第107話◇
白い砂浜の道を歩いていきやがてサマダン島の砂浜へと侵入する。
この辺りはまだバーサーカークラブも出て来る事はないのか相変わらず穏やかな砂浜だ。
「へぇ~本当に一歩、島に足を踏み入れただけで気温も湿度も違いますね、それに入道雲まであって…」
「うへ~向こうでは見慣れたあの地獄のような暑さの中で見るあの雲ね…」
「けど響、ここは日本ほど暑くはないと思うよ?」
「アズサ、響…それは恐らくここがダンジョンだからです。ダンジョンは気候や気温は理由が無ければ変化する事は殆どありませんからね」
ダンジョンに慣れてる工藤さんは周囲の様子を窺い、響やアズサは昨今の日本の異常な夏とこのサマダン島の夏っぽい気候を比べているね。
高見さんはそんな二人にダンジョンについて色々と説明をしていた。
一方の私はハルカに一つ質問をする。
「ハルカ、本当にアヤメは置いてきて良かったの?」
「ええっ確かそろそろアンジェが来る頃だからお留守番が必要でしょ?」
たしかに、アンジェさんにはまだこのサマダン島の事はスマホのメールで一報を入れてしかいない。
詳しくはダンジョンに来たときにって感じてメールをしていたからね、それを知るハルカが配慮してくれたんだろう。
本当にハルカには頭が上がらないな。
念の為直ぐにマングローブっぽい密林には入らずにまずはこの砂浜を中心に探索を開始する。
しかしここはただの砂浜だからそんな大した発見なんて…。
「一河さん、これはダンジョン資源ですよ」
「………え?」
ダンジョン資源に詳しく工藤さんが砂浜に落ちてる巻き貝を見せてきた、中身は既になくあのホラ貝を手の平サイズにした巻き貝である。
「これは『海鳴りの巻き貝』と言って耳に当てると波の音が本当に聞こえてくるダンジョンにしかない巻き貝の一種なんですよ」
本当に波の音が…それは確かにダンジョン資源だね。
「他にも幾つかダンジョン資源として価値のある貝殻の類がある見たいですよ、こっちの貝殻は星の形の模様があるから『スターシェル』なんて呼ばれていて…」
工藤さんが貝殻を手にして様々な話を聞かせてくれる、どうやらこの砂浜だけだも結構なダンジョン資源があるらしい。
正直今でも発見したダンジョン資源の種類は十分あるんだけどね。
しかしダンジョンにしかない様々な物を見ると言うのは悪くない。
私が最初に来たときはボ~としていて全く気付きもしなかったこの『海鳴りの巻き貝』やら『スターシェル』も見てみるとインテリアにでも使えそうなくらい綺麗な貝殻である。
他にも砂浜の探索では幾つか新しいダンジョン資源を発見する事に成功する。
このサマダン島が新たなダンジョン資源が豊富なダンジョンである期待が高まるのを感じた。
「それじゃああのマングローブっぽい密林の探索に行こうか」
「一河さん、あれは恐らくダンジョンにのみ存在するマングローブでダンジョンマングローブかと思われます」
「成る程、そんなマングローブがあるんですね高見さん。それじゃあ略してダングローブってどうですか? ずっとマングローブっぽいと言うのもあれですし…」
「ダングローブ…いえっ私も実はダンジョンマングローブは長いと思っていたのでアリかと思います」
そんなやりとりを高見さんとしていると何やらヒソヒソとアズサと響が話をしていた。
「……ねぇっあの二人ってさ」
「うん、ネーミングセンスが真面目に考えてもテキトー感が出る所が変に似てるんだよね…」
「本当よね~」
何やら呆れられてるっぽい。
なんだよ、ダングローブって良いじゃないか。
これからはここはダングローブ密林って呼ぶんだからね。
取り敢えず気を取り直して我々はダングローブ密林へと侵入した。
当たり前だが中に入ればコレまでの様な海からの風は消えて更に湿度も上がる、そして夏服とは言え制服でダンジョンに来ている響やアズサは暑そうにしていた。
「ふうっやっぱり歩いてるだけで汗が出てくるわ」
「本当にね…それにこのダングローブ? 結構な密度で生えてるから回りが見えにくいかな」
「いつでもモンスターの戦闘に備えておきなさい、一河さんが言っていた足場の不安定さも考慮するのよ?」
「「はい」」
うんうん部活の一環とはいえ危険なダンジョンに来てる以上は上下関係はしっかりしている。
命令系統が乱れると命の危険が一気に増えるのがダンジョンだとネットにあったな、だからプロの探索者パーティーは何が起こっても必ずリーダーの指示に従うのが鉄則なんだとか…。
私はと言うと前に護衛と言う事で工藤さんがいて後ろにはハルカが背後の気配に気を配っている。
それぞれ三人の探索者パーティーが一緒に探索してる感じだね。
高見さん率いるパーティーの活躍を見てみたい気分と危険は出来るだけないほうがって気分の半々な私だ。
そしてダングローブ密林を進むことしばらく、遂にヤツらが現れた。
バキバキとダングローブをへし折りながら隠密行動とか一切する気なしで真っ直ぐ向かって来ているモンスター。
バーサーカークラブの登場である。
数は五体、やはりその図体は大きく私たちでも移動するのに多少の不便を感じるダングローブを邪魔だとばかりにハサミを振り回して吹き飛ばしながら現れた。
当然現れたら直ぐに分かる相手なので高見さんパーティーもこちらのパーティーも臨戦態勢で迎え撃つ。
既に竹刀を刀に戻した響は正眼に構え、アズサは弓を引いている。
おやっ高見さんはなにかしらポケットから取り出していた、それは…釘?
「アズサは牽制を、響は前に出すぎないように!」
二人はそろって返事をした。
私たちも合流し、バーサーカークラブを三体ほど受け持つ事にする。
「ハルカ!」
「ここは私個人が戦ってもいいかしら?」
おやっやはりアヤメ同様にハルカも単品でバーサーカークラブを倒せる自信があると?
それならお願いします。
「一河さん!」
「工藤さん、ここはハルカに任せてくれませんか?」
「…分かりました」
こちらの戦法はハルカ突撃作戦に決まった、さあバーサーカークラブめ再び倒してやろうじゃないの。
私は見てるだけだがね~。
少し頑張って別の作品を準備中、それにつき投稿する頻度を下げます。
予定では来週からは金曜、土曜、日曜の三日間に投稿する予定です。