わってしまうというのも確かに味気ないよね。何しろ最後はアヤメがトドメを奪ってしまったしさ。


「それじゃあもう少し新しい通路を探してみる?」


「一河さん……はいっ少し付き合ってくれませんか?」


「もちろんいいよ」


 すると東雲さんが「それなら私も手伝いますよ」と柄にもなく自ら申し出てくる、恐らくはタンザナイトロブスターの素材目当ての点数稼ぎだろうけどまあ響の気の済むまで付き合うつもりだし東雲さんも巻き込んでしまおうかな。


「分かりました、それなら三人で探索を続けましょう」


「ヒロキ君~私たちはダンジョン島に引き返すわよ~?」


「分かった、帰りも気をつけるんだよ」


「分かってるわ~」


 アヤメの言葉を背に私たちは探索を再開した。

 と言ってもこの開けた場所の奥は行き止まりなので本当に何もないのだけれど。


 まあ付き合うと言ったので響の好きなようにさせる、もちろん私も東雲さんも本当に隠し通路がある可能性はゼロではないので真面目に探す。こう言うのって大人が見守るだけで何もしないと子供がシラケてしまうからね。


 響は本気で探してるのでそこは空気を読んでコツコツと探す、しかしやっぱり何もないよな。

 そう思いつつふと近くを見るとそこには円形の岩があった、丸い餅をえいっとやって平たくしたみたいな真円の平らな岩である。


 最初はタンザナイトロブスターのスキルで出して切り飛ばした岩かと思ったがあの岩とは色が違う。そう言えば誰かが先へと向かう通路には魔法陣とかもあるって言ってたな。


「一河さん、その平たい岩がどうかしたんですか?」


「ああっいや、何となくこの岩が怪しいような気がしてね」


 私と響の話に東雲さんは「そんな岩が?」という顔をしている、まあアラサーの勘でしかないのでそう言われても仕方がないか。

 それでも何となく岩に乗ってみる、この丸さ、乗ったら魔法陣とか出たりしないかな~。


 すると本当に足元に魔法陣が現れた。


「…………え?」


「一河さん!」


「うそっマジで!?」


 魔法陣の真ん中に立つ私に手を伸ばす響とそんな響を見て何故か同じように手を伸ばして魔法陣に入る東雲さん。そして三人揃って魔法陣の上に立った瞬間、視界が暗転した。


 そして全く知らない場所の景色が私の視界飛び込んできた。

 …………素直に帰れば良かったかな?

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