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第116話◇

「これっ要らないんですかね?」


「それっピッケル? 武器一つで岩も壁も砕けるのにわざわざ荷物を増やしてそれを持ってはこないかな……」


 そうなのか、アヤメが温泉火山に採取しにいくならピッケルは絶対に必要だとこのキューブを押し付けられたんだけど無駄だったのか。


 工藤さんは剣を構え、一気に前進する。


「『衝刺突ショックスラスト』!」


 一撃が崩れた岩にめり込む。

 すると岩に亀裂が入り一気に壁が砕けちって他の岩も衝撃波で吹き飛んだ。

 工藤さんは素早く後ろに下がり崩れた岩から離れた、凄い攻撃だ。


「工藤さん、お見事です」


「お誉めにあずかり光栄です」


「はいはい三文芝居はいいから、それよりもその埋まっていたってお仲間は…」


 東雲さんの言葉にショックを受けながらも宝石の様子を見る。

 おやっどうやら無事にお仲間は脱出したみたいだ。


 多分ここが崩れる時にたまたまその近くにいた仲間が巻き込まれたんだろう。

 あの赤い宝石は助けを求めて洞窟の中を彷徨っていたのかも知れない。


 ちなみに助かった宝石は青と黄色である、どれも本当に綺麗な宙に浮く宝石たちである。

 するとその宝石たちが私の元にフヨフヨとやって来た。


 何となく手を出すと何処からともなく綺麗な鉱石が私の手の平に現れた。

 お礼って所かな?

 それなら遠慮なく受け取るよ。

 渡す物を渡したら宝石の精霊たちは洞窟の奥へと飛んでいった。


「……一河さん、そっそれって」


「ええっ多分お礼じゃないかと、見てみます?」


 東雲さんが何か気になる事でもあるのか私が手にしてる宝石をジッと見つめている。

 それを手渡すと食い入るようにしばし見つめ始めた。


「……やっぱりこれは間違いないわ」


「なにがですか?」


「この赤いのはパルオン結晶、こっちの黄色のはジーミル結晶で青いのはシアスミル結晶って言うダンジョン鉱石の結晶体です」


 鉱石の結晶体?

 正直それが何なのか分からない。

 東雲さんはそんな私の事は気にせずに話を続けた。


「つまり、さっきのは宝石じゃなくてダンジョン鉱石のモンスターだったんですよ、しかも助けたお礼として通常のダンジョン鉱石よりもずっと希少な結晶体を渡してくるなんて…」


「………」


「一河さん、ちなみにパルオン鉱石もジーミル鉱石もシアスミル鉱石もかなり高ランクのダンジョン鉱石です、それの結晶体なんて実物なんて私も見たことすらありません」


 工藤さんの補足が入る。

 成る程、それならここの採取スポットは結構な当たりって事なのか?


「それならこの採取スポットから刀を用意するのに必要なダンジョン資源が集められるかも知れませんね」


「……いいえ、むしろもう殆ど揃ったと言ってもいいわ」


「はい? しかし幾ら何でもそれだけでは……」


「……そろそろ私のスキルについて説明する時ですね」


 えっここで?

 何でこのタイミングでスキルの説明となるのかさっぱりだ。

 しかし東雲さんがそうだと言うのなら話を聞こうじゃないか。


「私のスキル…それは『錬金術アルケミック』なんですよ」


「………はあ、そうですか」


「……え? もしかして知らないんですか?」


「はい、それはどんなスキルなんですか?」


 なんか知ってないとおかしいみたいに言われたが知らない物は知らないのだ。

 ここで工藤さんが説明してくれた。


「カナの『錬金術』は材料さえあれば武器以外にも様々な物を生み出せるスキルなんですよ」


「成る程、確かに何か凄そうですね」


「ええっしかも施設や特別な道具も必要ないんですよ、例えば刀を作るにしても火も炉も準備する必要がないっといった感じですね」


「そっそれは凄いですね」


 鍛冶屋とかダンジョン資源を材料とした道具、共に本来なら相当な施設投資が必要な筈だ。

 それが元手タダとか確かにチートである。


「さてっ私のスキルの説明がてら実際に見てみますか?」


「はいっお願いします」


「それじゃあ一河さんに預けてたあの折れた刀を出してくれませんか?」


 私は返事をしてリュックサックからキューブを一つ取り出す。

 これは響の刀をキューブ化させたものだ、東雲さんが持っていきたいと言うのでリュックサックの中に入れていた。


 キューブから元の折れた刀に戻す。

 それを東雲さんに渡した。


「それじゃあいきますよ?」


 東雲さんがそう言うと宙に二つの魔法陣が出現した。

 その魔法陣は東雲さんの胸の高さの位置でブゥンと浮いている。


 その二つの魔法陣にそれぞれ折れた刀と宝石……じゃなくて鉱石の精霊からもらった結晶体の一つ、確かパルオン鉱石ってのを上に乗せた。


 乗せられた物はそれぞれ魔法陣の上に浮いている。

 なんか凄い、これから何が起こるのか否が応でも期待してしまう。


「さてっこれで『錬金術』の準備は完了です、それではいきますよ~」


 東雲さんが両手を魔法陣に向ける。

 すると魔法陣の上に浮いていた刀と結晶体が光となって魔法陣に吸い込まれた。


 それぞれの物を吸収した魔法陣が重なり一つとなる。

 すると新たな刀が現れた。

 折れていた刀が復活…いや見た目が微妙に違うのでおニューな刀へと新生したというのか?


「ほっ本当に凄いスキルですね…まさか刀を直すだけでなく」


「そうです、さっきのパルオン結晶と融合させてより強い武器にしました」


 東雲さんが大きな胸を張るようにムフンとしている。

 確かにこれは凄いスキルだ。

 まさか一瞬で新たな武器に出来るなんて、これは鍛冶屋とかの仕事を奪ってしまうレベルのスキルだ。


「それではこれで響の武器が完成したんですか?」


「まさか~あの刀を超えるにはもう何度か他の鉱石や結晶体と融合させる必要がありますよ……まあそれでも並ぶ物なんて本当に出来るのかってレベルの話ですけどね…」


「それでは他の結晶体もここで?」


「いえっ一度融合させたらそのダンジョン鉱石の魔力が武器に馴染むまで数日は置く事になりますね」


 成る程、そこはゲームか何かみたいに一気に強化する事は出来ないらしい。


「それではあの採取スポットの鉱石を…」


 …って私がいう前に既に東雲さんは採取スポットから出土した色とりどりの鉱石を物色していた。


「……カナ、盗んだりしちゃ駄目よ」


「し、しし失礼な! 誰がそんな事するか!」


 ごめん、実は私もその辺は一言注意しとくべきかもと悩んでしまったんだ。


「うへ~これもこれも全部、希少で有用なダンジョン鉱石ばっかり…この温泉火山って宝の山なんじゃない?」


 どうやら東雲さん的にかなり高評価な温泉火山。

 私としても鼻高々な気分になる。

 ダンジョンを褒められると嬉しい。


 東雲さんがスッと立ち上がる。

 そして私の方を向いて言った。


「………私、決めました」


「えっ何をですか?」


「一河さん、私をこのダンジョンに住まわせて下さい!」


「「…………………は?」」


 私と工藤さんの声がハモった。


来週から日曜日のみの投稿となります。

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