第105話◇
「アヤメ、ハルカ、このカニモンスターはこのままでいいのかい?」
「ええっほっておけばダンジョンに吸収されて成長の糧になるわ」
それならいいか、流石に大きなカニモンスターの死骸をアヤメにキューブ化させるのも気が引けるのでこのままで放置させてもらおう。
ただこのダンジョンが成長したとして何か私たちにプラスになるのかは不明だけどね。
「それにしてもこのカニのモンスターは一体……ハルカ、このダンジョンのモンスターは私も攻撃してくるのかい?」
「このダンジョンのモンスターはヒロキさんを襲ったりしないわよ」
「え? けど実際に……」
「例外なら既に知っているでしょ?」
例外? そんなの言われても~アラサーの頭の回転の遅さを舐めてもらっては困りますよハルカさんや。
しばし考える、そもそも私がこのダンジョンで戦った経験なんて数えるくらいしかない。
そしてその全ては同じモンスターの…。
「あっまさかスケルトン?」
ハルカが頷く。
そうかあの黒いカニはスケルトンと同じで…。
「…アイツらはダンジョンの外から来たモンスターなのかい?」
「ええっあのモンスターの名前はバーサーカークラブ、同族以外なら人間もモンスターも群れで襲うモンスターよ」
「まさにザッダンジョンモンスターって感じのヤツね!」
確かに、そのバーサーカークラブに迫られてる時はここはダンジョンなんだって感じが強くした。
普通に怖かった。
「それなら……ここは私たちのダンジョン島として考えるならスケルトンが島に上陸された状態のダンジョン島って事なのか」
そう考えれば納得がいく。
普通なら敵対してこないモンスターしかいないダンジョン島にいたからビックリしたけどそう考えれば落ち着ける気がする。
「その通りね、しかもスケルトンの時と同様に様々な種類のモンスターが我が物顔でこの島を歩いているわ」
「う~んそれは危険だね」
「私はダンジョンコアだけどダンジョンの外から来たあのバーサーカークラブとその仲間については名前くらいしか分からないのよね…」
そうか、ダンジョンコアであるハルカも情報が集められないとなると下手に私たちだけで探索するのも危険か。
「先ずはこの密林から出よう、これ以上モンスターに集まられると…」
「別にどうとでも出来るじゃないの」
「いやっまあそうかもだけどね…」
新たなダンジョン島、そこは危険なモンスターがいる場所だった。
それならばここは探索者の出番である。
そうっウチで探索者というか完全にダンジョン資源の採集家さんと化している若き女性探索者さんたちがそこそこいるではないか。
ここで彼女たちに力を借りなくてどうすると言うんだって話である。
遂に我がダンジョンでも危険と隣合わせの冒険が幕を開けるのかも…。
「探索者? ヒロキ君が頑張るの?」
「違うよ、いや私も頑張るけどね…そうじゃなくてせっかく雇ってるあの探索者である皆の出番って事だよ」
「……えっ探索者なんて雇ってたっけ?」
「………………」
普通に真顔で言ってくるアヤメにハルカも私も少し困った笑みを浮かべる。
まさか本当に忘れてるのかな?
「……成る程、確かにそれは私……いえっ私たちの出番と言う訳ですね!」
「えっ本気なのヒビキ? あそこのモンスターは襲って来たから釣りも木の実拾いも草むしりも手間よ?」
ちなみに草むしりってのは薬草系のダンジョン資源の採取の事をいっております。
アヤメの悪意ゼロでも心にくる発言に腕を組んで自分たち女子高生探索者の出番宣言をした響がキメ顔のまま固まっている。
ちょっと面白い。