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17.再び(ふたたび)訪れる約束の災い

 悪い事というのは、不意にやってくる。

 それへ備えるために、沢山慎重に用意する者も少なくないだろう。


 だが、それだけでは越えられない時がやってくる。

 多くの人は、その時に、どうするのだろう?


 そして、我らにとっての悪い事、災いはやって来た。

 約束していた通りに。


 その日は、リリィ達に自主訓練を指示し、私は執務室で帝国の脅威となる国のリストと人物を整理していた。

 帝国内で集められる情報や、各国に配置している工作員、公式な外交官、商人、旅行者などから集めていた。

 それが、帝国政府の組織に集まって私の所に来るのである。

 

 その整理を終えたので、訓練の状況を見る為にリリィ達の所に向かっている途中だった。

 

「ん? この感じ?」

 これは、あの大神殿で感じた尋常ならざる気配。


(ついに、来たか? 直ぐに攻撃してこないのは、何かを確認しに来たのか?)


 腰の両方に付けている二本の聖剣が、「キ――――ン!」と甲高い音をたて光り輝いていた。

 それは、私に人外という敵が来たとい教えていた。


 私はゆっくと馬を下り、馬を安全なところに追いやった。


「何か用か? 人外!」

 私がそう言うと、大神殿で見た右側の人外が姿を現した。


「人間。リーゲンダ・テンプルム。時間だ。遊びの時間は終わりだ」

 そう人外が言うと、手下の人外魔獣を何匹も引き連れて姿を現した。


「遊び? そんな事はしていないのだがな?」

「人間のすることは全て遊び。意味はない。無駄。無くなっても良い。誰も困らない」

「言葉遊びをするつもりか? 何の用だ?」


「言ったはずだ。あの赤ん坊が女神官と同じ力持ったら、殺しに来ると。なのに、何故鍛えた?」

 暗い闇のような穴のような目を私に向けて、人外が問うてきた。

「鍛えようが鍛えまいが、お前達はリリィを殺す気なのだろう?」

 私は剣を抜き構えた。

 プレアの力は、いつか芽吹く。

 いや、最悪リリィの生きている時は無かったとしても、リリィが万が一結婚して子でも成せば、その力が継承される。

 こいつらは、それを恐れている。

 唯一、自分達を害せる力。

 『大神官 プレケス・アエデース・カテドラリース・ミーラクルム』の力を!


(リリィは無事だろうか? 二手に分かれて来たのか?)


 リリィ達が心配だが、それを気にする余裕はなかった。

 ここに来たこいつらは、私を殺しに来ているのだから。

 いくら聖剣の力があろうと、油断すれば負ける。


 「あの女神官の娘リリィは、我らの物にする。お前、もう要らない。お前、余計な事をした。もう、終わり。させない」

 人外がそう言い終えると、手下の魔獣が襲い掛かって来た。

「キシャァァァァ――!」

 大神殿で聖剣の光に驚いて襲ってきた人外魔獣と同じ奴だ。

 巨大な骸骨と背骨、鋭い爪の様に生えている肋骨に似た無数の足。

 少しタイプが違うか?

 まあ、大差ないだろう。


 そのままでは、剣を避けて噛み殺しに来る。

 自ら前に移動し導線をずらして、人外魔獣を射程に捕らえた!


 ダンッ!


 右足を思いっきり踏み込んで飛び上がり、人外魔獣を背骨を叩き割った。

 聖剣は、いっそう光と音を強くした。


「キシャァァァァ――!」

 恨めしそうな雄たけびを上げて絶命する人外魔獣。


「お、おのれ! あの女神官! 余計な事を!」

 人外が怒りを表す。


 人外達が唯一私に勝てるとしたら、私が大怪我したり、大病をしたり、老いたりして剣を振るえなくなった時以外にない。

 後は、他の人間を扇動(センドウ)して殺させるなど。

 数で攻めてくることも十分考えられた。

 正直、それが困っていたところであった。

 リリィを鍛えて力を引き出したことが、こいつらとの決着を時期を早めることが出来た。

 結果的にではあるが、掛けに勝ったのだ。


「どうした人外。不甲斐ないな。たった二本の聖剣にだらしがないものだな」

「黙れ! 黙れっ!」


 前後左右から襲い掛かって来た。

 

 身を低くし、まず右から始末した!


「キケケケケケッ――!」

 人外魔獣は奇声を言葉を発した後、粉々に砕けて消え去っていく。

 次、左。

 次、後ろ。

 次は、前。


 目前の魔獣を倒して、その後ろにいる人外へ突進した。


「う、腕が――!」

 私の斬撃を受けようとして人外は手を出して避けようとした。

 普通の剣ならば、剣の方が折れているだろう。


 だが、私の剣は違うのだ。


 初めて、人外の表情が怯えた表情に変わった。

 

「おのれ――! おのれ――!」

 悔しがる人外。


 その親分らしい人外を庇う為に、周りの人外魔獣達が、一斉に襲い掛かってくる。

 だが私は、それらを一刀両断にしていった。


 そして、私の剣は人外の首を捕らえた。


「ヴぅぅぅぅ――!」

 呻き声を上げる人外。

 聖剣は白銀色に輝き激しく細かい振動をしていた。

 それが、人外に容赦なく苦痛を与えていた。


「これで終わりだ、人外よ。潔く、死ね」

 そう言って、利き腕では無い左手の剣を振り上げた。

 左手の剣は、我が友シャランジェールが使っていた剣だ。


 だが、人外は不敵な笑みを浮かべて言う。

 

「ケケケケケケケッ! も、もう遅い。リリィは、リリィは我らの物だぁ――!」


 人外が何かを言っていたが、私は黙って左手の剣を振り切った。


 この世のものと思えない奇声を上げ、あの大神殿に来た時の右側の人外が消えて行った。


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