第106話◇
直ぐにアズサがフォローに入る。
「アヤメさん、確かにこのダンジョンでは殆ど資源の採取とか出荷の為の梱包作業のお手伝いしかしてこなかったけど…これでも僕らは探索者なんですよ?」
「……探索者?」
マジなのアヤメ……。
どうやらアヤメの中では彼女たちは完全に釣り仲間とか仕事のお手伝いさん的な扱いだったらしい。
コレにはハルカもため息を一つ。
ちなみに現在はいつものダンジョン島にいる。
昨日の新たなダンジョン島での探索を中断して直ぐに撤収。
翌日に来た響、アズサ、高見さんと工藤さんの四人に話をしている。
「……アヤメ、話しが進まないから向こうでゲームでもしてなさい」
「は~い」
素直に私たちから離れてスマホを取り出しゲームをしだすアヤメ。
最近の彼女のブームはダンジョンで冒険者を育成するローグライク系のゲームだそうだ。
私は直ぐにやられるのでアヤメからはもうしないでと怒られた。
悲しくなった。
そして改めてあの新たに出現したダンジョン島、なんか夏っぽい島なのでサマーダンジョン島、略してサマダン島と呼ぶことにした。
「……それではそのサマダン島と言う新しいダンジョン島が昨日現れたと言うんですね一河さん」
「そうです工藤さん、そして現れた敵対するモンスターは黒い身体のカニでバーサーカークラブと言うモンスターです」
「バーサーカークラブ…聞いたこともないモンスターですね」
顎に指を当てて思案する工藤さん。
会話が途切れたタイミングで高見さんが気になった事を質問してくる。
「そこには他のモンスターはいたんでしょうか?」
「一応は隠れクラブってカニもいました、まあこっちは近づくと直ぐに逃げましたけど…」
流石に他のモンスターがいないなんて事はないだろう、ダンジョン島固有のモンスターもそうだし外来種の危険なモンスターも…。
その辺りについて高見さんに説明をしておこう。
「……つまり攻撃的なのはあのスケルトン同様にダンジョンの外から海を越えてきたモンスターなんですか」
「そうです、隠れクラブや他にもこちらから手を出さ無ければ危険はないモンスターも多数はいると思われます」
「それだと僕らは倒すべきモンスターとそうじゃないモンスターを判断しなければならないんですね」
「そうだね、けど倒すべきモンスターは結構な敵意を向けてくるから分かり易いと思うよ?」
「そうなんですか、それなら何とかなりそうですね」
取り敢えずは現場を見ないとこれ以上は話も進まないだろう。
そう考えた私はこれからサマダン島の探索を提案する。
「…と言う訳で早速今日からサマダン島に行こうと思うんだけど、他のみんなの意見を教えてくれるかい?」
「私はいつでも相棒と一緒よ!」
「僕も弓矢の練習は毎日欠かしてません!」
「私も顧問としていつでもダンジョンで戦闘可能な装備は持ってきていますよ一河さん」
「ええっ私たちは基本的にこのダンジョンに探索者として来ていますからね」
響は刀を手に、アズサは弓矢を持って元気に返事を返してくれた。
工藤さんもそれぞれの装備に手を添えている。
……ん? 高見さんはいつものウーマンスーツ姿であり武器なんて元からないよね。
彼女は扱うスキルが武器や盾の代わりなるからそう言うのが必要ないんだろうけど……装備とは一体。
「……けど向こうはマングローブの密林だから靴とか汚れてもいいのを選んだ方がいいかな、ヒールとかは辞めておいたほうがいいかもね」
ヒールなんて高見さんしかしてなさいけどね。
しかし私の指摘に対して高見さんはフフンと大きな胸を張って言う。
「ご安心を、これでも元はプロの探索者をしてましたので何を履いていても移動に影響はありませんから」
「一河さん、ルイシュさんは本当に頼りなる探索者だから心配いりませんよ?」
ほうほうまあ工藤さんに言われたら仕方ないな、ここは高見さんの能力を信じるとするか。
それにコレまでだって部活の顧問としてしっかり生徒を見ている姿なら知ってる、人として信頼出来るちゃんとした大人だとは分かっているからね。
「分かりました、それじゃあ全員が準備完了と言う事ですね? それならまたサマダン島へと向かいましょうか」
「僕…未知のダンジョンなんて始めてです! なにかドキドキします!」
「アヤメさんにはあんな事を言われたわ…絶対にこの探索で私たちが学生でも立派な探索者だって認めさせるわよ!」
「未知のダンジョン楽しみで…いっいえ、顧問として生徒を守り、一河さんからの依頼も確実に果たします」
「一河さんのダンジョンで本格的な探索をする日が来るなんて…私も少しドキドキしちゃいます」
やる気と好奇心を発揮する探索者一同様である、そのモチベーションが高いうちにサマダン島へと向かう事にした。