第114話◇
さてっネシアに逃げられて荒ぶるアヤメは無視して固まる東雲さんを再起動させ温泉火山に向かうとしますか。
「あの~本当にこの三人だけで大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ、こっちのダンジョン島のモンスターで私たちを襲う存在はいませんから」
「カナは心配性ね、大丈夫だからついてきて頂戴」
そして十数分後、私と東雲さんと工藤さんの三人で温泉火山を探索している。
火山まではハルカの『瞬間移動』のお世話になり山に入ってからは徒歩で移動中の私たちだ。
キューブ化させた食料から飲み物から道具からをリュックサックに詰めて私が運び、工藤さんが回りの様子見をしながら探索中だ。
東雲さんは探索者としてはずぶの素人らしいので私と共に工藤さんにフォローしてもらいながらの探索である。
歩きにくい山道、しかし素人探索者は平然とスニーカー装備で来るのだ。
私と東雲さんである。
お陰でもうそろそろ足への負担が来ている。
東雲さんを見ると私以上にシンドそうな顔をしている。
私は自分より駄目な子を見て少し回復したのでもう少し頑張れそうである。
「もっもう駄目、限界……ねぇありさ~一河さ~ん少し休みましょうよ~」
「カナ……本当に鈍ってない? 以前一緒にダンジョンに入った時はまだ体力に余裕があった筈よ?」
「基本的に毎日家に閉じこもってれば身体も鈍るに決まってるじゃない、少しはか弱い女性に気を遣いなさいよ!」
「……工藤さん、少し休みましょう」
「一河さん…」
「時間ならありますし、小まめに休みながらでもダンジョン資源は探せますから」
「……分かりました」
丁度腰が下ろせる高さの岩があり、そこに座る。
そしてリュックサックからキューブを三つ取り出して元のペットボトルに戻す、中身は天然水である。
それを二人にも渡して飲む。
一息ついた所で東雲さんに話しかけた。
「東雲さん、まずは山に入りましたが貴女が響さんの刀を用意するのにどんなダンジョン資源がいるのか分かりません。何か心当たりのある物について情報はありませんか?」
「そうですね…刀に使うダンジョン鉱石となるとレログロント鉱石やタンクザナイト鉱石が理想ですね」
どちらも知らない鉱石だ。
そもそも鉱石とか原石なんて類の物を私は禄に見た記憶がない。
「どちらもよく斬れる武器に使われる鉱石ですね、けど…」
「そうっあの見せてもらった刀以上となるともっと高ランクのダンジョン鉱石が必要になると思うわ、もっともそれがあっても私に扱えるかどうか…」
「カナがやる前から弱気なんて珍しいわね」
「あんなとんでもない刀見せられたら仕方ないじゃないのよ!」
二人がそんなやり取りをする中私が思ったのは、東雲さんがその鉱石をどうやって刀にするかについてだった。
しかしそれについてはまだやり方を聞いてはいない、多分聞けば教えてくれると思うが何となくお楽しみ的な感じで話をしていないのだ。
鍛冶とか以外で刀とか作る方法。
まず間違いなくスキルだと思うが一体どんなスキルなのかな。
やがて休憩を終えて私たちは歩き出した。
そして移動と休憩を繰り返す事数回、私と東雲さんの足がパンパンになる頃には温泉火災の中腹を越えた辺りまで来ていた。
工藤さんは平然としているが我々一般人コンビは何度弱音を吐きたいと思ったか分からない。
本当に私って身体能力上がってるんだよな?
なんかもう自信とかが全く持てなくなってきた私だ。
山を登る。
一応回りを確認しながら進んでいるが中々採取スポットが見つからない。
まさかないのか?
不安が心によぎる。
「あっ一河さん!」
「はい?」
工藤さんが何かを見つけたのか何処かを指さしている。
そちらの方を見てみると…。
ん? 何か、確かにあるみたいだ。
「アレは……洞窟ですか?」
「はい、火山の中に入れる入り口かも知れませんよ」
「そんなのがあるんですか?」
まあ温泉火山には洞窟の先にも温泉があった過去ならあるけど。
「ええっ大きな山や山脈のロケーションのダンジョンにはその山の内部が迷路のようになっているダンジョンも珍しくありません」
「そうそう、そんな場所にこそダンジョン鉱石とかダンジョンレアメタルとかがあるのよ!」
「おおっそれは凄いですね」
ダンジョン鉱石もそうだがダンジョンレアメタルとかまさに一攫千金の大当たり採取スポットである。
一つでも見つければ億万長者だ。
近頃は稼ぎも安定しつつもちょっとした事にお金を使っているので量が少なくても大金に化けてくれるダンジョンレアメタルとか非常にありがたい。
おっと捕らぬ狸の皮算用であるかも分からない物に期待し過ぎないようにしなければ。
「それじゃあ早速向かってみますか?」
「ええっあそこに何もなかったら一旦引き返して仕切り直した方がいいと思いますよ」
「それじゃあ行ってみましょう、私が先行するので一河さんてカナは後からついてきて下さい」
私たちは新たに発生した洞窟へと歩き出した。