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第119話◇

 東雲さん、この子はもしかしなくてもチート持ちってヤツなのか?

 本人はまともなのか抜けてるのか微妙なラインの人間だけど。


「つまりそのゴーレムの能力を試すと言う事は…」


「はいっこのゴーレムちゃんと模擬戦をして欲しいんですよね」


 無視して昼寝すれば良かったかも。

 しかし話を聞いてしまった以上、嫌ですと言うのも大人げない…いやっ本当にそうか?


 ゴーレムと戦えとか普通のアラサーに頼む事自体かなりおかしな話だと思う。

 そこは普通戦いなれた工藤さんとかに頼むのが通りだろうに。


「……工藤さんには頼まなかったんですか?」


「以前ありさに頼んだら私のカワイイゴーレムちゃんを破壊したんですよ、だから手加減が出来ない破壊ゴリラには頼めません」


 工藤さんに後で破壊ゴリラとか呼んでいたって話そうかな。


「あっそう言う事だからヒロキ君、今回はワタシやハルカを装備するのはなしね」


 なっなんだって!?


「アヤメちゃんを装備する?」


「ふふんこっちの話よ、いずれ近いうちに説明してあげるわ~」


 二人してる会話が全く耳に入ってこない。

 ちょっと待って欲しい、私の戦闘力ってハルカとアヤメの存在が占める割合がほぼ百パーなんだよ?


 私の担当は二人を装備して走るとかスキルを発動するのに魔力とやらを供給するくらいだけなんだからさ。


 素手の私とか普通のおじさんじゃないか。

 そんな私がゴーレムと戦えって東雲さんの頭の中もゴリラと大差ないのでないだろうか。


「さてっ! それじゃあヒロキ君、カナのゴーレムとバトルよ!」


「それじゃあ準備お願いしま~す!」


「…………」


 なんか今さら無理ですとは言えない雰囲気だ。

 ハァッ…何が悲しくて長閑な青空の下でゴーレムと喧嘩しなければならないんだ。


 せめてハルカか工藤さんがいれば東雲さんのゴーレムを木っ端微塵にして二度と模擬戦しましょうとか言う気もなくしてもらえるのに…。


 東雲さんがキューブからゴーレムを解き放つ。

 見た目は細身のブリキ人間って感じ、手足が結構長く私より高身長だ。

 しかし東雲さんの『錬金術』で作られたと言う事は、あのゴーレムはダンジョン資源で作られたゴーレムって事だ。


 生半可な頑丈さではないと思う。

 そんなのに素手でどうにかしろというのか……。

 これっ負け試合確定じゃないかな?


「これが我が錬金術で生み出された戦闘ゴーレムちゃんの一体、タナカちゃんですよ!」


 実際にいる人間の苗字とかをつけるのはよしといた方が良いと思うんだ。


 東雲さんはテンション高く何やら熱弁しているがこれから攻撃されるアラサーはどうやって逃げようかを必死になって考えている。


 アヤメが私とタナカちゃんとやらの間に立った。

 まさか……。


「それじゃあヒロキ君とタナカちゃんの模擬戦を始めます………それじゃあファイトッ!」


 そんな訳でいきなり始まった。


「いけっタナカちゃん! 一河さんにゴーレムパンチ!」


 わざわざ攻撃名を叫んで教えてくれるのはありがたいね。

 タナカちゃんは普通にこちらに向かって走り出した、最初はゆっくりとした動きだったが徐々にそのスピードを上げてきた。


 最終的なスピードは結構な物だ。

 走って私との距離を詰めると全力の右ストレートをかましてきた。


 反応は出来る。

 私は軽く後ろに飛んで一撃を躱した。

 直ぐ左側からもパンチが来る。

 こちらも躱す。


 しかしあまり引いてばかりじゃ芸がないな、遮蔽物がない草原地帯と言っても動きがおざなりになってしまっていた。


「次はこちらから行くよ!」


 まっアラサーのパンチやキックなんて何のダメージにもならないだろうけどね。

 だからこそ遠慮なくやれるってもんだ。


 接近し左脚を軸足にして前に出る。

 タナカちゃんが腕を振るってきたのでまた下がる。

 焦りは禁物、改めて間合いを確認して接近する隙を窺う。


「タナカちゃ~~んガンガン攻めて!」


 東雲さんのテキトーな指示を律義に守りタナカちゃんは勢い任せで攻めてきた。

 今度は後ろ下がらずに逆に接近しながらパンチを躱す。


 そして踏み込んだ左脚を軸にして捻りながら右脚でタナカちゃんの足首を狙いキック。


 しっかり一撃が入った。

 だがダメージは入らなかった。


「…………え?」


「うんっまあこうなるかなって思ってたわ……」


 奇遇だねアヤメ、私もこうなると分かっていたよ。

 キックした私の足の方が痛い。

 これじゃあパンチも無駄だな、攻撃するだけ痛いだけなのでその後は逃げに専念した私だ。


 結果としては完敗だった。

 やっぱり私はハルカとアヤメの助けなしでは普通の人間なんだって事がよく分かったよ。


「む~一河さんもスキルとか使ってくれると思ってたんですけど…」


「私のスキルはダンジョンゲートを出すだけだよ、アヤメやハルカの力がないと大した事は何も出来ないんだ」


「………分かりました、まあタナカちゃんがダンジョンでもちゃんと稼働するのが分かっただけでも十分な成果です」


 何とか東雲さんには納得してもらったけど、本音は私ももう少し戦えればと思ってしまった。


 砂浜でのジョギングとかは続けているけどそれじゃあ全然足りない。

 それは分かっていた事なんだけど。

 さてっそれなら次からはどうするか、もう少し考えるか。

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