第117話◇
「いいわけないです、断固反対です」
「そこを何とか~~!」
東雲さんの突然の言葉に私と工藤さんは困ってしまった。
そこでその場では言葉を濁し、採取スポットでゲットしたダンジョン鉱石をリュックサックに詰めて一度拠点へと戻ってきた。
そして我がダンジョンを経営する第三の人間、アンジェさんをハルカに呼んできてもらい事情を説明した。
そしてアンジェと東雲さんのトークバトルが始まった。
何でも工藤さん経由で二人は知り合っていたらしいので遠慮が互いにない。
「幾ら何でも今日来たばかりの人がそのままダンジョンに住まわせろなんて非常識です」
「だってここは私の理想的な場所なんですってここでなら絶対に私が理想とする最高の武器や防具を『錬金術』で…」
「理想も最高も我々には関係ありません、お引き取り下さい」
「そんな~~!」
ちなみにダンジョン経営する第一の人間は私で第二がハルカである。
……アヤメ?
あの子は除外だよ。
今も拠点のテーブルでだら~としながら携帯ゲーム機で遊んでいるしね。
近ごろアヤメのニート化が我がダンジョンの深刻な問題かもと思い始めている。
「ヤダーー! 私はここに住む! このダンジョンの子になるんだぁああーーーーーー!」
「しっ東雲さん!? 子供みたいに駄々をこねないで頂戴、皆見てますよ!?」
東雲さん……。
なんか彼女って見た目は大人の女性なんだけど、本当に何かの拍子に子供みたいな事を言い出すな。
あの駄々をこねる感じには注意しておくべきかな?
それにしても何が彼女をここまで追い立てるのか。
いくら駄々をこねてもアンジェさんは落ちないと踏んだ東雲さん、今度は私の方をターゲットにしてきた。
「一河さん!」
「なっなんですか?」
「お願いします、私にここに住む許可を下さい!」
「しかし……アンジェさんも難しいと言っていますし…」
「私をここに住まわせてくれたら一河さんたちの武器とかも『錬金術』でいくらでも作り出す事が出来ます、もちろんお金も要りません! とてもお得ですよ!?」
そんな事が言われても。
おわっ東雲さんが私に抱きついて来た!
なんか柔らかい物が当たっているがそれに反応するとこの場の全員から冷たい視線を向けられるのであくまでも平静を装う。
「お願いお願いお願いお願いお願いします~~~~!」
「……………はぁっ…分かりました、良いですよ。住んでも」
「ホントッ!? やったぁあーー!」
私から離れて全力で喜びを体現する東雲さん、両手を挙げてピョンピョンとジャンプしてる。
いつまでも抱きつかれても困るので私は折れた。
まあ一人くらいならいいやっておもったのだ。
当然アンジェさんは不満顔である。
「本当に良いんですか? 広樹さん……」
「ええっここまで頼まれたら邪険にも出来ませんよ、もちろん先程東雲さんが口にした条件が守られればです。それとこのダンジョン島に住むネシアを始めとしたモンスターにもこちらから迷惑をかける事も許可はしませんよ?」
「はいっ分かりました!」
「………まあ、東雲さんがそれを守ると言うなら私からはこれ以上は何も言いませんけど」
「すみませんアンジェさん」
なんか面倒な事になってしまった。
東雲さんはダンジョンゲートに向かう、直ぐに古民家にある様々な物をこちらに持ち込もうとしてるようだ。
う~んその辺りもあんまり物を持ち込まれるのも島の景観を損ねるかもだし、少し目を光らせる必要があるかもな。
とにもかくにも我がダンジョンに新しい住民が増えた。
なんかテンションの上下が激しい女性なので今後の人間関係がちょっと心配になった私だ。
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