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逃走

 服屋を出た先に続くショッピングモールで、

 俺は気になるものを見つけた。


 服屋の店先にあったのは本屋。


 子供から大人まで幅広い層が訪れるモールの中の本屋の店頭には子供用の絵本や漫画のほか、大人向けの雑誌など豊富なラインナップがそろっている。


 俺の目に留まったのはアイドルのファン向けの雑誌。

 こういう資料はネットに出回らないこともあるので侮れない。


「我妻さん、本屋が気になるの? ……いいよ、ちょっと寄って行こうか」


 気を利かせた美池の提案により、

 本屋に立ち寄ることに。


 美池が漫画コーナーの棚に気を引かれている隙に、

 俺はさっとアイドル雑誌を手に取った。


 表紙が知らないアイドルの水着の写真なのが若干気になる……美池に見られないようにこっそり見ておこう。


 知ってるアイドルはいるかな……っと。


 ……って、何!?

 ……特別付録ページ「姫宮ナツキ」、だと……!?


【新生アイドル特集! 〜姫宮ナツキ編〜】

「最近何かとうわさの姫宮ナツキ。テレビドラマの主演が決定したりと、注目に目が離せない」(p.21〜)


 これは、買うしかない……。

 そうだ、この頃からナツキの知名度は上がってきたんだった。


 初期のナツキの写真集は前世ではなかなか手に入らなかったものもあるため、手に入れられるのはこの時代ならではの特権である。


 まだ見ぬワクワクに胸が躍る。

 しかし、そんな風に油断していたのがまずかった。


「あ、我妻さん、何見てるの?」


「げっ……!?」


 しまった、美池に見つかってしまった。

 表紙が水着なだけで中身まで全部そうではないが、

 この写真では若干誤解を生みそうだ。


「さ、雑誌をちょっと……」


「ああ、アイドルの雑誌か。姫宮さんがのってるかもしれないもんね」


 ヒヤッとしたぜ。何とか表紙を隠しながらレジに持って行くことに成功する。店員には見られたが、気にしている場合ではない。


「それ買ったらそろそら行こう、我妻さん?」


「うん! い、今行く……!」


 危ない危ない、

 見られたらデートが台無しになる所だった。

 本番ではくれぐれも気をつけよう……。


 などと安堵した、その時。


「あっ、しまっ……ふごッ!?」


 慣れないスカートにつまづいて盛大にズッこけた。

 床に本屋の袋が投げ出される。


「あ、我妻さん、大丈夫……って、ハッ……!?」


「いてて……うん……あれ、写真集は……?」


 起き上がって手元を見ると写真集の袋がない。

 辺りを見渡すと、美池の足元に落ちていた。


 ああ、そこにあったのか、よかった……。


 

 ……って、しまったぁ…………ッ!?!?



「み、見ないで……ッ! 恥ずかしいよぅ……!?」


「い、いや、我妻さん! そ、そんなことより……パ、パンツ……! パンツが見えてるって……!」


「うぅ、見ないで……何でこんな失敗ばっかり……」


「いや、だから、早く……!? パンツが……!? さっきからパンツが見えてるからぁ……ッ!?」


 隠した結果、百倍恥ずかしい思いをした。

 今日の思い出は封印しよう。

 

◇◇◇


「……いろいろ見て回ったけど、どうだった?」


 最後に訪れた喫茶店で、俺たちは茶をしばきながら感想会をしていた。ところでこの店って、デートにオススメだとかそういう風な触れ込みで街の観光ガイドか何かにのっている店なんだろうか。


 周囲の客層も心なしかカップルが多めだ。


「お待たせいたしました〜」


 バイト店員がほどなくして注文したサンドイッチとデザートのセットを運んでくる。


 デザートはカラフルなチョコレートのトッピングののっかった小さなケーキで、SNSにのっけたら映えそうな見た目をしている。だが、しかし……。


「……あ、あのさ」


「うん?」


「そ、その……ちょっと、言いづらいんだけど……」



 ……量、クッソ少なくね?



 この値段でこの大きさは詐欺だろ。

 何、デートってこんな量しか食べちゃダメなの?

 毎回カップル達はどうやって空腹に耐えてるんだ?


 そんな疑問が浮かんだが、

 雰囲気を壊すまいと声に出すのがためらわれる。

 ここで本音を出してもいいものなのか……?


「どうしたの? 遠慮せずに言って、我妻さん」


 さっきまでいろいろと雰囲気を壊してきた手前、

 これ以上美池に注文をつけるのが申し訳ない。


「い、いや、その……」


 誤魔化そうにも上手い言い訳が出てこない。

 気まずい時間だけが過ぎて行く。


 すると次第に店は混み始め、

 昼時の盛況ぶりを見せてきた。


 ……いっけね、そろそろ出ないと。

 ……なんて思っていた矢先。



「ねぇ、あれって」


「うそ、まさか本物の美池くん……!?」


「えっ、美池くんですって……!?」


「どこどこ!? 私ファンなんだけどー……!?」

 


 しっ、しまった!

 ぐずぐずしてたら見つかった……!



「い、行こう、我妻さん……っ!?」


「う、うん……っ!!」


 わき目もふらず、

 俺たちはあせって店から飛び出した。




今回短くてすみません。

時間なくてここまでしか書けませんでした。


そろそろコウをデビューさせたいな…。

ではまた。


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